第50話 「ワタルが爆発!火薬武術の使い手、ガウラあらわるッ!」
前回までのあらすじ! 盲目の脱獄囚クラックに対して、ワタルは“アリアのドラムを利用する”という作戦を実行! その結果まんまと踊りだしてしまったクラックのみぞおちに、ワタルはすかさず鉄拳をぶち込むのであった!
「う、うう……」
ワタルがクラックのみぞおちに正拳突きをぶち込んで数分後ッ!
気絶状態だったクラックは、意識を取り戻したッ!
「ここは……どこだ……?」
「おっ、やっと目を覚ましたかッ!」
「ここはさっきと同じ、スラム街ですよ!」
ワタルとアリアが口々に説明するッ!
「……」
とっさに今自分が置かれている状況を整理するクラックッ!
体勢は仰向けッ! 両手は後ろ手にきつく縛られているッ! すなわち、もはや抵抗することは出来ないッ!
「……なぜ、私を殺さなかったんだ?」
彼は、ふと頭に浮かんだ疑問を口にしたッ! それに対してワタルが、両腕を組みながら答えるッ!
「俺は、お前が過去に何をしてきたかなんて知らんッ! どんな罪で捕まっていたのかも分からないのに、なんでそこまでする必要があるんだッッ???」
「……フッ、お前は正直者なんだな」
クラックは微笑みながら言ったッ!
「ほう、なぜそう思うッ?」
「人は嘘をつくときに、心臓のリズムを変える。だがお前は、一度も心拍音を乱していないからだ」
「心臓の音まで聞こえるなんて……凄く耳が良いんですね!」
素直に感心したアリアがそう発言するッ!
「ああ、まあな。ついでにあと一つ、この耳で得た情報を教えてやる」
「ん、なんだッッッ???」
するとクラックは目を閉じたまま、ゆっくりと口を開いたッ!
「12メートル先……ワタル、お前の後ろに誰かいるぞ」
「ッッッッ!?!?」
それを聞いたワタルが勢いよく後ろを振り向く! そこには確かに、一人の男性が仁王立ちしていた!!!
「お前は……誰だッッッ!!!」
その男の身長はなんと2.1メートルッ! 筋骨隆々の肢体に、鋭い眼光ッ! 逆立った黒髪に、尖った爪ッ!
一目見ただけでわかる、“ただものではない”というオーラッッッ!!!
「お前……ワタル……だな……?」
突如現れた大男はそう言うと、戦闘態勢を取ったッ!
「ワタルさん! そいつは多分、ガウラです!」
「ああ、だろうなッ!」
地下牢から脱獄した死刑囚の内の、最後の一人ッ! ガウラッ! 目の前にいる男性こそが、そのガウラだと見て間違いないッッ!!
「お前のことは、知ってる……脱獄囚を連れ戻すために、戦ってるんだろ……?」
「ああ、そうだッ!」
ワタルも戦闘態勢を取りながら返事をしたッ! するとガウラがニヤリと笑うッ!
「俺……いつまでも逃げ回るの嫌いだからさ……お前のこと、俺の方から倒しに来てやったよ……」
彼はそう言うと、腰を低く落とし一気に地面を蹴ったッ! 極限まで鍛え上げられた下半身の筋肉が、爆発的な加速を生むッ!!!
「早いな……ッッ!!」
ガウラのその巨体からは考えられないほどのスピードに目を見張りつつ、一気に上へとジャンプするワタルッ! 見事に相手のタックルを避けた!!!
「アリアッ! お前はこの場から逃げろッッ!!!」
ワタルが着地と同時に叫ぶッ!
「で、でも!」
「どうしたッ!?」
「クラックが、今のどさくさに紛れて逃げましたッ!」
「ッッッ!!!」
先ほどまでクラックがいた場所に目を向けてみると、確かにそこには誰もいなかったッ! すなわちクラックは、ワタルがガウラとにらみ合っていたあの一瞬の隙を狙って、逃げ出したということであるッッッ!!!
「……よそ見している、場合か?」
するとガウラは、容赦なくワタルに殴りかかってきたッ!
「クッ!!!!!」
ワタルは悪態をつきながらも、素早くサイドステップを行うことで敵の拳を避けるッ! その動きは一般人が見ればまるで瞬間移動だッッ!!
「アリアッ! お前はクラックを追えッ! ここは俺に任せろッッ!!」
「はい! わかりました!!」
そう言うと、アリアは一目散に走り去っていった!
「……ようやく、二人きりだな?」
薄気味悪く微笑みながら口を開くガウラッ!
「……ああ……そうだなッッッ!!!」
ワタルは仁王の形相で返したッ!
「……自己紹介、するよ」
「ッッ!?」
するとガウラは突然、かしこまったように話し始める!!
「俺の名前はガウラ。今まで犯してきた犯罪は殺人、放火、器物破損、その他もろもろ……おかげで俺は死刑確定の、極悪犯罪者ってわけだ……」
今までにないほどの残虐非道っぷりッ! しかしワタルは、顔色一つ変えずに敵を睨み付けたッ!
「……ほら、あんたの番だ」
余裕綽々といった雰囲気で、ガウラがそう言う!!
それを聞いたワタルは、腰を低く落とし、右腕を前に突き出したッ! あの構えは、見る者を威圧する猛々しい威嚇の構えである!!!
「俺の名前は伊藤ワタルッ! 今まで習得してきた武術は空手、中国拳法、ボクシング、その他もろもろ……すなわち俺は熱血武闘派の、最強高校生ってわけだ……ッッッッッ!!!!!」
威嚇の構えを保持したまま、自らの経歴をさらけ出すワタルッ! するとガウラは、何故か嬉しそうに笑い出したッッッッッ!!!!!
「フフ……嬉しいよ……一目見た時から、あんたは“強い”って思ってたけど……どうやら、想像以上らしい……」
そしてッ!
ガウラは突然、勢いよく豪快に走り始めたッッ!!
「来いッッッ!!!」
張りつめる緊張感を肌に感じながら、鋭く叫ぶワタルッ!
対するガウラは、ワタルの前方5メートルに来た辺りでジャンプをし、その勢いを利用しながら右足を前に突き出すッッ!!
要するに、跳び蹴りであるッッッ!!!
「……ッッッ!!!」
ワタルは、彼の右足を両腕で掴もうと身構えたッッッ!!!
だがその次の瞬間ッッッ!!!
パァァァンッッッ!!!
――スラム街に、凄まじい爆発音が響き渡った――ッッッ!!!
次回、「燃えよワタル!秘伝の極意、炸裂ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]こうもりの秘密~彼らが暗闇で過ごせる理由~……異世界転生出版




