第119話 「変身!ワタル、ホストになるッ!」
前回までのあらすじ! ワタルはホストクラブ“ホワイトローズ”のオーナーであるシーモアに依頼され、お店で警備員をすることになった! だが実際に店に行ってみると、事態は急転! ホワイトローズのホストが全員、先月できたばかりの新しいホストクラブに引き抜かれてしまったのだ! シーモアはワタルにホストになるよう懇願! しかしワタルは未成年! しかも女性と話すのが大の苦手! 果たして彼の運命や如何に……?
一方その頃、アリアとリベリオンは一緒に市場でショッピングをしていた。
様々な出店の屋台を眺めながら歩く2人。
「はぁ……」
するとアリアが、浮かない表情でため息をついた。
「ん? どうしたアリア、何か悩み事か?」
首をかしげながら尋ねるリベリオン。
「いやぁ、最近あまりテンションが上がらなくて……」
「確かに、先日の暗黒武術協会三拳聖との戦いは過酷だったからな。疲れがたまっているんだろう」
アリアは先日の戦いで、三拳聖の1人であるバリーという男に誘拐されている。あの時は、一歩間違えば死んでいたかもしれないほど危機的な状況だった。
そんなこともあったので、アリアは精神的に疲弊してしまっているのだ。
「ここはぱーっと、気晴らしにでも行くべきだな」
「気晴らし、ですか?」
「ああ、そうだ。例えば……ホストクラブにでも行くか?」
それを聞いたアリアが、目を丸くして驚く。
「ほ、ホストクラブ!? まずいですよ、私まだ未成年なんですから!」
「心配ない、ホストクラブにはちゃんとジュースも用意されている。イケメンたちに囲まれて美味しいジュースを飲みまくれば、悩みなんてすぐに消え去るぞ!」
リベリオンは爽やかな笑顔を見せながらそう言った。
「そ、そうですね……初めてで緊張しますけど、良いかも知れませんね。ホストクラブ……」
「早速、夜になったら繁華街に行こう。そこに私の行きつけのホストクラブがあるんだ」
「リベリオンさん、行きつけのホストクラブとかあるんですね……」
彼女の意外な一面に動揺するアリア。しかしリベリオンはゆっくりと首を横に振った。
「勘違いするな、別に男遊びには興味ない。行きつけのホストクラブっていうのも、どちらかと言うと落ち着いた雰囲気のBarみたいな感じなんだ。私はそこのオーナーと仲が良くてな、よくおしゃべりをするために遊びに行っている」
「へー、そういうことだったんですね」
というわけで、その日の夜ッ!
アリアとリベリオンの2人は、繁華街のホストクラブ“ホワイトローズ”へとやってきたッ!
「いやー、ホストクラブに入るのって凄く緊張しますね!」
洒落た外装の店の前に立ち、少し上ずった声で言うアリアッ!
「大丈夫だ、何も心配することはない。ホストクラブに入れば私達は“お姫様”だからな」
「よくそんなこと真顔で言えますね」
「いいから早く入れ」
「はいはい」
アリアはリベリオンに急かされながらドアを開け、店の中に入るッ!
「いらっしゃいませッッッ!!!」
2人が入店すると、白いスーツと紺のネクタイを身に着けた、やたらガタイの良いホストがお辞儀をしてきたッ!
そのホストの既視感に、思わず首をかしげるアリアとリベリオンッッ!!
「今夜はようこそ安らぎの空間“ホワイトローズ”へとお越しくださいましたッ! 俺は今日からこのお店で働くことになった“WATARU”と申しますッ! よろしくお願いしますッ!」
ガタイの良いホスト――“WATARU”は、そう言いながら顔を上げたッ! そして唖然とした表情のアリアと目が合うッ!
「アッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
WATARU、絶叫ッッッ!!!
「……ワタルさんですよね?」
「……いや、違いますッ! “WATARU”ですッッ!!」
否定ッ! 圧倒的否定ッ! ……が、無駄ッッ!!
「いや、お前ワタルだろ。こんなところで何してるんだ」
軽く引きながら尋ねてくるリベリオンッ!
それを聞いたWATARU――いやワタルは、観念したような表情で口を開いたッ!
「実は……かくかくしかじかなんだッッ!!」
「なるほど、そう言う事情があったんですね」
ワタルはアリアとリベリオンをテーブル席のソファーに座らせ、向かい合った状態でここまでのいきさつを説明ッ!
「もちろんホストをするのは何度も断ったんだが、シーモアさんが無理矢理……ッ!」
するとその時、ちょうどシーモアが3人の席へとやってきたッ!
「どう、WATARU君? 接客の方は上手くやれてる?」
するとシーモアは、席に座っていたリベリオンの姿を見てパッと顔をほころばせるッ!
「あ~~~ら、リベリオンちゃんじゃない!」
「よう、シーモアさん! 久しぶりだな!」
リベリオンは気さくに挨拶を返した!
「どう? 今日うちに入った新人のWATARU君、結構いい感じの子でしょ?」
そう言いながらワタルの隣に腰を下ろすシーモア!
「いい感じも何も、こいつは知り合いだ」
「あら、そうだったの?」
「ああ。それに、シーモアさんの店の事情も説明してもらった。随分と大変な状況らしいな」
それを聞いたシーモアが、顔をシュンと曇らせたッ!
「そうなのよ……だからなんとかしなきゃって思ってるんだけど、中々良い解決策が思いつかなくて……もういっそのこと、ホストクラブをやめて田舎に帰ろうかしら……」
「うーむ、助けてあげたいのはやまやまだが、こればっかりはなぁ……」
悩み顔で腕を組むリベリオンッ!
やはり、シーモアの店はこのままやめてしまうしかないのであろうかッ!?
――と、まさにその瞬間ッ!
店の扉が、ガチャリと開いたッ!
「いらっしゃいませッッッ!!!」
「いらっしゃいませ~~~」
ソファーから素早く立ち上がり、入り口に向かって丁寧にお辞儀をするワタルとシーモアッッ!!
するとシーモアは、入店してきた客の顔を見て驚きに目を見開いたッ!
「あ、あなたは……!」
次回、「ワタルvsカリスマホスト!熱血ホストバトルッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]知らなきゃ大恥!ホストの正しい接客マナー……異世界転生出版