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第117話 「反撃開始!ワタル、正義の正拳突きッ!」

 前回までのあらすじ! アリアのとっさの行動によって隙が生まれたバリーに、渾身の一撃をかますワタル! ここから反撃開始かと思いきや、これまでの連戦の疲れで彼の体力・気力はともに限界が来てしまっていた! しかも、ワタルはまだ朝ご飯を食べていない! こんなことでは力が出せなくて当然である! するとアリアはおもむろに、ポケットからむきだしのTボーンステーキを取り出した!











「こんなこともあろうかと、いつもTボーンステーキをむきだしのまま持ち歩いているんです!」


 ドヤ顔で言いながら、Tボーンステーキを差し出すアリアッ!


「流石だな、アリアッ!」


 ワタルはそう返しながら、彼女からステーキを受け取ったッ!


 なろう小説のヒロインたるもの、Tボーンステーキの1つや2つはむきだしのまま持ち歩いていて当然なのであるッ!


「よーし、いただきますッッッ!!!」


 ワタルは大声で叫ぶと、ガブリとTボーンステーキにかぶりついたッッ!! その勢いはまさしく飢えた野獣であるッッ!!


 しかもッ!






 ボリボリッッ!! ボリボリッッ!!






 なんとワタルは、Tボーンステーキを“骨ごと”喰らっているッッッ!!! 圧倒的顎力(あごぢから)ッッッ!!!


「美味いッッ!!!」


 ワタルは、ものの数秒でTボーンステーキをまるごと平らげてしまったッ!











 その時バリーは、体を透明に変えた状態でワタルの7メートル後方に立っていた。


 ばれないように息をひそめ、ワタルとアリアの一挙手一投足に注目する。


(あのアリアとかいう女……いかれているのか? ポケットにむきだしのTボーンステーキを入れたまま持ち歩く奴がどこにいる)


 当然の感想を抱きながら眉をひそめるバリー。


 “常に堅実でリスクの低い選択をする”ということがモットーである彼にとって、目の前にいる2人の行動や発想はあまりにも異端すぎた。


(さて、問題はこれからどうするか、だ……。このまま逃げ去ってしまうというのも1つの手ではあるが、僕の体力はまだ十分に残っている。下手に逃げてワタルに休息の時間を与えてしまうぐらいなら、ここで間髪入れずに攻撃を行った方が確実に仕留められるかもしれないな……)


 腰を低く落とし、いつでも攻撃が行えるように構えるバリー。そして冷静に思考を続ける。


(攻撃を行うとなると、やはり回復魔法が使えるアリアが厄介だ。ここは焦らず、先にアリアを始末した方が良いな。女性に攻撃をするのは気が引けるが、僕が欲しいのは“確実な結果”なんだ。確実な結果を手に入れるためには、自らのプライドや倫理観を全て捨て去る必要がある)


 バリーは、争いを好まない青年である。しかしそれでも暗黒武術協会の三拳聖という地位につくことができたのは、常に冷徹だったからだ。


 勝利のためならどんな卑怯な手でも使ってみせる。絶対に妥協はしない。そんな“冷徹”な部分こそが、バリーの強みなのである。


(……やるか)


 アリアに狙いを定め、全身の筋肉に意識を集中させるバリー。彼の心の中には、あらゆる雑念が消え去っていた。


 そして。











「武ッッッ!!!」


 Tボーンステーキを丸ごと平らげたワタルは、叫びながら後ろを振り返ったッ!


 そして反復横跳びの要領で素早く横にジャンプし、アリアの後ろに立つッ!


「……そこだッッッ!!!」


 ワタルはそう言って、右手を挙げたッ!






 パシンッ!






 小気味のいい音があたりに響き渡るッ!


「ど、どうしたんですかワタルさん!?」


 慌てて尋ねるアリアッ! するとワタルは、ニヤリと笑って答えたッ!


「“掴んだ”ぜ……ッ!」


 虚空に向かって右腕を掲げるワタル! さらにその虚空に向かって、彼は空いている左手でパンチを放ったッ!


「ぐはっ!」


 呻くバリー! そして彼は思わず、透明化を解除したッ!


「流石ですワタルさん! 透明になっている敵の攻撃を止め、さらに攻撃まで当ててしまうなんて!」


 アリアはすかさずワタルを褒めたッッ!!


 説明しよう! 透明化した状態でアリアに迫ったバリーは、彼女に向かって垂直に手刀を放った! しかしそれに感づいたワタルは、素早く移動してバリーの手刀を掴み、続けざまに左手でパンチを打ったのであるッ!


「な、なぜ僕の位置が分かったんだ……!?」


「お前の行動は基本に忠実だッ! この状況であれば、回復要員のアリアを背後から襲うであろうことは、ある程度予測できたッ!」


 ワタル、圧倒的頭脳プレー!


 真面目で堅実なバリーの性格を逆手に取り、一歩先を行った!


 しかも、ワタルの右手はまだバリーの左腕を掴んだままであるッ!


 強烈な一撃を叩き込むなら、今しかないッッッ!!!


「行くぜッッッッッ!!!!!」


 気合を入れるように力強く叫ぶワタルッ!


 そしてッッッ!!!






 ズドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!






 マグナム銃の発砲音めいた重厚な打撃音を響かせながら、バリーのどてっぱらに左手で正拳突きを叩き込むワタルッッッ!!!


 その一撃は、バリーの意識を奪い取るには十分すぎるほどのダメージであったッ!


「これが……朝ごはんを食べた俺の“全力”だッ!」


 やはり、朝ごはんはちゃんと食べないといけないのであるッ!


 こうして、ワタルチームvs三拳聖の戦いは遂に終結したッ!






 ――ここからは後日談なのだが、かろうじて一命をとりとめたバリーとクリフは、その後スカイ王国王宮の地下牢獄に収監されたッ!


 だがしかし、ジョーは完全に行方不明ッ! 邪々丸のアッパーで空の彼方まで吹き飛ばされた後の行方が、分かっていないのだッ!


 常人であれば邪々丸の攻撃をもろに受けて生還するなどまず不可能なのだが、極限まで鍛え上げられたジョーの場合は生きていてもおかしくないッ!


 果たして、彼は一体どうなってしまったのだろうかッ!?


 それは、我々にはまだ知る由もないことなのであるッッ!!


 次回、「阿鼻叫喚の新章突入!ホストクラブに行こうッ!」に続くッッッ!!!

・参考文献

[1]よく分かる異能戦術指南~透明化能力者との正しい戦い方編~……異世界転生出版

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