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第33話 「驚きの戦術!ワタル、熱血を捨てるッ!」

 前回までのあらすじ! ドラゴンを倒すためにオーブを求めるワタルたちがたどり着いたのは、なんと最強の傭兵邪道院邪々美じゃどういんじゃじゃみの実家であった! そしてオーブを賭けて始まるワタルと邪々美の一騎打ち! ワタルが勝てば3つ目のオーブが手に入るが、果たしてどうなるのだろうか!











「そらそらそらそら!!」


 凄まじいスピードで繰り出される大斧の連撃ッ! 身長160センチの邪々美のどこにそんなパワーがあるのだろうかッッ!!


「ふんふんふんふんッッッッッ!!!!!」


 しかしワタルも負けてはいないッ!


 軽快なステップで攻撃を避けつつ相手に急接近ッ! そして熱血エネルギーを込めた正拳突きを繰り出したッ!


「無駄よ!!」


 そう言うと邪々美は垂直に高く跳び上がり、ワタルの拳を回避ッ!


 双方、押しも押されぬ熱戦ッッ!!!











 一方その頃ッ! 少し離れたところでその闘いを見守るアリアたちはッ!


「……お腹すきません?」


「うむ。少し長旅で疲れたな」


「おや、そうですか。では紅茶をいれてきましょうか?」


「ありがとうございますセバスチャンさん!」


「感謝します」


「いえいえ、執事たるもの、来客をおもてなしするのは当然です」


 暇を弄んでいたッッ!!!!!











「どりゃあッッッ!!!」


 気合一閃ッッッ!!!


 たくましい踏み込みと共に空手チョップをするワタルであったが、邪々美はそれを斧でガードしたッ!


「やるなッ!」


「当たり前でしょ!」


 そう言って返す刀で斧を振るう彼女であったが、ワタルの俊敏な動きを捉えることは出来ないッ!


 この時、ワタルの中の“懸念”が、“確信”に変わったッ!!!


(このままでは……埒が明かない……ッ!!!)


 ワタルの強みは、問題点を見つけた時の対応の迅速さであるッ!


 このままのスタイルで戦い続けても決定打を見出すことが出来ないと分かった瞬間、彼は既に行動を開始していたッ!


(……これで……どうだ……)


 するとワタルはッ! なんということかッッ!!






 ――“ファイティングポーズ”を、解いたッ!











「――っ!?」


 この瞬間、邪々美は困惑していた。理由は2つある。


 1つは、目の前のワタルが突然構えを解いてしまったこと。そしてもう1つは、彼の周囲を包んでいた赤いオーラ ―熱血エネルギー― が、完全に消えてしまったことだ。


「ど、どういうこと!?」


 驚きながらも、攻撃の手は止めない。素早く、かつ重い斬撃をワタル目がけて振り下ろす。


 だが、彼は無表情でその攻撃を避けた。そう、先程まで仁王の形相で戦っていたワタルが、無表情で避けたのだ。


 赤いオーラをまとっていた彼が、一瞬にして“無”になった。


(くそ……やりづらい……!)


 武道において、“戦いの最中に急に戦闘スタイルを変える”と言う手は、実の所非常に有効である。


 “突き”主体の戦い方から、“投げ”主体の戦い方へ。


 “二刀流”の戦い方から、片方を捨て“一刀流”の戦い方へ。


 ……唐突に、何の前触れもなく戦い方を変える。空手にせよ、柔道にせよ、相撲にせよ、剣道にせよ、この手法は古来より頻繁に用いられてきた。


 そしてワタルも今、戦闘スタイルを変えた。


 熱血エネルギーを用いた攻めの戦い方から、熱血エネルギーを捨てた――すなわち、“無”の状態での受けの戦い方へと。


 あえて、彼のアイデンティティともいえる“熱血”を捨てることにより、邪々美の攻撃のテンポを狂わせた。


 これが、“隙”になる。


 極限まで気配を薄めたワタルは一歩踏み込み、彼女の鳩尾にはっけいを叩き込んだ。


「……武……」


 それは、消え入りそうなまでにか細い掛け声であった。しかし、熱血エネルギーがない状態とはいえその威力は絶大である。


「っ!!!???」


 邪々美の体内を駆け巡る凄まじい鈍痛。


 そして、彼女は呆気にとられながら吹き飛ばされていく。


(い、今の攻撃……見えなかった……!)


 激しい衝突音とともに、彼女は部屋の壁に激突した。その衝撃と痛みは、彼女の中から“闘争心”を根こそぎ奪い取るには充分なものであった。











「……あんた、中々やるじゃない」


「応ッ! お前もなッ!」


 数分後ッ! いつもの調子に戻ったワタルは、邪々美と笑顔で会話をしていたッッ!!


「やりましたねワタルさん!」


「素晴らしい戦いだったぞ、ワタル!」


 アリアとリベリオンは、紅茶の入ったティーカップを片手に言ったッ! ちなみに戦いの後半は大して見ていないッ!


「……それで、オーブはッッ???」


「少々お待ちください」


 するとセバスチャンは、突如声を張り上げたッ!


「旦那様ー! 旦那様ー!!」


 そしてしばらくするとッ!


 ドシンッ! ドシンッッ!! という地響きが屋敷全体を揺らし始めたッ!


「な、なんだッッ!?」


 ワタル、唖然ッ! しかし驚くのはまだ早いッッ!!!






 ……ズドンッッッ!!!






 凄まじい轟音と共に、大広間の東側に面する壁が爆発四散ッッ!!!


 そこから、一人の人間が堂々と入ってきたッ!


 いや、もはや“人”と呼んでいいのだろうかッッ!?


 驚くべきことに、その人物の身長は約4メートルッ! ワタルの2倍はあるのだッ! “巨人”と形容するのが相応しいッ!!!


「やあ、こんにちは……!!!!!!!!!!」


 オーダーメイドと思われる純白のスーツに身を包んだ男性は、赤鬼が如き顔面をぐにゃりと歪ませて挨拶をしたッ! おそらく、あれで微笑んでいるつもりなのだろうッ!


「こ、こんにちは……ッッ」


 なんという事だッ! 流石のワタルも気圧されているッ!


「君が、ワタル君か……吾輩の娘を倒してしまうとは、見事だな……」


「娘……ッ? では、あなたは……ッ??」


「うむ。吾輩は邪道院邪々丸じゃどういんじゃじゃまる。邪々美の父だ」


「――ッッッ!?!?」


 これは驚きの展開であるッ! 突如壁をぶち破って登場したこの巨人が、なんと邪々美の父親ということらしいッ!


 次回、「唖然!地獄のカードゲームバトルッ!」に続くッッッ!!!


・参考文献

[1]小学生向け・よく分かる無の境地……異世界転生出版


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