第82話 「名推理!冴えわたるワタルッ!」
前回までのあらすじ! 宝剣を手に入れるためにアリババと言うお金持ちの住む館にやってきたワタルたち! しかしアリババと交渉している途中で、突然館内に悲鳴が響き渡った! 急いで声がしたエントランスへと向かったワタルが目にしたのは、なんとメイドの女性の死体であった……!
そして、事件が発生してから数分後ッ! エントランスにワタル・アリア・リベリオン・アリババ・ミラの5人が集まったッ!
「よし、全員集まったなッ! それじゃあ早速、状況整理を行おうッ!」
ワタルはメイドの死体の傍らに立って、大きな声でそう言ったッ!
「それではアリババさん、被害者の情報と事件発生時の状況説明をお願いしますッ!」
ゆっくりと頷くアリババッ!
「うむ、わかった。まず、殺された女性の名前はリオ。ここのメイド長をしていた女性だ。彼女は数分前に突如悲鳴を上げ、この場所で倒れているところをワタルくんが発見した。ちなみに館正面の入り口は閉じられていたので、そこからの逃走は不可能だ」
「なるほどな……」
神妙な面持ちで呟くリベリオンッ!
「ワタルさん、なんだか大変な事態になってしまいましたね……」
アリアが心配そうな表情で話しかけると、ワタルは自信満々といった感じで口を開いたッ!
「大丈夫だ、アリアッ! 俺が絶対に、この難事件を解決して見せるッ!」
そして彼は胸を張り、目の前を指差して仁王の形相で宣言するッ!
「熱血武闘派高校生の名にかけてッッッ!!!」
今ここに、熱血名探偵ワタルが爆誕したッ! 果たしてワタルは、無事にこの殺人事件の謎を解明できるのであろうかッ!?
「それじゃあ早速、それぞれのアリバイについて検証していこうッッ!!」
ワタルはそう叫び、エントランスに集まった面々をじっくりと見渡していくッ!
そして、あることに気が付いたッッ!!
(あれッッッ!?!?!? 犯人、ミラさんしかありえなくないかッッッッッ!?!?!?!?!?)
そうッ! 事件発生当時、ワタル・アリア・リベリオン・アリババの4人は部屋で話をしていたので犯行は不可能ッ!
そのため消去法的に考えても、犯人はミラで確定ッ! 圧倒的確定ッ!
しかしワタルは頭をブンブンと横に振るッ!
(待てッ! 待つんだ俺ッ! ミラさんみたいな若くて可愛らしい女性が、殺人なんてひどいことをするはずがないだろうッ! 他の可能性を探るんだッ!)
言うまでもなく、ワタルは熱血硬派な日本男児だッ! ミラのような若い女性を疑うなどということは、絶対に出来ないのであるッ!
(考えろ、俺ッ! そもそもここは魔法が存在する異世界だッ! 魔法を使えば、館の外から特定の人物を殺害することも可能なんじゃないのかッッ!?)
そう考えたワタルは、早速リオの死体に近付いて死因の特定を開始したッ!
「どうだワタル、何か見つかるか?」
「うーむ、そうだなぁ……武ッッ??? これはッッッ???」
リオの首元に、“2つの小さな刺し傷”を発見したワタルッ!
(これは……アイスピックのようなもので2回刺されたのかッ? いや、それにしては傷が小さすぎる……ッ! 恐らくこれは、何かに“噛まれた”跡だ……ッ! 考えられるのは、ネコ……いや、ヘビといったところかッ!)
するとその時、アリアがおもむろに口を開いたッ!
「ところでミラさん、何か資格とかお持ちですか?」
(なんでこのタイミングでそんな質問をするんだッッ???)
ワタル、困惑ッ!
「えーっと、一応“第一級ヘビ使い免許”を持ってます」
(なんでそんな資格を持っているんだッッ???)
圧倒的困惑ッッッ!!!
(え、というかこれ確定じゃないかッ!? どう考えてもミラさんがヘビを操ってメイド長のリオさんを殺害したとしか考えられなくないかッッ!?)
しかし、それでも頭を振ってその考えを否定するワタルッ!
(いや、待て待てッッ!! いくらなんでもこれは安直すぎるッ! こんなに簡単に犯人が分かるはずがないッ! おそらくこれはミスリードッ! 犯人は他にいるはずだッ!)
「どうだね、ワタル君? 何か分かったかね?」
眉にしわを寄せて尋ねてくるアリババッ!
「えッ!? えーっと……そうですね……ッッ!!!」
(どうしようッ! どう考えてもミラさんが犯人な気がするッ! でもありえるかッ!? 第81話で殺人事件が発生して、次の第82話でもう犯人が発覚するとかありえるのかッ!? 流石にテンポ良すぎないかッ!? もう少し展開を引き延ばした方がよくないかッ!?)
あまりのテンポの良さに連載スピードを考慮せずにはいられないワタルッ! しかしここでくよくよと悩んでいても仕方がないッ!
(ええい、もうどうにでもなれッッッッッ!!!!!)
「犯人は……ミラさんですッッッ!!!」
ワタルは仁王の形相でそう叫び、ミラを指差したッ!
「ええ!? わ、私ですか!?」
口元を抑えながら驚愕するミラッ!
「な、なにぃ!? ワタル君、なぜミラを犯人だと思うんだね!?」
「順を追って説明しましょうッ! まず事件発生当時、俺・アリア・リベリオン・アリババさんの4人は部屋にいたので、犯行は不可能なのですッ!」
「そうか! つまり、あの時犯行が出来たのはミラだけ!」
アリババは呆気にとられたような表情で言ったッ!
「そうッ! ミラさんにだけ、アリバイがないのですッ! しかも、殺害されたリオさんの首元には、何かに“噛まれた”ような傷跡がありますッッ!! これは恐らく、ヘビに噛まれた跡だッ!」
それを聞いたアリアが、ハッとしながら口を開くッッ!!
「そ、そう言えば……ミラさんは、“第一級ヘビ使い免許”を持っていると言っていました!」
「なるほどな、つまりミラがヘビを操ってリオさんを襲わせたということか……流石の推理だ、ワタルよ!」
リベリオン、ワタルの大胆かつ合理的な推理に心から感嘆ッ!
(……いやこれぐらい誰でも分かるだろッッ!!)
心の中でツッコミを入れるワタルッ! だがここは異世界ッ! 主人公以外の登場人物たちの知能指数が唐突に下がるということは、日常茶飯事なのだッッッ!!!
「ほ、本当なのか!? ミラ! お前がリオを殺害したのか!?」
冷や汗を流しながら声を荒げるアリババッ!
するとミラはうつむきながら、小刻みに肩を揺らし始めたッ!
「……クク……ククク……」
「何がおかしいッッ!!!」
「アハハハハ! まさか、こんなに早く犯行がばれてしまうなんてね!」
そして彼女はパッと顔を上げ、狂気に満ちた表情でニヤリと笑うッ! 先程までの清楚なイメージとは打って変わって、今の彼女は完全に“悪女”になっているッッ!!
「そうよ! その女をやったのはアタシよ!」
ミラは一切反省することなくそう言ったッ!
「なぜそんなことをしたんだッッ!!」
「単純な話よ! そいつを殺せば、次のメイド長はアタシになる! 偉くなるために邪魔な奴を殺すのは、当然のことじゃない?」
「な、なんと非道な……」
拳をグッと握りしめて怒るリベリオンッ!
「でも、ばれてしまったなら仕方ないわね……こうなったら、この場にいる全員を殺してやるわ!」
するとミラはおもむろに、懐のポケットから一本の笛を取り出したッ!
「何をする気だッッッ!!!」
「ヘビの毒の恐ろしさを、アンタたちに味わわせてやるのよ!」
「な、なんだとぉ~~~ッッッ!?!?!?!?!?」
果たして、ワタルたちの運命や如何にッ!
次回、「どんな事件もラップで解決!熱血名探偵ワタルッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]生き物の恐ろしい“毒”名鑑……異世界転生出版




