第122話 「奇跡の逆転!今明かされるホストの歴史ッ!」
前回までのあらすじ! ついに始まったホストバトル! 先行のジェイは、元カリスマホストとしての実力をフルに活用し、2分51秒という圧倒的スピードで女の子をナンパすることに成功! 続いて後攻のワタルが意気揚々とバトルに臨むが……?
「誰か~~~ッッッ!!! 俺と一緒にホストクラブに行きませんか~~~ッッッ!!!」
スカイ王国繁華街の中心でナンパ文句を叫ぶワタルッッッ!!!
しかし道を行き交う人々は、無情にも彼をスルー!
(……なんで駄目なんだッッ!?!?)
ワタルは訳も分からず驚愕したッ!
「ククク! あんな雑なやり方でナンパができるわけがない! この勝負、俺様の勝ちだな!」
呆然と立ち尽くすワタルを眺めながら、余裕の笑みを浮かべるジェイ!
「ワタルちゃん……頑張って……!」
シーモアは祈るように両手を合わせながら、サングラスの奥のつぶらな瞳でワタルを見守るのであった!
(クソ……ッ! このままでは、このホストバトルに敗北してしまうッ! この俺が敗北者になるなど……絶対にありえないッ! 何かッ! 何か手はないかッッッ!!!)
ワタルは、これまでの血と汗のにじむ修行の日々を思い出しながら、この苦境を打破する方法を探ったッ!
そしてッッッ!!!
(ある……ッ! 1つだけ、この状況を打開する技がある……ッッ!! だが俺はこの技をまだ完璧に会得していないッ! 果たして本番一発で成功させられるだろうかッ!? いや……やるしかないッッ!!)
「武ッッッ!!!」
するとワタルは突然、腰を低く落としながら全身に力を込め始めたッ!
「行くぞ……秘術・捕主徒拳ッッッ!!!」
今回、「トラック受け止め異世界転生ッッッッッ!!!!!熱血武闘派高校生ワタルッッッッッ!!!!!」の作中で“秘術・捕主徒拳”を登場させるにあたって、我々取材班は実際に滋賀県甲賀市のとある屋敷をお邪魔した。
そしてそこで、甲賀流忍者の末裔である男性・Yさん(74歳、本名は伏せる)に“秘術・捕主徒拳”について詳しくお話を伺った。
――さて、今回はお忙しい中取材の申し出を快く引き受けてくださり、誠にありがとうございます。
「いやいや、構いませんよ。忍術の詳細についてお教えするのも、甲賀流忍者の末裔である私の務めですから」
――それでは早速、“秘術・捕主徒拳”という者についてお話を伺いたいと思います。
「ええ。それじゃあまず、ざっくり忍者について説明しておきます。一口に“忍者”と言っても派閥は様々で、そもそも発祥は日本ではなくインドや中国ではないか、とされる説もあります。彼らが具体的に何をやっていたかと言うと、戦乱の世における要人の暗殺や情報取集。……とまあ、こんなところが主でしょうな」
――なるほど。
「それで秘術・捕主徒拳というのは、大体西暦1600年から1650年の間辺りに甲賀流忍者が編み出したとされる、特殊な忍術のことです」
――それにしても“秘術・捕主徒拳”なんて、あまり忍術らしくないネーミングですよね? 少し奇抜と言うか。
「はっはっは! いやいや、忍術というのは、本来技名を聞かれただけで“忍術である”と悟られてはいけないものなんです! それは手の内を明かしているようなもんですから。だから、どんな内容の技なのか秘匿するために、こうやって少しおかしな雰囲気の技名にしているんですよ」
――なるほど、確かに言われてみれば納得ですね。じゃあ漫画やアニメでよくある“忍法〇〇の術”なんていうのは……。
「無論、大嘘です。フィクションなんだから、まあ見た人に分かりやすく書いとるだけですな。本当の忍者の技というのは、もっと変というか奇妙な名前のものが多いんですよ」
――勉強になります。それで、“秘術・捕主徒拳”というのは具体的に何をする技なんでしょうか?
「うーん、まあ簡単に言うと、異性を惚れさせる“お色気の術”みたいなもんでしょうか。体内のホルモンをコントロールして量を一時的に増やし、それを“気”として全身にまとわせることで異性を魅了させるんです。かつて甲賀流忍者はこの技を使って異性を誘惑し、重要な情報を引き出していたと伝えられています」
――そうだったんですね。
「ちなみに“ホスト”や“ホステス”という言葉の語源も、この技からなんですよ」
――面白いですね。じゃあ夜の街で働くホストやホステスは、現代の忍者・くノ一ってわけですか。
「まあそういう解釈もできますな! はっはっは!」
こうして我々は取材を終えた。今回快く取材に応じてくださった甲賀市のYさんには、この場を借りてお礼を申し上げます。
「行くぞ……秘術・捕主徒拳ッッッ!!!」
気合を入れて叫ぶワタルッ!
すると……見よッ! 彼の全身に突如として青色のオーラが発生したではないかッッ!!
「あ、あれはっ!?」
遠巻きに見守っていたアリアは、ワタルの変貌に思わず驚愕したッ!
そしてワタルは、青いオーラをまとったままゆったりと歩みを進め、1人の女性に声をかけるッ!
「すいません、お嬢さん……」
その声は、いつものうるさくて熱血なあの感じではなく――優しく、穏やかなものであったッ!
「はい、なんでしょうか?」
ワタルに話しかけられた黄色いワンピースの女性は、首をかしげながら振り返るッ!
そして、ワタルの顔を見た瞬間ッッッ!!!
「~~~♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
女性は、ワタルに魅了されたッ! 一瞬にして彼女の両目にハートマークが現れるッ!
「一緒に……そこのホストクラブで、お話でもしませんか?」
優しく詰め寄るワタルッ!
すると黄色ワンピースの女性は何の迷いもなくコクリと頷き、
「はい!♡♡」
と答えたッッッ♡♡♡
そしてワタルは、難なく女性と一緒にホストクラブ“ホワイトローズ”へ入店ッ!
さあ果たして、そのタイムは――!?
「凄いわワタルちゃん! タイムは、2分50秒よ!」
奇跡の逆転ッ! 圧倒的僥倖ッッ!!
ジェイのタイムである2分51秒よりも1秒はやい、2分50秒ッ!
こうしてワタルは、見事ジェイにナンパタイムで勝利したッッッ!!!
次回、「異世界の暴れん坊!ティラノサウルス登場ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]現代忍術指南……異世界転生出版
[2]滋賀県甲賀市観光名所……異世界転生出版
[3]意外と知らないホストの語源……異世界転生出版




