第67話 「遭難!ワタル、無人島に漂流ッ!」
前回までのあらすじ! ワタルとリベリオンは悪魔を倒した!
ある日の正午のこと!!!
ワタルは自室で、いつものようにトレーニングをしていたッ!
「フンッ! フンッ! ……くそ、やるなッ!」
上半身裸のワタルが、体を機敏に動かしながら叫ぶッ! しかし部屋には、彼以外に誰もいないッ!
一体何をしているのだ!? 無論、読者の皆様は驚きに目を丸くするであろう!
実はこれは、ワタル流のイメージトレーニングなのだッ! 想像力を最大限まで働かせ、目の前に架空の対戦相手を描き出し、闘うッ!
一見すると非効率に思えるトレーニングだが、あらゆる状況を想定して行うシミュレーションは実際の所非常に重要だッ!
「フンッ! ハァッ! ……ちっ、ツノの攻撃を避けるだけでも精一杯だぜッ!」
本日のワタルの対戦相手はカブトムシッ! しかも全長は2メートルッッ!!
現実には存在しえない対戦相手を想像力で補いイメージし、シャドーボクシングの要領でその敵と対戦っているのだッ!
するとその時、ノックも無しにいきなりアリアがやってきたッ!
「ワタルさん! 南の島に行きましょう!」
「なんだいきなりッ! ノックぐらいしろッッッ!!!」
イメージトレーニングを中断させ、タオルで体を拭きながら言うワタルッ!
「実はさっき商店街の福引で、南の島への旅行券が当たったんです! だから行きましょう!」
「何ィッッ!? 南の島だとッッ!? ……行きたいッッッ!!!」
ワタルは仁王の形相で叫んだッ!
この異世界にやって来てからは過酷な戦いばかりの日々だったので、彼もたまには休みたかったッ! 優秀な武闘家は、休息をおろそかにしないのであるッ!
「それで、その南の島っていうのはどういうところなんだッ???」
「“ワイーハ”という名前のリゾート地で、温暖な気候と豊かな魚介類が有名な島なんです!」
「おお、いいところじゃないかッ!」
ワタル、ご満悦ッ!
「ちなみにその島まではクルーザーを使っていきます!」
「なるほど、クルーザーかッ! ……えっ、クルーザーッッ!?」
異世界にクルーザーがあるという事実に驚愕するワタルッ! しかし今はそんなことはどうだっていいのだッ!
「チケットは4枚あるので、あと2人誰か誘いましょう! 誰が良いと思いますか?」
「よし、それじゃあ目ぼしいやつらに声をかけてみるかッッ!!」
そして数時間後ッ!
ワタルの部屋に、新たに2人のメンバーがやってきたッ!
「よおワタル! バカンスに誘ってくれて嬉しいぜ!」
そう言うのはブレイドッ! 彫りの深い顔立ちと筋骨隆々な肉体が特徴的なナイスガイであるッ!
「バカンスか……随分と久しぶりだな……ワクワクしてきたぞ……」
そう言うのはリベリオンッ! 全身を覆うとげとげしい鎧と青いロングヘアーが特徴的な美人であるッ!
ワタルはあと2人のメンバーに、ブレイドとリベリオンを選んだのであったッ!
「ところでワタル、この美人なお姉さんは誰だ? こんな可愛い知り合いがいたんなら、もっと早く俺に紹介してくれても良かっただろう!」
ブレイドがにやけながら口を開いたッ! そういえばブレイドとリベリオンは初対面であるッ!
「おいワタルなんだこいつ、気持ち悪いな」
真顔で悪態をつくリベリオンッ!
「おっとこいつは悪かった! 俺の名はブレイド! かつては盗賊団のリーダーをしたりアイドルをしたりお笑い芸人をしたりしていたが、今はさすらいの自由人だ!」
要するにニートと言う意味であるッ!
「そ、そうか……よろしくな……」
リベリオンはシンプルにドン引きしていたッ!
翌日ッ! ワタルたちはスカイ王国を出て、ウィンド大陸の最南端に位置する船着き場までやってきたッ!
南の島ワイーハは、そこからクルーザーに乗って1時間ほど移動した先にあるッ!
しかし、問題が1つあったッ!
「……なんかこの船、ぼろくないか?」
船着き場でクルーザーを一目見たブレイドが呟くッ!
そう、そのクルーザーはあまりにもボロボロな見た目であったッ!
船体は所々さび付いて歪んでおり、明らかにダンボールとガムテープだけで補修されたような箇所もあるッ! 沈没必至のクルーザーだッッ!!
「まあ見た目はちょっとアレですけど、きっと大丈夫です!」
朗らかに笑いながら言うアリアッ! そんなわけで一行は、今にも沈みそうなクルーザーに乗り込み、南の島ワイーハへ出発したのであったッッッ!!!
そして船着き場を出てから30分後ッッッ!!!
クルーザー、見事に沈没ッッッ!!!
ワタルたちは海に投げ出されたッッッ!!!
「うわーーーッッッッッ!!!!!」
叫ぶワタルッ!
「うげーーー!!!」
もがくアリアッ!
「待て! 私は泳げないんだが!」
絶望するリベリオンッ!
「……」
気絶したブレイドッ!
果たして彼らの運命や如何にッッ!!
「う、うーーーん、ここは……ハッッ!!」
数時間後ッ! ワタルは砂浜で目を覚ましたッ!
「お、俺は一体……そうか、思い出したぞッ! 俺たちはワイーハに行こうとしたが船が沈没して……み、みんなはどこだッッ!!」
ワタル、鬼気迫る表情で右を見るッ! 左を見るッッ!! そしてもう一度右を確認るッッッ!!!
「よ、よかった……ッ!」
なんと、アリアとリベリオンとブレイドも、この砂浜に流れ着いていたッッッ!!!
圧倒的不幸中の幸いッ!
3人とも意識を失ってはいるが、すぐに目を覚ますだろうッッ!!
「しかしまいったぞ……ここはどこなんだッッッ???」
ワタルが見たところによると、砂浜には彼ら以外に誰もいないッ! 前方は広大な海に囲まれており、後ろを振り向けばそこには森があったッ!
つまるところ、全く見覚えのない地形であるッッ!!
「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!! 誰かいないかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッ??????????」
森に向かって叫ぶワタルッ! しかし返事はかえってこないッッ!!
「ま、まさか……ここは……」
この時、ワタル、確信ッ!
「む、無人島なのか……ッ!」
そうッ! ワタルたちはなんと、無人島に漂流してしまっていたッッッ!!!
次回、「極限!絶体絶命のサバイバル生活ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]無人島遭難エピソードにありがちなきっかけ一覧……異世界転生出版
[2]ガムテープの耐水性についての考察……異世界転生出版




