第98話 「実食!ワタルvs美食家ッ!」
前回までのあらすじ! 本格的に始まった海の家のバイト! しかし店主のおじいさんのミスにより、焼きそばの具がないという危機的状況に陥ってしまった! そこでブレイドは、第96話で倒したヤバンザメを食材に使うという奇策を打ち出す! その時、海の家に“辛辣の美食家”山原ジェロニモがやってきた! 果たして、海の家の運命や如何に!
そして、山原ジェロニモが焼きそばを注文してからぴったり4分後ッッ!!
焼きそば(ヤバンザメ入り)の皿をお盆に乗せたワタルが、仁王の形相で厨房から出てきたッッ!!
「武ッ! どうぞ、こちら焼きそばですッッッ!!!」
叫びながらジェロニモの前に焼きそばを置くワタルッ!
その料理を見たジェロニモは、感嘆の声を上げたッッ!!
「おお、これは……かなり独特な具材を使っているんですね」
彼が驚くのも無理はないッ!
なぜならその焼きそばには、白身魚と鶏肉の切り身が入っているのだからッッ!!
通常、ソースタイプの焼きそばにこういった具材が入っているということは、まずありえないッ! 聡明な読者の皆様であれば、そんなこと当然知っているであろうッッッ!!!
「どれどれ、では食べてみますか」
彼はそう言って箸を持つと、ゆったりとして手つきで麺と白身魚の切り身を口に入れたッッ!!
その一連の動作を、冷や汗をかきながら見守る店主のおじいさんッ!
果たして、ジェロニモの感想や如何にッッ!!
「――ほう、焼きそばに絡んだ濃厚なソースと白身魚の淡白な味わいが、意外にも絶妙なハーモニーを奏でている……!」
なんとッ! 驚くべきことに高評価ッッ!!
彼は更に鶏肉の切り身も口に運び、もぐもぐと租借したッ!
「ふむ、この鶏肉もジューシーだ……白身魚と鶏肉、一見ミスマッチにも思えるが、濃厚なソースと混ぜ合わせることで飽きの来ない美味しさを生み出している……! これは、なかなか面白い焼きそばですな」
そう言ってニコリと笑うジェロニモッッ!!
だが絶賛しているその焼きそばに入っているのがサメだということは、彼は知る由もないッッ!!
「ど、どうもありがとうございます……!」
店主のおじいさんはペコリとお辞儀をしたッ!
「――が、しかし……1つ、問題がありますな……」
「え!?」
ほっとしたような表情から一転、顔をこわばらせるおじいさんッ!
「そ、それは一体何でしょうか……?」
するとジェロニモは、眉間にしわを寄せてこう言い放ったッッ!!
「それはズバリ……臭み! ソースの味わいで緩和されているとはいえ、この白身魚の臭みを完璧に消せていない!」
それもそのはず! その焼きそばに入っている“白身魚”とは、サメの肉なのだからッ!
サメは強烈なアンモニア臭を発してしまうことで有名であるッ!
――と、その時ッッ!!
海の家の中に、不敵な笑い声がこだましたッッ!!
「クク、ククククク……!!」
「?」
突然の声に首をかしげるジェロニモッ!
すると厨房の中から、口角を不気味に吊り上げたブレイドが出てきたッ!
「初めから理解っていたさ、アンタがそう指摘することは……! だから、あらかじめ用意しておいたんだ、“コレ”を……!」
そう言う彼の右手に握られていたのは……ウィンド大陸名産の果物、ウィンドレモンッッッ!!!
茶色くて細長い筒のような奇妙な形状をしたレモンで、その味わいは通常のレモンの酸っぱさを何倍にも凝縮させたような感じだと言われているッッ!!
「こいつこそが……その焼きそばを完成させる、切り札……言わば、調味料界のジョーカーだ!!」
ウィンドレモン片手にキメ顔で言うブレイドッ!
そしておもむろに焼きそばの元へ行くと、皿の上で豪快にウィンドレモンを絞ったッッ!!
「オラァァァ!!!」
ブシャァァァアアアーーーッッッ!!!
「おおっ! 焼きそばがこの濃密なレモン果汁のシャワーを浴びて、まばゆく輝いている!!!」
目の前で繰り広げられる神々しい光景に、思わず目を見張るジェロニモッ!
「さあ、食べてくれ!」
「ああ!」
彼は頷き、レモン果汁が大量にかけられた焼きそばを一口すすったッッ!!
そしてッッ!!
「う、美味いッッッッッ!!!!!」
ビリビリビリッッッ!!!
な、なんということだッッッ!!!
その焼きそばのあまりの美味さに感動し、彼の身にまとっていたスーツがビリビリに破けてしまったッッ!!
一瞬にしてパンツ一丁の姿になるジェロニモッ! 嬉しくないおっさんのサービスシーンッッ!!
「ウィンドレモン果汁の強烈な酸味が、白身魚の臭みを完璧に消し去った!! なんだこの革命的美味さは!!!」
今までに味わったことのない焼きそばに、彼は感銘を受けたッッッ!!!
(※サメ肉の臭みの主な原因となっているアンモニアは、アルカリ性の成分である。そのため、柑橘類の汁など酸性の液体に浸せば、サメ肉の臭みは緩和される)
「素晴らしい! 本当に素晴らしい焼きそばに出会うことができた! ありがとう!!」
ジェロニモはパンツ一丁のまま立ち上がり、ブレイドと握手をした!
「はっはっは!! いいってことよ!!」
そして後日ッ! ジェロニモの料理店レビューの影響で、この海の家の“ヤバンザメ焼きそば”は一躍大ブームとなったッ!
更にブレイドは、その料理の実力を店主のおじいさんに認められ、晴れて海の家の正式なシェフに任命されたッ!
おめでとうブレイドッ! これで君は遂に、ニート生活から脱出することができたぞッ!
めでたしめでたしッッ!! 圧倒的めでたしッッッ!!!
次回、「心機一転!アリア、イメチェンがしたいッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]正しいサメの捌き方……異世界転生出版
[2]本当は美味しいサメの食べ方……異世界転生出版




