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第57話 「炸裂!ワタルの必殺ツッコミ拳ッ!」

 前回までのあらすじ! ワタルはランニング中に、“難波ボケル”という人物に遭遇! そしてワタルは、話の流れでボケルと一緒に“スカイ王国最強漫才王者決定戦”、通称“S-1”に出場することになった! しかし、これまでの人生で一度も漫才をしたことがないワタル! 果たして彼は、無事に漫才のやり方を習得できるのだろうか!?











 というわけでッ!


 ワタルとボケルは、近所の空き地にやってきたッ!


「ほなやるでワタルさん!」


「応ッッッ!!!」


 意気込むワタルとボケルッ!


「それで、なんの練習からやるッッ??」


「それはモチロン、“ツッコミ”からや! 力強く鋭いツッコミを繰り出す練習をするで!」


「まかせろッ!」


 こうして、ワタルの過酷なツッコミ修行が始まったッ!


「ほなら試しにワタルさん! そこに生えてる木に、全力でツッコミをしてみてや! ええか? 絶対に手を抜いたらあかんで!」


 そう言ってボケルが指さす先には、全長3メートルの小柄な木があったッッ!!


「よし、やってみるぜッ!」


 ワタルは木の前に仁王立ちで陣取ると、腰を低く落とし戦闘態勢に入ったッ! それを見たボケルが思わず息をのむッ!


「こ、この構え……漫才をやる人間の構えちゃうで……! せやけどこの威圧感……上手く使えば、これも“笑い”に昇華できるかも知れへん……」


 次にワタルは深く息を吸い、全身に力をためるッ! そしてその息を口から一気に吐き出しつつ、右手の裏拳を木に打ち出したッッ!!


「なんでやねんッッッッッ!!!!!」






 バシンッッッッッ!!!!!






 彼の裏拳が当たった瞬間、木はいとも簡単に真っ二つにッッッ!!! そのツッコミはもはや、我々が想像しうる通常のツッコミを大きく凌駕していたッ!


「な、なんやこの一撃必殺の域にまで高められた芸術的なツッコミは……!」


 ボケル、驚愕ッ! ワタルが繰り出すツッコミの威力に、心から驚かずにはいられなかったッ!


 ここで説明せねばなるまい! ワタルが今繰り出したツッコミは、正確には“真灼熱鉄槌拳”という、大分県で編み出された空手技の一種であるッ!


(※真灼熱鉄槌拳……かつて“狂犬”と言われていた伝説の空手家が1789年に作り上げた、最強の空手技。呼吸を整え、凄まじい勢いで裏拳を繰り出すことがこの技の特徴。ちなみにこれとは一切関係ないが、1789年はフランス革命が起こった年でもある。テストに出るかもしれないので覚えておこう)


「流石やでワタルさん! やっぱりワイの目に狂いはなかった! せやけど……」


「んッ? どうしたッ!」


「このツッコミは最高やったけど、問題はツッコまれた相手が確実に死んでまうというところや……!」


 そうッ! 今のワタルのツッコミをくらって平然としていられるコメディアンなど、このスカイ王国広しと言えどそう簡単にはいないだろうッ!


「た、確かにそうだな……では、もっと力を弱めてツッコミをするとしようッ!」


 しかしボケルは、首をブンブンと横に強く振ったッ!


「あかん! あかんでワタルさん! 漫才で一番大切なのは、“全力で挑む”ということや! 少しでも力を緩めて漫才したら、すぐにそのことはお客さんにばれてしまう! そんなことじゃあ、笑ってなんかもらえへん!」


 力強く語るボケル!! 彼のその目には、漫才への熱き情熱がこもっていたッ!!!


「そうだなッ! お前の言う通りだッ! だが一体どうするッ! 俺はお前を殺したくなんかないぞッ!」


 するとボケルは、いつの間に用意したのか懐から“あるもの”を取り出したッ!


「そ、それは……ッ!」


「せや……“鎖かたびら”や……!」


 鎖かたびらッ! 堅牢性・柔軟性ともに優れ、衣服の上からでも簡単に身に着けることが出来る、鎖の鎧ッ!


「これをつけて、ワタルさんのツッコミを全身で受け止めたる!」


 ボケルはそう言い、鎖かたびらを羽織ったッ!


「いいんだな……ッ? ツッコんでも……ッ!」


 仁王の形相で問いかけるワタルッ! それに対しボケルは、力強く頷くッ!


「よし、それじゃあ行くぞッ!」


 ボケルは腕を大きく横に広げ、ワタルのツッコミを受け止める体勢に入ったッ!


 そしてッ!































「――なんでやねんッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」































 ワタル、渾身のツッコミッ!


 その鋭い裏拳が、鎖かたびらで覆われたボケルの胸にクリティカルヒットッ!


 常軌を逸した衝撃が彼の全身を襲ったッ!


(え……? ちょいまち、ワタルさんもしかして……本当に全力でツッコミしてはる!? いやいやいや待ってや! たしかにさっきかっこつけて“全力で来い”とは言ったけど、それでも普通手ぇ抜くやん! 手加減するやん! なんで本当にガチツッコミしてんねん! なんでやねん! 死ぬぞワイ! 漫才の練習中にツッコミに耐え切れず死亡するとかシャレにならんで!!!!!)


 しかし時すでに遅しッ!


 ワタルの全力ツッコミを受けたボケルは、時速220キロのスピードで吹き飛ばされていくッ!


「うわーーーーー!!!!!」






 ズドンッッッッッ!!!!!






 そしてボケルは空き地の壁に激突したッ!


「おい大丈夫かボケルッ!」


 ワタルが慌てて駆け寄るッ!


「だ、大丈夫、や……」


 息も絶え絶えと言った様子のボケルは、それでもなんとか意識を保ちつつ答えたッ!











 そして数分後ッ!


 驚くべきスピードで体力を回復させたボケルは、ワタルと本格的に漫才の打ち合わせを開始するッ!


「ええか? ワタルさん。ワイの思っていた通り、アンタのツッコミはとんでもない威力やった! これなら本番は、ワイがボケて、ワタルさんがあのツッコミをして、そしてワイが凄まじい勢いで吹き飛ばされていく、ということをやるだけでお客さんは大爆笑やで!」


「おお、そうかッ! しかし……それだとお前の身体が持たないぞッッ!!」


「まあ、そこはなんとかするしかない! 大会は一週間後やから、それまでに必死で体を鍛えたる!」


 “ツッコミに耐えられる体づくりをする”というところから始まる前代未聞の武闘派漫才、ここに爆誕ッッ!!


「ちなみに、大会ではまず予選が行われるんや。そこで勝ち上がった上位5組のメンバーが、決勝に進めるというシステムやで。せやから、漫才は予選と決勝、合計で2回やらなあかん」


「なるほど、じゃあネタを2つ作っておかないとなッ!」


「そういうことや! これから一週間、全力でネタと肉体を作るで!」


 こうして、ワタルとボケルの険しい漫才修行が始まったッ! 彼らは無事に武闘派漫才を完成させ、“スカイ王国最強漫才王者決定戦”、通称“S-1”に出場することが出来るのであろうかッッ!?


 次回、「ついに開幕!漫才王者決定戦ッ!」に続くッッッ!!!


・参考文献

[1]学ぼう、漫才のセオリー~笑いの道は茨の道やで~……異世界転生出版


[2]大分県で生まれた空手技大百科……異世界転生出版

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