第18話 「ワタル、熱唱!前代未聞の除霊ラップッ!」
前回までのあらすじ! ついに開催当日を迎えた“ウィンド大陸最強バンド決定戦”!!!
ボーカルのワタル、ギターのリック、ベースのブライアン、ドラムのアリアという異色の4人で結成された新生“炸裂☆ボンバーズ”は、残虐非道なライブパフォーマンスをすると噂されているデスメタルバンド“獄苦悪苦”を打ち倒すことが出来るのだろうか!
果たして、ウィンド大陸最強バンドの座はどちらの手に!!!!!
大会会場である音楽アリーナは既に満員御礼ッ! 立ち見の客まで出てくる始末であったッ!
「すごいな、リックッ! 何人ぐらいいるんだッ!?」
「そうだな……ざっと5000人ってところか?」
アリーナの舞台裏で準備を進めるワタルとリックは、客席を覗きながら話していたッ!
「ワタル……なんだか俺、緊張して来たぜ!」
「大丈夫だリック!落ち着けッ!」
するときらびやかなステージの上に、一人の初老の男性が登場ッ! 黒いスーツに身を包み、髪をきっちりと七三に分けた身綺麗な男性だッ!
そしておもむろにマイクを持つと、にこやかな笑顔で口を開くッ!
「レディースアンドジェントルメーン! 皆さんようこそ、ウィンド大陸最強バンド決定戦へ! 私は今大会の司会・進行を務めます、ジョセフ横澤というものです! どうぞよろしく!」
「「「イエーーーーイ!!」」」
「「「ワーワーーー!!」」」
「「「パチパチパチパチーーー!!!」」」
観客たちは一斉に拍手喝采ッ! 会場のボルテージは絶好調だッ!
「それでは、今大会の出場バンドをご紹介しましょう! 本来であれば10組のバンドが参戦する予定だったのですが、なんとその内8組が辞退! よって今回演奏するのは、新進気鋭のデスメタルバンド“獄苦悪苦”と、メンバーがガラッと変わった新生“炸裂☆ボンバーズ”の2組のみ!」
「「「イエーーーーイ!!」」」
「「「ワーワーーー!!」」」
「「「パチパチパチパチーーー!!!」」」
「皆さん、準備はよろしいですか? それでは、早速開始いたしましょう! まず先にパフォーマンスするのは“獄苦悪苦”!! ヘヴィなサウンドと死者が出てしまうほど過激なライブパフォーマンスが特徴の3人組デスメタルバンド!!! それではどうぞ!」
ジョセフ横澤の合図とともに、ステージ横から“獄苦悪苦”の3人が一斉に飛び出したッッッ!!!
「「「キャーーー!!!」」」
「「「獄苦悪苦ーーー!!こっち向いてーーー!!」」」
それと同時に観客席から響き渡る黄色い声援ッ! 以外にも獄苦悪苦は女性ファンが多いらしいッ!
そしてまがまがしいフェイスペイントをしたボーカルがマイクをグッと握りしめ、大声で叫んだッッッ!!!
「てめーらぁーーーーー!!!!! 殺される覚悟はできてるかぁーーーーー!!!!!」
「「「イエーーーーイ!!」」」
「「「ワーワーーー!!」」」
「「「パチパチパチパチーーー!!!」」」
観客たちは意気揚々と返事をしたッ!
「くっそー、あいつら盛り上がってやがる……!」
「気にするな、俺達だってやれるさッ!」
ワタルは悔しそうに唇をかむリックを勇気づけたッ!
「それじゃあ行くぜてめーらぁー!!!」
ボーカルが言うと、後ろでセッティングをしていた残りの2人がタイミングを合わせて演奏を開始ッッッ!!!
そして会場に響き渡る爆音ッ!轟音ッッ!!
獄苦悪苦が奏でるギターとドラムのエキセントリックな重低音ッ!
「クッ……! 悔しいがサウンドのクオリティは本物だ……!」
リックも彼らの演奏のレベルは素直に認めざるを得ないッッ!!
そして会場のボルテージがじわじわと上昇していく中でッ!
獄苦悪苦のボーカルがッッ!!
大きく口を開き、歌い始めるッッッ!!!
「ボエ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」
「な、なんだあの声はッッッ!!!」
ワタルは驚愕した!!!
「あれが獄苦悪苦のボーカルの持ち味、“デスボイス”だ!!」
「デスボイス……もはや人間の声とは思えない……ッ!」
まるで悪魔の雄叫びのようなボーカルのデスボイスッ! それが会場を埋め尽くすッ!
(※デスボイスとは、デスメタルやスクリーモなどのジャンルで用いられる発声法のこと。強い怒りや憎しみを表現するために、意図的にダミ声やうなり声などを出す。しかし、デスボイスは発声に特殊なコツが必要なので、素人が適当にまねをすると喉を傷める危険性がある。気を付けよう)
するとその瞬間ッ!
ギュオオォォォォォン……ッッッッッ!!!!!
観客たちの頭上に、突如紫色の魔法陣が現れたッ! 直径50メートルほどの巨大な円であるッ!
「な、なんだあれはッッッ!!!」
ワタル、再び驚愕ッッッ!!!
「お、俺にも分からん!」
リックもその顔を驚きに歪めたッ!
「あれは……まちがいねぇ、あいつは悪霊を召喚する気だ!」
「「ブライアン!」」
気が付くと、2人の横にはブライアンが立っていた!!!
「あ、悪霊を召喚だとッ!? そんなことが出来るのかッ!?」
ワタルの問いにブライアンが頷くッ!
「ああ……あのボーカルのデスボイスからは、悪霊たちと交信することが出来る特殊な周波数が出ている……」
「つ、つまり……このままだと、あのデスボイスに反応した悪霊たちがこのアリーナに現れてしまうってことかッッッ!」
「そうだ」
「ちくしょうッッッ!!! ライブパフォーマンスで悪霊を召喚するやつがあるかッッッッッ!!!!!」
ワタルは普通にキレたッッッ!!!
「まずいぜワタル! 今すぐ獄苦悪苦の奴らを止めないと!」
しかし時すでに遅し! アリーナの観客席では、次々と異変が起こっていたッッッ!!!
「ギャーーー!!!体が紫になっていくーーー!!!」
「ウゲーーー!!!俺は頭から角が生えてきたーーー!!!」
徐々に阿鼻叫喚の地獄絵図と化していく観客席ッ! このままでは観客たちの身体が悪霊に乗っ取られてしまうッッッ!!!
「もう時間はないッ! ドリャアァァァーーーッッッ!!!」
言うが早いか、ワタルは気合いと共にステージへと身を乗り出したッ! そして獄苦悪苦の3人組目がけて音速スピードの正拳突きを繰り出すッ!
「「「グワーーー!!!」」」
獄苦悪苦の3人は速攻でノックダウンッ! しかし観客席頭上の魔法陣は消えないッ!
「消えない、だと……ッ! ど、どうすれば……ッッッ!」
ワタル、絶体絶命のピンチ! しかし諦めてはいけないッ!
「アリアッ! リックッ! ブライアンッ!」
彼はすかさず残りの3人をステージ上へと呼んだッッ!!
「ワタルさん! 準備は出来ていますよ!」
ステージ裏からやって来たアリアはそう言いながら、てきぱきとした動作でドラムセットの前にスタンバイッ!
「俺も行けるぜ!」
「ああ、俺もだ!」
リックとブライアンは、それぞれギターとベースを構えながら答えたッッッ!!!
「ヨシッ! 歌うぞッッッ!!! 俺達の熱い歌を観客たちに聞かせて、そのパワーで悪霊を払うんだッッ!!!」
「さすがですワタルさんッ! 名案ですねッ!」
アリアはワタルを褒めた!!!
「それじゃあ行くぜッ!」
そしてワタルはマイクを片手に、鬼の形相で歌い始めたッ!
さあッ! 下に歌詞カードを載せるので、読者の皆様も一緒に歌おうッッッッッ!!!!!
「炸裂☆ラップ」
作詞:伊藤ワタル 作曲:リック
(20秒くらい前奏)
Hey, 燃え上がる準備いいか? ここからはずっと全開フィーバー
ここに集ってる俺らがリーダー この音聞いてる奴らはHands up
(ここでブライアンのベースソロ)
俺らの対戦相手は獄苦悪苦 音楽のセンス完全最悪
歴史塗り替えるここから跳躍 ついてこれるなら今すぐHands up
(ここでリックのギターソロ)
俺様の名前は伊藤ワタル トラック受け止め異世界渡る
紆余曲折経て今に至る この歌を聴けば全て分かる
今までの音全て覆す それが俺達さ炸裂☆ボンバーズ
絶体絶命楽しむしかねぇ
熱血パワーの準備はOK?
がむしゃらに進む俺らが頂点
Oh yeah アハーン
(ここでアリアがドラムセットを素手で破壊)
「どうだッッッ!!!」
この日のために用意してきた新曲“炸裂☆ラップ”を満身創痍で歌い切ったワタルッ!!
歌詞通りドラムセットを素手で破壊したアリアも、もうボロボロであるッ!!!!!
果たして、この“ウィンド大陸最強バンド決定戦”はどうなってしまうのだろうかッ!
次回「最強バンド決定戦、決着!そして登場、黒バラ盗賊団ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]デスボイスの歴史……異世界転生出版
[2]デスボイスの正しい発声法……異世界転生出版
[3]デスボイスで悪霊を召喚する方法(実践編)……異世界転生出版