第30話 「混沌!オーブを賭けた小説対決ッ!」
前回までのあらすじ! ワタルはオーブを賭けて村長とフードファイトを行い、見事に勝利! こうして無事に1つ目のオーブを入手するのであった!
そして翌日! ワタル一行は、今日も山道を進んでいたッ!
「あの村長の話によると、2つ目のオーブはこの先の洋館にあるらしいが……お、あれか?」
するとリベリオンは、前方に巨大な洋館を発見!!
「こんな人里離れたところに住んでるなんて、この館の主は相当な変人なんでしょうね!」
「どうやらここには売れっ子の小説家が住んでいるらしいぞ」
「ほうッ! 一体どんな小説を書いているんだッ?」
「“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”という作品だ」
その瞬間ワタルの表情が一変して青ざめたッ!
「おいッッッ!!!!! なんでそれを早く言わなかったッ!!!」
説明しよう! ワタルは第11話「ワタル、爆裂!思いを込めたレビューをかませッ!」での小説レビュー対決の際に、この作品を酷評しているのだッ! よって、彼がこの小説の作者に会うのは色々とマズいッッ!!
「考えすぎですよワタルさん」
「そうだぞワタル。そもそもこんな山奥に住んでいるぐらいだ、お前が小説を酷評したことも知らないかもしれないぞ」
「そうだと良いんだが……ッ!!!」
そんなわけでワタル一行は、2つ目のオーブを求めて洋館に突入するのであった……ッ!
「俺っちの小説を酷評した奴にオーブをやるわけねぇだろバーーーーーーーカ!!!!! とっとと帰れ!!!!!」
案の定、“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”、略して“俺ピン”の作者である山田ジェイコブはキレていたッ!
緑色の肌をもつオーク族のジェイコブは、その豚のような顔面を怒りに歪ませるッ!
「そこを何とか頼むッッッ!!!」
ワタルは必死に懇願するが無駄ッ!!!
「てめぇが俺っちの小説を“つまらない”って言ったことはわかってるんだ!!!!! 許さんぞ!!!!!」
「おいワタル、謝ったほうがいいんじゃないのか?」
リベリオンはワタルに謝罪を提案するがしかしッッ!!!
「…………………………………………………………………………………………………………いやでもあれはつまらなかっただろ……ッ!!!」
ワタル、ここだけは譲れなかったッ!!
「こ、この野郎!! 馬鹿にしやがって!!!」
ジェイコブの怒りが最高潮に達するッッ!! ここでアリアも会話に加わったッッッ!!!
「お願いしますジェイコブさん!! 私たちはどうしてもオーブが必要なんです!」
「か、可愛い……!」
たじろぐジェイコブ! 彼はアリアのような清純系の女の子に弱かったッ!
「……そ、そこまで言うんなら……取引だ!」
「取引?」
アリアは首を傾げたッ!
「実は最近、執筆活動が少しスランプ気味なんだ……だから、素晴らしいインスピレーションを与えてくれるような面白い小説を見せてくれたら、我が家の家宝であるオーブを渡そう!」
「でも私、小説を書いた事なんてありませんよ……?」
「それじゃあ、書くのは作品のタイトルとあらすじだけで構わない! とにかく頭にガツンと来るような、刺激的で個性的な設定が見たいんだ!」
「よしッ!! やろうッッ!!!」
というわけで、執筆を行うためにワタル一行はジェイコブと離れて別室に移動ッ!
そこには、巨大なテーブルと羊皮紙が用意されていたッ!
「制限時間は1時間……この時間内で、最高の小説の設定を考えなくては……ッッ!!」
小説の執筆経験ゼロのワタルであったが、オーブのために意気込むッ!
「よし、では早速書いていくとするか。実は私は昔から小説を書くのが好きでな。期待していてくれ」
リベリオンは薄く微笑みながらそう言ったッ! これは意外であるッ!
「へー、リベリオンさんは執筆の経験があるんですね! よし、私も頑張ります!」
そこから数分間、羊皮紙とにらみ合いながら黙々と執筆を行う3人!
そして30分後、まずはアリアが口を開いたッ!
「できましたー!」
「ほう、もう出来たのか。中々早いじゃないか。それで、タイトルは?」
「“メルティー・ラブ”っていう純愛小説です!」
アリアは得意げな表情で答える! どうやら相当な自信作のようだ!!
「よしッ! 早速聞かせてくれッ!!」
「はい!」
ワタルに促され、彼女はあらすじの音読を開始したッ!
「私の名前はメイ! どこにでもいるごく普通の18歳!(はぁと)
年に一回開かれる国王のダンスパーティーに行ったら、なんと若き王子様に惚れられてしまったの!(はぁと)
そんなわけで幸せの絶頂にいた私だけど、王族との結婚も楽じゃない!(はぁと)
私の成功を妬む女性たちの嫌がらせや、小姑からのいじめ!(はぁと)
王族に隠された怪しい秘密や、伝説の剣“エクスカリバー”を巡る女同士の醜い戦い!(はぁと)
でも、私は負けないわ!(はぁと)
この苦しみに耐えて、絶対に王子様との甘い新婚生活をものにして見せるんだから!(はぁと)」
「すまんアリア、ちょくちょく入ってくる“(はぁと)”のせいで話が全然頭に入ってこなかった」
「ええっ!?」
リベリオンの言葉にショックを受けるアリア!!
「そもそもあの“(はぁと)”はなんなんだ」
「いや、なんか、こういうのあった方が可愛くないですか?」
「俺はいいと思ったぞッッ!!!」
ワタルは勢いよくアリアを褒めたッ!
「というかエクスカリバーってどういうことなんだ。これ純愛小説じゃなかったのか」
「リベリオンッ! 他人の書いた小説にケチばかりつけるのは良くないぞッ! エクスカリバーぐらいどんな小説にも登場するだろうが!」
「そうですよリベリオンさん!」
「よしッ! それじゃあ次は俺の番だッ! 小説を書くのは初めてなんだが、一生懸命やってみたぞッ! 聞いてくれッッ!!」
そう言うと、ワタルは羊皮紙を持って立ち上がったッ!
「ほう、随分と気合いが入っているじゃないか、ワタル。それで、タイトルは?」
「“スーパー爆裂やんちゃボーイ・カケル”だッ!!!」
「流石はワタルだな。タイトルを聞いただけで読む気が失せたぞ」
「よし、それじゃあ早速あらすじも聞いてくれッ!!!」
そしてワタルは、仁王の形相で自作小説の音読を開始するのであった……ッッ!!!!!
次回、「仰天!ワタル、初めての小説執筆ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]小説の面白さはタイトルとあらすじで決まる……異世界転生出版




