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第9話 「食べられたからどうした!ワタル、奇跡の復活ッ!」

 ワタルがいた世界には、“赤ずきん”という童話があった。


 地方によって細かい部分は違うが、一般的なあらすじはこうだ。


 ある日お使いを頼まれた赤ずきんは、森の向こうに住むおばあさんの家へと向かう。しかしそのおばあさんは悪いオオカミに食べられていた。そしておばあさんに変装したオオカミは、家にやって来た赤ずきんさえも騙して食べてしまったのだ。


 そして満腹になり眠るオオカミ。そこにたまたま猟師が通りがかり、彼はオオカミの腹の中から赤ずきんとおばあさんを助け出した。


 これでめでたしめでたし、というものである。


 では、ここで一つ“仮説”を立ててみよう。


 もしも、赤ずきんの趣味がお花遊びやお人形遊びといった可愛らしいものでなく、“相撲”だったら?


 もしも、赤ずきんの握力が10や20といったものでなく、常人のそれを大きく逸脱した“500”だったら?


 もしも、赤ずきんがか弱い少女でなく、“熱血武闘派な高校生”だったら?











 ――答えは簡単だ。この赤ずきんを胃袋に入れたオオカミは、後悔することになる。











「わ、ワタルさん……」


「グハハハハ!ワタル、打ち取ったり!」






 前回までのあらすじ!魔王の城を目指すワタルとアリアは、道に迷っていた老人を助けた!!しかしこの老人の真の正体はなんと狼男!!!四天王の四人目、ウルフマンであったッ!ワタルが眠った隙を狙って正体を明かしたウルフマンは、いともたやすくワタルを丸飲みしてしまったッッ!!






 というわけで絶望に打ちひしがれるアリアッ!ワタルを食べてご満悦のウルフマンッ!絶体絶命の状況ッ!もはやここに、救いなどないッ!


 しかしッ!その瞬間ッッ!!ウルフマンの腹の中から、鋭い雄叫びが響くッッッ!!!


「武ッッッッッ!!!!!」


 ズドンッ!


 ウルフマンの腹が、振動と共にボコンと大きく膨れ上がったッ!


「な、何ぃ!?」


 ズドンッッッ!!!


 ズドンッッッッッ!!!!!


 その振動が徐々に大きくなっていくッ!


「こ、これは!?」


 驚愕に目を見張るウルフマンッ!


 読者の皆様はもうお気づきだろうッ!そうッッ!!ウルフマンの腹の中で、ワタルが正拳突きを行っているのだッッッ!!!


「破ッッッッッ!!!!!」


 ズドンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!


 一際大きな振動ッ!


「ぐぼうぇっ!」


 ウルフマン、たまらず胃の中のものを吐き出したッ!


 “胃の中のものを吐き出した”ということはッ!


 すなわちッ!


「でりゃあああッッッッッ!!!!!」


 ワタル、ガッツポーズをしながらウルフマンの口から射出ッ!


 そのまま華麗に受け身を取り、荒野の地面にぴたりと着地ッ!


「ワタルさん!」


 アリア、感涙ッ!ワタルの奇跡の生還に熱い涙が頬を伝ったッ!


「……待たせたッ!」


 ワタル、余裕の表情で仁王立ちッ!もはやこの男、いや“漢”に、不可能などないッッッッッ!!!!!


「く、クソ……まさか腹の中で暴れだすとは……中々やるな!ワタル!」


 ウルフマンは苦しそうに息を吐き出しながら叫んだッ!


「ああ!ところでお前は誰だッッ!!あのおじいさんはどこに行ったッッッ!!!」


 そうッ!ワタルは先ほどまで爆睡していたので、ウルフマンが老人に化けていたことなど知る由もないッ!


「ワタルさん!この狼男は四天王の四人目のウルフマンと言って、あのみすぼらしいおじいさんの真の姿です!さっきまでの姿で私たちのことを騙していたんですよ!」


 アリアの流れるような状況説明ッ!ワタルは全てを把握したッ!


「なんと卑怯な……寝込みを襲うなど笑止千万ッ!覚悟しろッッッ!!!」


「ふん!魔物が卑怯な手を使って何が悪い!だがこうなったら、真正面から戦うしかないらしい!」


 ウルフマンはそう言うと、戦闘態勢に入ったッ!腰を低く落とし、右腕を前に突き出すッ!その構えを見たワタルがニヤリと笑うッ!


「筋肉、構え、威圧感……悪くないッッッ!!!」


 ウルフマンに続きワタルも戦闘態勢へ移行ッ!腰の重心を低くしつつ両足をバサッと広げたッ!踏ん張りがきく基本的な構えであるッ!


「いくぞワタルよ!覚悟しろ!」


 ここで雄たけびをあげるウルフマンッ!右腕を振りかざし、勢いよくワタルに飛びかかったッッ!!


「ワタルさん!気を付けて!」


 ワタル、危うし!!!アリアが慌てて叫んだッ!


「はぁぁぁぁ……ッッッッッ!!!!!」


 猛スピードで迫りくるウルフマンッ!しかし何という事だッ!ワタルは避けるような素振りすら見せず、深く息を吐くだけであるッ!


「うおおおお!くらえワタル!」


 このままでは、奇跡の生還も空しくウルフマンの拳に倒されてしまうッッッ!!!


 そして敵の拳がワタルの顔面に触れようとしたその瞬間ッ!


 彼は鋭く叫んだッッッ!!!


「喝ッッッッッ!!!!!」






 パァンッッッッッ!!!!!






 辺りに響き渡る打撃音ッ!しかし、吹き飛ばされたのはワタルではなく、ウルフマンの方であったッッッ!!!


「な……何ぃ!?」


 飛ばされながら驚きに目を丸くするウルフマンッ!だがそれも無理はないッ!彼の体感では、ワタルに攻撃を加えようとした瞬間に、見えない壁によって弾かれてしまったようなものであるッ!


 しかしッ!その一部始終をアリアは見ていたッ!


「凄いですワタルさん!必要最小限の動きで敵に音速の正拳突きを当てるなんて!」


 彼女はすかさずワタルを褒めたッ!


 ここで今の技が見えなかったという読者の皆様のために説明しよう!!!今のワタルの攻撃は、大阪に古くから伝わる武術“音速硬肩突き”である!!!


(※音速硬肩突き……かつて大阪で空手を学んでいた青年が編み出した技。動きそのものは通常の正拳突きのそれと等しいが、攻撃を当てる瞬間、肩の筋肉を極限まで硬直させることで技の威力を高める。1614年の大坂冬の陣にて、徳川軍が放った一発の大砲の砲弾を、一人の空手家がこの技を使って粉砕してしまったという逸話はあまりにも有名)


「ウルフマンッ!この俺を倒そうなど、100年早いッッッ!!!」


「まさかこの私が敗れるとは……!」


 そして吹き飛んだウルフマンは荒野の大岩に激突ッッッ!!!


 その衝撃で大岩が爆発ッッッ!!!


 飛び散った破片がアリアの眉間にグサリッッッ!!!





















「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」





















「おい大丈夫かアリアッッッ!!!」


 もちろん彼女は回復魔法が使えるので問題はないッ!


 そんなわけでついに四天王を全員倒したワタルッ!残すは魔王のみであるッ!


 しかし彼はまだ知らない!!!魔王の前に立ちふさがる、最後の難関の存在をッ!!!


 次回「ワタル、困惑!空前絶後の小説レビュー対決ッ!」に続くッッッ!!!


・参考文献

[1]異世界名作劇場~赤ずきん~……異世界転生出版


[2]大阪に伝わる武術全集……異世界転生出版

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