第32話 「激闘!邪々美再びッ!」
前回までのあらすじ! 2つ目のオーブを求めるワタルたちは、“俺ピン”の作者である山田ジェイコブの為に、面白い小説のあらすじを書くことになった!
まともな作品を書けず四苦八苦するワタルとアリアとリベリオンであったが、ワタルの“全てのあらすじを混ぜる”という奇策によって、見事ジェイコブを気絶させることに成功! オーブも無事に強奪したのであった!!
「いやー、ここまではなんとか順調だなッ!」
ワタルはその手に握られた青いオーブを見つめながら言ったッ!
「うむ、そうだな。だが油断は禁物だぞ」
ワタルたちは今、荒野を進んでいる途中であるッ!
気絶から目覚めた山田ジェイコブから尋問して得た情報によると、この荒野の先にある洋館に3つ目のオーブがあるらしいッッ!!
「あっ、あれじゃないですか??」
そう言ってアリアが前方を指すッ! そこには、荒野の中にぽつんと立派な洋館が立っていたッ!
それはジェイコブの館よりも立派な建物であったッッッ!!!
「なぜこんなところに、ここまで立派な館がッッ!?」
この異様な光景に思わずワタルもびっくり仰天ッ!
「よく分からんが、とりあえず行ってみるか」
そして洋館に向かって進むワタル一行ッ!
そのまま巨大な扉の前に来ると、突然ッ!! 彼らの来訪を予期していたかのように、その扉がゆっくりと開いたッッッ!!!
「お待ちしておりました……」
扉の先に立っていたのは、一人の初老の男性ッ!
清潔感のある黒い燕尾服に身を包んでおり、白髪交じりの髪は整髪料を用いて綺麗に整えられているッ! 彼の出で立ちはすさまじく上品ッ! 圧倒的上品ッッッ!!!
「あなた方がワタル様ご一行ですね?」
「そうだッッ!!」
ワタルは勢いよく返事をしたッッ!!
「私はこの屋敷で執事をしているセバスチャンです。ではこちらへどうぞ」
そんなわけで彼らは、セバスチャンの誘導に従って豪華な洋館内を歩き始めたッ!
「いいんですか? ワタルさん。こんなにほいほいついて行って」
小声で話しかけてくるアリアッ!
「まあ何とかなるだろッッッ!!! ガハハッッッッッ!!!!!」
ワタルは大声で答えたッッ!! ちなみに、良い子の皆は知らない人について行ってはいけないぞッッ!!
数分後ッ! 彼らはとある一室にやってきたッ!
「おおッ! 広いなッッ!!」
ワタル、圧巻ッッッ!!!
そこは、常軌を逸したレベルの広さを誇る大広間ッッ!!
しかしなぜかテーブルも椅子も設置されていない、閑散とした部屋であったッ! ただ天井の巨大なシャンデリアが、部屋を明るくきらびやかに照らすばかりであるッ!
「ワタル様。あなたがオーブを求めてこちらにいらしたということは、わかっております」
セバスチャンがワタルの方を向いて静かにそう言ったッ!
「そうか、話が早いなッ! ではオーブをくれッッッ!!!」
熟練の白狼が如き気迫と共にそう叫ぶワタルであったが、セバスチャンは顔色一つ変えずに首を横に振るッ!
「オーブは邪道院家に代々伝わる由緒正しき家宝……故に、そう簡単にお渡しすることはできません」
彼の言葉にハッとするワタルッ!
「邪道院家……だと……ッッ!?」
我々は、その名前を知っているッ! “邪道院”という名前をッッ!
それは、第24話でのことだッ!
スラム街の存続を賭けた団体戦で立ちはだかった敵の傭兵の名が、“邪道院邪々美”だったのであるッ!
「オーブをお求めになるのであれば……邪道院家次代当主である、邪々美様をお倒し下さい」
「なるほど……そういうことであったかッ!」
ワタルは光速を超えたスピードで納得ッ! 早速ウォーミングアップとして腕立て伏せを開始したッ!
「頑張ってくださいワタルさん! 邪々美さんは強敵ですよ!」
「ん? なんだお前ら。邪々美、というやつのことを知っているのか?」
リベリオンは首を傾げたッ!
「ああッ! 本格的に戦いこそしなかったが、少し拳を交えただけで理解ったッッ!! あいつは強いッ!」
「なるほど、そうなのか。それじゃあ頑張るんだぞ」
「応ッ!」
そして無事に時速800キロの速度で腕立て伏せ3000回を終わらせたワタルは、時速1200キロのスピードで立ち上がり叫んだッ!
「というか邪々美はどこだッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
するとセバスチャンはニヤリと笑って口を開くッ!
「最初から、お嬢様はこのお部屋にいらっしゃいますよ……」
「ッッ!?」
その瞬間ッ!
ワタルたちのはるか頭上……天井にぶら下がった巨大シャンデリアの上から、一人の人間が飛び降りてきたッッ!!!!!
160センチほどの小柄な身長ッ! 茶色いショートカットの髪ッッ!! そして一際目を引く、背中に背負った全長2メートルの大斧ッッッ!!!
間違いないッッ!!!!!
邪道院邪々美の登場だあぁぁぁあッッッッッ!!!!!
「おひさ!」
着地と同時にワタル目がけて斧を振り下ろしてくる邪々美ッ!
「ああ、久しいなッ!」
挨拶を返しつつ彼女の斧を躱すワタルッ!
こうして、3つ目のオーブを賭けた決闘が開幕ッッ!!
「お下がりください……」
「は、はい……」
「うむ……」
アリアとリベリオンはセバスチャンの忠告に従い、ワタルたちから遠く離れた場所に移動したッ!
「しかし驚いたぞ、お前がこんなところに住んでいたとはなッ!」
そう言いながら正拳突きを繰り出すワタルッ!
「アタイもびっくりしたよ、ワタルがオーブを求めてこんなところまで来るなんて!」
そう言い返しながら正拳突きを躱す邪々美ッ! その美しい避け方は、まるで湖を優雅に泳ぐ白鳥のようであった……ッ!!!
「はっきりと言うが、女性とは戦いたくないッ! 大人しくオーブを渡してくれッ!」
「それは無理! 家宝であるオーブを渡したら、パパに怒られちゃうもん!」
時速900キロのスピードで迫りくる大斧の横なぎを土下座のフォームで躱すワタルッ! その姿勢のまま懇願を開始ッ!
「頼むッ! この通りだッ! このままではドラゴンが暴れだしてしまうッ!」
「ドラゴンなんて知ったことじゃないもん! スカイ王国がどうなろうと、アタイには関係ないわ!!」
土下座状態のワタルに斧を振り下ろす邪々美ッ! しかしその土下座は――残像であったッ!
「どうだッ! これが土下座の残像……名付けて“土下残像”だッ!!!」
彼は邪々美の背後に回り込みつつ、たった今思いついた技名をそれっぽい感じで叫ぶッ!
「ダサいっつーの!!!」
邪々美も負けじと残像を出しながら高速移動ッ!
そしてその凄まじい光景を、離れた場所から見守るアリアたちッ!
「ワタルさん……大丈夫でしょうか……」
アリアは祈るように両手を合わせながら呟いたッ!
「土下座の残像……土下残像……ふふ、私は悪くないと思ったぞ」
リベリオンは感心するように両腕を組みながら呟いたッ!
果たしてワタルは邪々美を打ち倒し、3つ目のオーブを手に入れることが出来るのであろうかッ!
この続きを絶対に見逃すなッッッッッ!!!!!
次回、「驚きの戦術!ワタル、熱血を捨てるッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]絶対にウケるおやじギャグ100選……異世界転生出版




