第83話 「どんな事件もラップで解決!熱血名探偵ワタルッ!」
前回までのあらすじ! 大胆かつ繊細な推理によって、殺人犯がミラであると推理したワタル! するとミラは逆上し、“ヘビを使ってこの場にいる全員を殺す”と言い始めた! 怖い!
「こうなったら、この場にいる全員を殺してやるわ!」
そう言うとミラはおもむろに、懐のポケットから一本の笛を取り出したッ!
「何をする気だッッッ!!!」
「ヘビの毒の恐ろしさを、アンタたちに味わわせてやるのよ!」
「な、なんだとぉ~~~ッッッ!?!?!?!?!?」
そして彼女は、赤くくすんだ色をしているその笛を口に当てると、勢いよく息を吹きかけるッ!
ピヒョ~~~ッッッ!!!
館内に響き渡る甲高い笛の音色ッ!
するとッッッ!!!
なんとどこからともなく、一匹のヘビが大理石の床を這ってやってきたではないかッ!
幅はあまり太くないが全長は約3メートルと大きく、体色は赤と茶色のまだら模様で異様なまでに毒々しいッッ!!
この展開には、読者の皆様も思わず驚愕に目を見張るッ!
「ど、どうしますかワタルさん!?」
アリアはそう言いながら、慌ててワタルの後ろに隠れたッ!
「うふふふふ、隠れたって無駄よ! さあ行きなさい、スネークちゃん!」
ミラは再び笛に口を当て、今度はリズミカルな音色を奏で始めるッ!
「な、何をするつもりだッッ???」
すると床のヘビが、ミラの笛の音色に合わせて器用にうごめき始めたッ!
「ひぃ!?」
情けない悲鳴を上げるアリババッ!
そしてヘビは奇妙な楕円の軌跡を描きながら、ワタルに向かっていくッ!
「来いッッッ!!!」
ワタルは憤怒の形相で叫び、ヘビに対してファイティングポーズを取ったッ!
と、その瞬間ッ! ミラは一際大きく笛を吹くッ!
キシャアァァァーーーッッッ!!!
そしてヘビは、耳をつんざくような恐ろしい鳴き声を上げながら、ワタルに飛び掛かったッッ!!
その速度、なんと時速200キロッッ!!
その跳躍距離、なんと2メートルッッ!!
常人であれば目で追うことすら不可能なヘビの動きッ!
しかし、今さら言うまでもなくワタルは常人ではないッッッ!!!
彼は冷静に右腕を突き出し、ヘビの攻撃を薙ぎ払ったッッッ!!!
ペシンッッッッッ!!!!!
凄まじい勢いで横に弾かれるヘビッ! だがヘビは、空中でその長い体を巧みに動かし、衝撃を最小限に抑えながら床へと着地したッ!
「うふふ、無駄よ! 私とスネークちゃんのコンビネーションは最高なの!」
ニヤリと不気味に笑うミラ!
「おいワタル、ここはやるしかない! 私がヘビの相手をするから、その隙にお前がミラを倒すんだ!」
リベリオンは懐の鞘から剣を抜きながら叫んだ! しかし、ワタルは首を横に振るッ!
「駄目だッ! 女性に手は上げられないッ!」
ワタルは、熱血硬派な日本男児であるッ! ゆえに、女性相手にその拳を振るうことはできないのだッ!
「おいおい、そんなことを言っている場合ではないぞ!」
「大丈夫だ、俺にいい考えがあるッッ!!」
ワタルはそう言うと、おもむろに学ランの内ポケットから“あるもの”を取り出したッッ!!
「そ、それは……!」
驚愕するリベリオンッ!
だがそれも無理からぬことッ! なんとワタルは、この状況で突然“マイク”を取り出したのだッ!
「ふん、アンタ何を考えているの? マイク一本でこの状況を打開できる筈ないでしょ! さあ、死になさい!」
そしてミラは笛に口を当て、リズミカルに吹き始めたッ!
ワタル、危うしッ!
――しかし彼は一切焦ることなく深く息を吸い込み、右手に握りしめたマイクに向かって……“ラップ”を歌い始めたッ!
さあッ! 読者の皆様も一緒に歌おうッッッッッ!!!!!
「一撃で魅せる俺だけのビートッッッ!!!
お前の笛じゃ不可能なヒートッッッ!!!
ヘビ使えても威張れんなニートッッッ!!!
ライム・フローとも所詮シロウトッッッ!!!
マイク一本で沸かす俺のフロアッッッ!!!
ピンチ全て躱すそれこそがパワーッッッ!!!
YO! どうしたもう終わりかッッッ???
さっきまでの威勢はもうないかッッッ???
Yeah!!!!!」
ワタル、鬼の形相で熱唱ッッッ!!!
とはいえ、これに一体何の意味があるのだッ!? そんな疑問を持ってしまう読者の皆様も多いだろうッ!
しかし、あれを見てほしいッ!
なんと、ヘビがミラからの命令を無視して、その場でとぐろを巻いて休み始めたのだッ!
「な、なんで私の笛を聞いてくれないの!?」
混乱するミラッ! その時、リベリオンは気付いたッ!
「そ、そうか! あのヘビはミラの笛の音に反応して動いている! つまり、ワタルのラップで笛の音をかき消してしまえば、ヘビは何もできないんだ!」
そうッ! これこそがワタルの作戦ッ!
大音量でラップを歌いあげることにより、ミラの笛の音をかき消したのだッッッ!!!
「くっ……!」
ミラは苦悶の表情を浮かべつつも、再び笛に口を当てたッ!
ピヒョ~~~――
――が、無駄ッ!
ワタルもそれに合わせてマイクに口を近付け、ミラが笛を吹くと同時にラップを歌うッッ!!
びっくりするぐらい馬鹿馬鹿しい光景だが、彼らは至って真剣そのものッッ!!
「そろそろつけちまおうかね決着ッッッ!!!
お前はもうお口にしとけよチャックッッッ!!!
Disるだけの実力もねぇんなら
宝の持ち腐れヘビはPay Backッッッ!!!
王者にふさわしいのは俺ひとりッッッ!!!
そこで泣き崩れてろただ独りッッッ!!!
匠なラップで魅せる彩りッッッ!!!
かかってこいよ俺の勝ち決まりッッッ!!!
Yeah!!!!!」
圧倒的熱唱ッッッ!!!
そして目の前のヘビは微動だにせず、とぐろを巻いたままその場で休止しているッ! やはり、ミラの笛の音はこのヘビには届いていないッ!
「もう諦めろミラッ! これ以上やっても無駄だァッッッ!!!」
ワタルがマイク片手にそう叫ぶと、ミラは悔しそうな顔で泣き崩れたッ!
「う……うぐぅ……! そ、そんなに言わなくてもいいじゃない!」
どうやらミラは、ワタルのラップで散々Disられたことにより、メンタルを木っ端みじんにやられてしまったようだッッ!!
厳しいようだがッ! これがッッ!! これこそがフリースタイルの世界ッッッ!!!
読者の皆様も、街中でフリースタイルラッパーに絡まれた時は気を付けようッッ!!
次回、「開催!スカイ王国早押しクイズ大会ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]よく分かるフリースタイルラップの世界……異世界転生出版




