第62話 「神絵師!ワタル、イラストを貰うッ!(後編ッッ!!)」
前回までのあらすじ! 絵心を一切持たないワタルは、アリアのすすめでプロのイラストレーターに自画像を描いてもらうことにした! そして“神絵師矢馬蔵”という老人男性の元を訪ねる二人! だがしかし、不運にも彼は赤のインクを切らしていたため、イラストを描くことができなかった! そこでワタルとアリアは、赤のインクの原料である“紅薬草”を採るために、スカイ王国を出て南にある森へと向かうのであった!
ワタルとアリアが森にやって来て数分後ッ!
彼らの前方の草むらが、突然ガサゴソと激しくうごめき始めたッッ!!
「武ッッ!?!?」
素早く身構えるワタルッ!
「もしや……こいつがこの森の主かッ!?」
するとその瞬間、草むらから巨大な影がバッと飛び出してきたッ!
「「!!!」」
ワタルとアリアは同時に驚愕ッッ!!
なぜならッ!
草むらから出てきたのは、茶色い毛皮で全身が覆われた、なんとも恐ろし気な風貌のクマだったからだッッ!!
しかもッッ!!
その全長はおよそ3メートルッッッ!!!
“デカい”ッッッ!!! もはや説明不要の恐ろしさだッッッ!!!
「グルルアァァーーー!!!」
口を大きく開け、鋭い牙をのぞかせながら雄たけびをあげる巨大グマ!!
「やばいですよワタルさん! 間違いなくこのクマちゃんは森の主です!!」
アリアが顔をこわばらせながら言うッ!
「アリア、お前は下がっていろッ!!」
ワタルは仁王の形相でそう叫ぶと、戦闘態勢のまま一歩前に出たッ!
「こいつは……俺がやるッッ!!」
そして彼は、巨大グマの眼をじっと睨みつけるッ!
するとクマも、負けじとワタルの眼を睨み返してきたッッ!!
「……ッ!」
「……グルル……」
そこから30秒間ッ! ワタルとクマは、お互いに睨みあったまま一切動かなかったッ!
張りつめる緊張感に顔をしかめるワタルッ! “そう言えば家の鍵ちゃんと閉めてきたっけ?”と心配になってきたアリアッッッ!!!
そんな緊迫感を打ち破るかのように、クマが先に動いたッ!
「グルアァ!!」
血に飢えた獣は右腕を振り上げ、そのするどい爪をワタル目がけて振り下ろすッ!
「フンッ!」
それに対してワタルは、反復横跳びの要領で右へ跳び、攻撃を避けたッ!
「なるほど、デカい図体に似合わず動きが速いなッ!」
「グルアァ!!」
その後もクマは2発、3発とひっかき攻撃を繰り出してきたが、ワタルは顔色一つ変えることなく紙一重で避け続ける!!!
「ど、どうして反撃をしないんですか!?」
「慌てるなアリアッ! このクマをよく見てみろッ!!」
「?」
ワタルの言葉を聞いて、首をかしげるアリアッ!
「……もしかしてこのクマ、奥二重ですか?」
「…………………………違うッ! こいつはな……腹を空かせているだけだッ!」
「なるほど! 純粋に空腹で気が立っているから、襲ってきただけということですね!」
アリア、納得ッ!
「そうだッ! だから俺は、闘うつもりはないッッ!!」
「でもそれじゃあ、いつかやられてしまいますよ!」
「心配するなッ! こうすればいいんだッッ!!」
ワタルはそう叫ぶと、腰を低く落とし、右腕に熱血エネルギーを集中させていくッ!
そしてッ!
「武ッッッッッ!!!!!」
身構えていたクマの顔面目がけ、時速220キロの正拳突きを繰り出したッ!
が、しかしッ!
……止めたッ!
クマの顔面に当たる直前でッ!
ワタルは拳を止めたッ!
これはすなわち……“寸止め”ッッッ!!!
「攻撃を当てる必要はない……俺の方が上だと、こいつに分からせればいいんだッ!」
「グルルゥ……」
するとクマは突然こうべを垂れ、地面にゆっくりと伏せ始めたッ!
このうつぶせの大勢は間違いなくッ! “土下座”であるッッッ!!!
「そうだ……それでいいッ!」
弱肉強食の世界において、土下座は敗北宣言を意味するッ!
そしてこのクマは、今のワタルの寸止めで悟ったのだッ!
“こいつは自分よりも強い”とッッッ!!! だから土下座をしているのだッッッ!!!
これによって、ワタルとクマの闘いは終わったッ!
「さすがですワタルさん! 拳を当てない寸止めで実力の差をはっきり見せつけ、争うことなくクマを戦闘不能にしましたね!」
アリアはすかさずワタルを褒めたッ!
数時間後ッ!
ワタルとアリアは、無事に採取した紅薬草を持って再び矢馬蔵の家にやってきたッ!
「ほら、持ってきてやったぞッ!」
ワタルはそう言って、手に持った赤色の野草を矢馬蔵に手渡すッ!
「おお、よくぞ持ってきた! これで赤色のインクがつくれるわい!」
「じゃあ早速俺のイラストを描いてくれッッッッッ!!!!!」
ワタル、閻魔の形相で懇願ッ!
「よし、任せておけ! じゃあまずはデザインから考えるか!」
「武っ??? 自画像を描くんだから、今の俺の姿をそのまま描けばいいだろうッ!」
しかし、ワタルのその考えは甘かったッ!
「そうはいかんのじゃ若造よ! 今のお前の恰好は、デザイン的に引っかかりがないからな!」
「“引っかかり”……?」
「ようするに、トレードマークじゃ! ほら、麦わら帽子とか、銀色の天然パーマ頭とか、そういう分かりやすい特徴があった方が、良いイラストになるじゃろ!」
「そ、そういうものなのか……ッ!」
渋い顔で頷くワタル!!
「確かにワタルさんのビジュアルって、シルエットにしてみるとあまり特徴がありませんね!」
「確かになッ! アッ!! じゃあハチマキはどうだッ???」
ワタルはそう言うと、学ランの内ポケットから深紅の鉢巻を取り出したッ!
これは、以前脱獄囚のガウラと闘った時に身に着けた“爆熱乃破血魔鬼”であるッ!
「なるほど、ハチマキか! これなら分かりやすいトレードマークになるわい!」
「そうだろう、そうだろうッッ!!」
そして彼は、慣れた手つきで額にハチマキを巻き付けたッ!
実際のところこのハチマキを付けた回数はガウラ戦の時の1回しかなく、登場話数も第51話と52話の2話のみッッ!! これをトレードマークと言い張ってしまうワタルの圧倒的パワープレーに、読者の皆様も驚きを隠せないッッ!!
「じゃあこれで描いてくれッ!!!」
「分かった!」
そして数時間後ッッ!!
「出来たぞ!」
矢馬蔵はそう言って、jpg形式で作られたイラストをワタルに見せてきたッッ!!
そのイラストを目にしたワタルとアリアは、あまりの素晴らしさに圧倒的感動ッッッッッ!!!!!
「す、すごいクオリティじゃないですか! やっぱりプロって違いますね!」
「そうだなッ! 俺は今、猛烈に感動しているぞッッッッッ!!!!! いつでも格闘ゲームに参戦できそうなビジュアルだッ!」
「格闘ゲームって何ですか?」
「いや、何でもないッ!」
こうしてワタルは、プロのイラストレーターにイラストを描いてもらうことに成功したのであったッ!
めでたしめでたしッッ!! 圧倒的めでたしッッッ!!!
次回、「暗黒!呪われし遺物の謎ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]毎月応援イラストプレゼント企画!……http://www.cg-con.com/novel/6_novelcon/rendou.html




