第121話 「炸裂!ワタルのホスト拳ッ!」
前回までのあらすじ! シーモアのホストクラブに突如訪れた謎の人物は、かつてスカイ王国繁華街のナンバーワンホストだった伝説の男・ジェイ(本名:金太郎)であった! そして彼は、シーモアのホストクラブ“ホワイトローズ”を閉店ギリギリまで追い詰めている張本人でもある! それからなんやかんやあってワタルとジェイは、ホワイトローズの命運をかけて“ナンパタイムアタック”で勝負することになった! 果たして、より早く女の子を自分の店に誘い込めるのはどっちだ!?
“ナンパタイムアタック”ッ!
これは、ジェイとワタルが交互にナンパをして、より早く女の子を自分のホストクラブへと誘い込んだ方が勝ちとなるバトルであるッ!
「ククク……この勝負で格の違いを見せつけて、シーモアをホストの世界から完全引退に追い込んでやるぜ!」
ジェイは邪悪な笑みを浮かべながら、自身のホストクラブ“ゴールデンウィーク”の扉の前に立ったッ!
そんな彼の姿を、ワタル・アリア・リベリオン・シーモアの4人は少し離れた場所から見つめるッ!
「それじゃあ、ナンパタイムアタックを始めるわよ!」
シーモアは、右手にストップウォッチを握りしめて叫んだッ!
(異世界にもストップウォッチあるのか……ッッ!!)
当然の疑問を思い浮かべるワタルッ! しかし今はそんなことはどうでもいいのであるッッ!!
「それじゃあ……スタート!」
シーモアがそう言ってストップウォッチを作動させた!
それと同時に、ジェイは素早く行動を開始!
目の前の通路を歩いていた1人の女性に、早速声をかけたッ! 青いワンピースに身を包んだ、一見ホストクラブとは無縁そうな清楚な女性であるッ!
「ねえねえそこのお嬢さん、ちょっといいかな?」
「え? なんでしょうか?」
話しかけられた女性が、足を止めてジェイの方を見たッ!
「クッ……流石ジェイ、行動が早いわね!」
シーモアは感嘆の声を上げる!
するとジェイはおもむろに、金色に光るスーツの右ポケットから“ある物”を取り出したッ!
それはなんと……純白の、鳥の羽根ッッ!!
「お嬢さん……この羽根、あなたの背中から落ちましたよ……」
ジェイ、圧倒的キメ顔ッ!
「あいつは何を言っているんだッ!」
「本当に何を言っているんでしょうね。あんなわけのわからない手口に引っかかる女性なんて、この世にいるわけがありません」
ワタルとアリアは口々に毒づいたッ!
だがアリアの考えとは裏腹に、女性はフフ、と笑い出すッ!
「おかしな人ね、あなた。私が羽根を落とすわけないじゃない」
「え? 本当ですか? てっきり僕は、あなたが天界からやってきた天使なのかと思っちゃいましたよ……」
優しい口調で接するジェイッ! 本名が金太郎であるとは思えないほどの軽妙洒脱さであるッ!
「天使って……あいつ本当にいかれてるのか?」
リベリオンは困り顔で呟いたッ! だが、ジェイの奇策はまだ終わらないッ!
「あっ、いててて……」
彼はおもむろにそう言うと、自らの左目をパッとおさえたッ!
「まあ、大丈夫ですか?」
心配そうに声をかける青ワンピースの女性! するとジェイはおさえていた手を広げ、中に握っていた物を見せたッ!
それは……なんと、“魚の鱗”であったッッッ!!!
「すみません、美しいあなたのことを見つめていたら、感動で目から鱗が落ちちゃったみたいです……」
ピンク色の淡い光を放つ鱗を手に、ドヤ顔で言い放つジェイッッ!!
もうまるで意味が分からないッッ!!
だがそれを聞いた青ワンピースの女性は、愉快そうに大笑いをしたッ!
「アハハハ……あなたって、本当に面白い人なんですね!」
「いえいえ、それほどでも……」
謙遜するジェイッ!
そんな彼を見ていたシーモアは、思わず感心したッ!
「上手いわね……通常、女性が道端でホストに話しかけられたらかなり警戒してしまうものよ。だけどジェイは、ああやって小道具と小芝居を巧みに使いこなすことにより、女の子の警戒心を解きほぐしている……!」
「そ、そう言うものなのか……ッッ???」
ワタルにはまだ理解できない世界であるッ!
そしてジェイは、青ワンピースの女性にとどめの一言を放ったッ!
「あの、もしよろしければ……僕ともっと、お話していただけませんか……? 僕はすぐ後ろのホストクラブで働いている者なんですが、中々お客さんが取れなくていつも暇なんです……だから、せめてあなたともっとお話がしたくって……」
「え、ええ……少しだけなら構いませんよ……」
そしてジェイは見事に、彼女をホストクラブ“ゴールデンウィーク”に誘い込むことに成功ッ! 圧倒的成功ッッ!!
さあ果たして、そのタイムは――!?
「流石ね……タイムは、2分51秒よ……!」
「フハハハハ! そうだろうそうだろう!」
いつの間にかワタル達の後ろに移動していたジェイが、高笑いをした!
「おい、いつの間に移動してきた。というか……さっきナンパした女性はどうしたんだ?」
「心配するな、彼女のことは他のホストに対応させている! もちろん、お代はいただかない! 今日は無料で飲んでいってもらうつもりだ!」
「なんだお前、意外と良いやつだな!」
露骨に驚くリベリオン!
「さて、次はお前の番だぜワタル! せいぜい頑張るんだな!」
「頑張ってくださいワタルさん!」
「ファイトよ、ワタルちゃん!」
「よ~~~し、やってやるぜッッッ!!!」
言うが早いか、ワタルは時速150キロで勢いよく道端に飛び出したッッ!!
「それじゃあ、ナンパタイムアタック……スタート!」
ストップウォッチを作動させるシーモアッッ!!
と、同時にッ! ワタルは、圧倒的声量で叫んだッッ!!
「誰か~~~ッッッ!!! 俺と一緒にホストクラブに行きませんか~~~ッッッ!!!」
しかし、当然ながら道行く人々は全員ワタルをスルーッ!
(……なんで駄目なんだッッ!?!?)
ワタルは訳も分からず驚愕したッ!
まずいッ!
このままではワタルは、ホストバトルでジェイに敗北してしまう! やはり彼が元カリスマホストに勝つなど、無謀だったのであろうかッ!?
次回、「奇跡の逆転!今明かされるホストの歴史ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]これぞ鉄板!絶対成功するナンパ術!……異世界転生出版




