第51話 「燃えよワタル!秘伝の極意、炸裂ッ!」
前回までのあらすじ! ついに始まった、ワタルと最後の脱獄囚・ガウラとの戦い! 両者の実力は拮抗していた! しかしガウラの跳び蹴りをワタルが受け止めた途端、なんと爆発が起こってしまう! 一体どうなるワタル!
スラム街の一角は、今や阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた!
ガウラの跳び蹴りが引き起こした爆発により、周囲の建物は瓦解ッ! 砂埃によって視界は遮られッッ!! 人々は逃げ惑うッッッ!!!
そんな中ガウラ本人は、瓦礫に腰掛け宙を見つめていたッッ!!
「ワタル……もっと強いかと思ったけど、そうでもなかったなぁ……」
彼はそう呟くと、今度は自らの靴に視線を落とすッ!
ここで説明せねばなるまいッ! ガウラの靴は、一見するとただの革靴ッ! しかし本当は、その靴は“仕込み靴”なのであるッッ!!
靴底には大量の火薬が仕込まれており、蹴りなどの大きな衝撃を加えることで、一気に爆発するという仕組みだッ!
そのため、その革靴は特注品ッ! “ウィンドクロコダイル”という、ウィンド大陸にしか生息しないワニの頑丈な革を用いているッ! これによって、仕込んだ火薬を爆破させても靴そのものは壊れないという、非常に強固な構造を実現させているのだッッ!!
「残念だよ……もっと楽しめると思ったのに……」
ガックリとうなだれるガウラッ! 言うまでもなく、彼の仕込み靴による蹴りをくらって、無事でいられる人間などいないッッッ!!!
ということは……ワタルは、死んでしまったのだろうかッッ!?!?
そんな馬鹿なッ! 主人公の死は“連載終了”に直結するッッッ!!! このようなところで終わらせるわけにはいかないッッッ!!!
頑張れワタルッ!
負けるなワタルッ!
このピンチの状況に、思わず読者の皆様も熱い声援を送らずにはいられないッッッッッ!!!!!
頑張れッッッ!!! ワタルッッッ!!!
負けるなッッッ!!! ワタルッッッ!!!
――その時ッッッ!!!
読者の皆様の応援が、ワタルに届いたッッッ!!!
「武ッッッッッ!!!!!」
なんとワタルは、瓦礫の山を押しのけ、下から飛び出してきたではないかッッ!! その勢いは、まさしくキラウエア火山の噴火のようであったッッッ!!!
(※キラウエア火山……ハワイの有名な火山。活火山であり、2018年の現在でも噴火が続いている。ちなみに“キラウエア”とは、ハワイ語で“吹き出す”という意味)
「やってくれるじゃねぇかガウラッッッ!!! おかげで学ランがボロボロだぜッッッ!!!」
拳をグッと握りしめながら叫ぶワタルッッ!! 彼の言う通り、その学ランは爆発の衝撃によってボッッッロボロになっているッッッ!!! 全身もすり傷だらけだッッッ!!!
そんな彼を見つめるガウラは、瓦礫の山に腰掛けたまま嬉しそうにニヤリと笑ったッッッ!!!
「生きて……いたのか……」
「ああッッッ!!! お前が火薬を使ってくることはあらかじめわかっていたからなッッッ!!! ギリギリで受け身が間に合ったぜッッッ!!!」
受け身が間に合った程度で、あの至近距離からの爆発をどうにか出来るものなのだろうかッッ!?!?
読者の皆様がそう考えてしまうのも無理はないが、ワタルなら出来るのであるッッッ!!! 流石はワタルだッッッッッ!!!!!
「さて、と……それじゃあ、第2ラウンド開始と行くか……ッッッッッ!!!!!」
彼はそう言うと、おもむろに学ランの内ポケットに手を伸ばすッ!
そしてそこから……深紅の細長い布を取り出したッッ!! 長さはおよそ2メートルッッ!! あれは間違いなく、“ハチマキ”であるッッ!!
「ハチマキ……そいつを、どう使うつもりだ?」
ガウラはゆっくりと立ち上がりながら、問いかけた!
「どうって……ハチマキなんだから、こう使うに決まってんだろッッッ!!!」
仁王の形相で叫ぶワタルッッッ!!! そして俊敏かつ情熱的な動作で、手に持ったハチマキをギュッと額に巻き付けたッッッ!!!
「教えてやるッッッ!!! これは我が家に代々伝わる伝説のハチマキッッッ!!! その名も“爆熱乃破血魔鬼”だッッッッッ!!!!!」
深紅のハチマキが風になびくッ! その様はまるで桃太郎ッッ!! 鬼を倒さんと立ち上がった、熱血武闘派の桃太郎ッッッ!!!
「このハチマキをつけた俺は、気合が通常時の100倍になるんだッッッ!!!」
「!?」
思わず驚愕するガウラッ! もはやワタルの発言にどこまで信憑性があるのかはわからないが、彼がそう言うのであればきっとそうなのだろうッッ!!
あのハチマキを身に着けることで、ワタルの気合は100倍になったのだッッッ!!!
(※ハチマキ……言葉の語源は、古代ローマの軍師ハーチェ・マーキ[紀元前99年-没年不明]からであるとされている。彼は戦いの前に、兵士を鼓舞するため一人ひとりに細い布を配り、額に巻かせていた。これが世界に伝わり、“ハチマキ”と呼ばれるようになった。ちなみに、ハチマキは漢字で書くと“鉢巻”あるいは“破血魔鬼”である)
「……ふん、頭に布を巻き付けたくらいで、強さが変わるわけないだろ……」
ガウラはそう言いながら、戦闘態勢に入ったッ! 全身の筋肉を極限までこわばらせるッッ!!
「それはどうかなッッッ!!! 甘く見てると、痛い目みるぜェッッッ!!!」
言うが早いか、ワタルはガウラ目がけて飛びかかったッッ!!
「!!」
ガウラは一瞬ひるみながらも、驚異的な反射神経で右足を振り上げるッ! ワタルがあの足にぶつかれば、再び大きな爆発が起こるであろうことは自明の理ッ!
しかし、同じ技を2回くらわないのがワタルの強みだッ! ガウラの前方でグッと踏みとどまった彼は、相手の振り上げられた右足を巧みにかいくぐり、懐へと潜り込むッッ!!
「喝ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
そしてワタルの鋭いボディブローッッッッッ!!!!!
ガウラのわき腹に、彼の熱血の拳が突き刺さったッッッ!!!
「!!!!!」
ガウラ、悶絶ッ!
今まで経験したことのない痛みッ! 苦痛ッ! 鈍痛ッ! 激痛ッ!
そして、気が付けばッ!
「ふふ、フフフフ……」
――笑顔っていたッ!
生まれて初めて体験する“苦戦”に、彼は嬉しくなっていたのだッ!
「そうだ! これだよ! これが欲しかった!」
叫びながらワタルに殴りかかるガウラッ! しかしワタルは、瞬間移動めいた足運びで後ろに避けるッ!
「初めて! 俺は初めて! “強いやつ”と戦えているんだ! 今まで俺はいろんな奴と戦ってきたが、どいつもこいつも雑魚ばかり! すぐに死んでいった! でもお前は違う!」
「嬉しいかッ! ガウラよッ!」
「ああ!! ああ!!!!!」
ガウラはそう答え、満面の笑みでワタルに向かっていくッ!
「気持ちは分かるぞ、ガウラッ! 強いやつと戦いたいと思うのは、“漢”なら当然のことだッ! でもなあ……ッッ!!」
寸前まで迫る敵の拳を紙一重で避け、カウンターパンチを繰り出すワタルッッッ!!! その一撃は、ガウラの鳩尾を的確にとらえていたッッッ!!!
「!!!」
「人を殺すのは……いけないことだッッ!!」
言うまでもない。人殺しは犯罪である!
次回、「堂々決着!やっぱりワタルが一番やべえッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]キラウエア火山とは……異世界転生出版
[2]よく分かるハチマキの歴史……異世界転生出版




