第25話 「恐るべき戦士邪々美!そして始まる、大将戦ッ!」
前回までのあらすじ!
スラム街の存亡を賭けた3対3の本気勝負!
先鋒戦はブレイドが見事勝利! そして続く中堅戦、マリーは圧倒的な力を持つ邪道院 邪々美に苦戦! 結果、降参をするのであった!
しかし攻撃をやめない邪々美! もはやこれまでかとマリーが諦めた瞬間、ワタルが亜音速で2人の間に割って入るのであった……ッッッ!!!
「……第三者が口出ししないでくれる?」
突如乱入してきたワタルに対して、いじけたような顔で言う邪々美ッ!
「ふざけるなッ! もう戦いは終わったッ!」
ワタルは邪々美の斧を左手で受け止めた状態で、雷鳴が如く怒鳴った!
「……じゃあ、今度はアンタがアタイと戦う?」
「やめておけ。恥をかくぞ……ッ!」
「恥をかくのはアンタの方よ!!!」
気合一閃ッッッ!!!
邪々美は力づくでワタルの左手から斧を奪い返し、そのまま彼目がけて斬撃を繰り出すッ!
――しかしッッッ!!!
「“鈍足い”な……ッ!」
ワタルは瞬時に邪々美の背後に高速移動をしていたッ! あの動きはまさしく、中国に古くから伝わる仙術の一種、“熱血縮地法”であるッッッ!!!
(※熱血縮地法……正確な発祥は不明であるが、古代中国にて熱き心を持った仙人が編み出したと言われる技。熱血エネルギーを用いたこの技のスピードは、通常の縮地のそれとは比較できないほど速い。しかし、移動できる距離が非常に短いのが欠点)
「アンタ……“俊足い”じゃん……!」
彼女は振り返りながらそう言ったッ!
「いいね……面白くなってきた! アンタは今度会った時のお楽しみに取っておくよ!」
「なに……ッ!?」
「それじゃ、残念だけどアタイは次の仕事があるからもう行くねっ!」
すると邪々美は大斧を背中に背負い、超スピードでワタルの視界から姿を消すッ!
「……ッッ!?」
それは、ワタルですら完璧には捉えきれないほどの速度であったッ!
「邪道院邪々美……なんと恐ろしい戦士なんだ……ッ!」
こうして、中堅戦は終了ッッ!!
現在の結果は互いに1勝1敗ッ! すなわち、全ては大将戦にかかっているということであるッ!
そして始まる大将戦ッ!
ワタルの眼前には、黒いコートに身を包んだ巨大な人物が立っていたッ!
「さて、始めるか……ッ!」
先程の邪々美との戦いのことは忘れ、目の前の戦いに集中するワタルッ!
「頑張ってください! ワタルさん!」
アリアも大声で彼のことを応援している!
そして3人目の刺客が、そのコートをすさまじい勢いで脱ぎ捨てたッ!
その瞬間ッ!
ワタルとアリアは、自分の目を疑うッッッ!!!
「ガーランド……ッッッ!!!」
そこにいたのは、上半身裸の大男であったッ! 煌めくスキンヘッドッ! 筋骨隆々のたくましい肉体ッ!
そうッ! ウィルソンが用意した3人目の刺客とは、ワタルがこのスカイ王国に来て最初に戦った武闘家、ガーランドだったのであるッッッ!!!
「どうしてガーランドさんが!?」
困惑するアリアッ!
「おい、ガーランドッ! 説明しろッ!」
ワタルも状況を飲み込めないッ!
「……すまない、ワタルよ……だが、私にも養うべき“家族”がいるのだ……!」
彼はそう言いながら、申し訳なさそうに顔を伏せたッ!
「この話を受けた時、もちろん断ろうと思った。だが……! ウィルソンの報酬金は、破格の値段……断るということが、俺にはできなかった……!」
「そうか……ッ!」
ワタルは、全て“理解”したッッ!!
そして足を広げ、腰を低く落とし、右腕を前に突き出すッッ!!
「ならば、戦うのみだ……ッ!」
ワタルのその口調は、決してガーランドを責めるような高圧的なものではなかったッ!
「……ああ!」
ガーランドも静かにファイティングポーズをとるッ!
現在の時刻は午後2時ッ! 天候は曇りッ!
太陽は雲に姿を隠してしまっているため、ガーランドの必殺技である“神が与えし頭部の輝き”は使えないッ!
それはすなわち、ガーランドには万に一つも勝ち目がないということでもあったッ!
だが、それでもッ! 彼はファイティングポーズをとったッ!
そして10メートルほどの距離でにらみ合うワタルとガーランドッ!
「……はあ!!」
先に動いたのはガーランドッ! 力強く踏み込みながら正拳突きを繰り出すッ!
……が、無駄ッッッ!!!
彼の拳がワタルに触れるよりも早く、ワタルのカウンターパンチが顔面に直撃したッ!
「ぐはぁ!」
たまらず吹っ飛ぶガーランドッ! なんとか受け身を取り体勢を立て直すが、しかしその目は戦意喪失寸前といった感じだッッ!!
「……まだまだ!」
ガーランドはもう一度ファイティングポーズをとるッ! だが反対に、ワタルの方は構えを解いてしまったッ!
「!?」
驚愕するガーランドッ!
そしてワタルは、静かに口を開くッ!
「……ガーランド……お前が、ウィルソンの仕事を受けたことを責めるつもりはないッ! お金を求める気持ちは、当然誰にだってあるッ! だがあえて言う、もう戦っても無駄だ……ッ!」
「な、なに……!」
「今のお前は、俺と戦うには値しない……ッッッ!!!」
「な、なんだと! 舐めるな! ふんっっっっっ!!!!!」
そう言うとガーランドは、ワタルを威嚇するようにボディビルのポージングをとったッ! 両腕を天に掲げつつ曲げて上腕二頭筋をアピールするあれは、まさしく“ダブルバイセップス”であるッッッ!!!
――だが、しかしッッッ!!!
「“ハリ”のない筋肉だ……ッ!」
「くっ!」
ワタルの言う通り、ガーランドのダブルバイセップスには、以前見せたような神々しさがなかったッ!
「理由は単純ッ! “罪悪感”だッ!」
「罪悪感……だと……!?」
「そうッッ!! 悪人であるウィルソンの仕事を受けてしまったという罪悪感が、お前の心の中にあるッ! だからだッ! だから、筋肉が笑ってねぇんだッッッ!!!」
「……!!!!!」
ワタルのその言葉は、ガーランドの胸に深く突き刺さった!!!
「問うぞ、ガーランドッッ!! 自分の筋肉ひとつ満足に笑顔にさせられないようなやつが、家族を笑顔にできるのかッッ!?」
「そ、それは……! それは……!!」
答えは言わずともわかるッ! “否”だッッッ!!!
「俺と本気で戦いたいのであれば、その罪悪感を捨てろッッッッッ!!!!! 本当の笑顔の筋肉で、かかってこいッッッッッ!!!!!」
ワタルの熱き思いを乗せた言葉が、昼下がりのスラム街に響き渡ったッッッッッ!!!!!
次回、「熱血の問い!その筋肉は笑っているかッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]よくわかる中国の“仙術”……異世界転生出版




