第116話 「なんちゃって!ワタル、裏切りの正拳突きッ!」
前回までのあらすじ! 三拳聖の1人であり、透明になれる能力者のバリーを追い詰めたワタル! しかしバリーはアリアを人質にとり、ワタルに降参するよう迫ってきた! そしてワタルは迷った末に、両腕を上げ降参を宣言するのであった……!
「降参だ……ッ!」
諦めたような表情で、両手を上げるワタル!
それを見たバリーが、ニヤリと笑った!
「賢い選択だ」
「……それで……これから、どうするんだッ?」
「そうだな……君には今から、僕と一緒に暗黒武術協会の本部へと向かってもらう。そこでカルマ様にお会いするんだ」
「なるほど、いいだろう……ッ!」
両手を上げたまま、静かに頷くワタルッ! そしてさらに、両手両足を縛られたまま地面に座るアリアを見つめながら続けた!
「……その前に、アリアを解放してやってくれッ!」
だがバリーは、一瞬の逡巡の後に首を横に振る!
「……駄目だ。俺は絶対に油断しない。この女がどんな武器を隠し持っているか分からないからな。縄はほどかない。こいつはこのまま、ここに放置していく」
やはり彼は、用心深い男である!
「心配するな、それ以上の危害は加えない」
「そうか、分かった……ッ! それじゃあ、暗黒武術協会の本部とやらへ、連れていってもらおうか……ッ!」
ワタルはそう言って、悔しそうな表情で俯いた! ワタル、ここに来てまさかの敗北ッ! 圧倒的敗北ッッ!!
この衝撃の展開には、読者の皆様も驚きを隠すことができないッッッ!!!
――と、まさにその時!
アリアが!
「どりゃあああ!!!」
猛烈な勢いで、立ち上がったッ!
そしてその勢いを利用し、後ろに立っていたバリーの顎に頭突きをぶち当てるッッ!!
ズガンッッッ!!!
「ふぐっ!?」
バリー、悶絶ッ!
「今です、ワタルさん!」
アリアは頭から血を吹き出しながら叫んだ!
恐らく、今の頭突きの衝撃によって彼女の頭もダメージを受けたのだろう!
だが……彼女は回復魔法が使えるので一切問題は無いッッッ!!!
「よし、でかしたッッ!!」
ワタルはそう言いながら飛び出し、顎を抑えて悶絶するバリーの腹に正拳突きを当てたッ!
「武ッッッッッ!!!!!」
ズドンッッッッッ!!!!!
ワタルの拳とバリーの腹筋が激突ッッッ!!!
無論、勝者はワタルの拳であるッッ!!
「グワーーー!!!」
バリーは勢いよく後ろに吹き飛んだ!
「大丈夫か、アリアッ!?」
ワタルは心配そうな表情でそう言って、アリアの両手足を縛っていた縄をブチブチと引きちぎったッ!
「はい、大丈夫です!」
アリアは自由になった両手を自らの頭の上に乗せ、回復魔法を発動! 流血を見事に止めたッ!
「よし、あとはバリーを倒すだけだなッ!」
だが、その時ワタルは気付くッ!
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………アレッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!? バリーがいないッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
な、なんという事だッ!
たった今ワタルに殴られ吹き飛んでいったバリーが、忽然と姿を消しているッ!
必死に周囲を見渡すワタルとアリアだが、やはり彼の姿は見当たらないッ!
逃げたのだろうか!? ――否ッ!
バリーは透明魔法を使って姿を隠し、この草原のどこかで反撃の機会をうかがっているに違いないッ!
「ワタルさん! もう一度砂を巻き上げてあいつの場所を探し当てましょう!」
「あ、ああ、そうしたいところなんだが……ッ!?」
難色を示すワタルッ!
「どうしたんですか!?」
「も、もう……体力の限界だ……ッ!」
そう! ワタル、体力の限界ッ!
そもそもワタルが最初の刺客であるジョーに襲われたのは早朝ランニングの最中であり、それからここまでぶっ続けで闘ってきたのだッ!
既に彼の体力、気力は限界に到達してしまっているッ!
「も、もしかして……ワタルさん、まだ朝ご飯を食べていないんですか!?」
「そうなんだッ! 早朝ランニングを終わらせてから食べようと思っていたから、今日はまだ何も口にしていないッ!」
な、なんという事だッ!
ワタルは……まだ、朝ごはんを食べていないッ! これは由々しき事態であるッッ!!
(※眠いから。ダイエット中だから。めんどくさいから。そんな理由で朝ごはんを抜いている読者の皆様はいないだろうか。しかし朝ごはんは非常に大切である。脳の活動エネルギーは主にブドウ糖の働きによるものなのだが、このブドウ糖は体内に大量に貯蔵しておくことができず、すぐ不足してしまう。つまり、空腹状態で起きた朝の脳は、エネルギーが欠乏している状態なのだ。故に、朝にしっかりご飯を食べないと脳のエネルギーが不足し、体力や集中力が低下してしまう)
ま、まずいッ! 朝ごはんを摂取していない今のワタルの戦闘力では、バリーを打ち倒すことができないッ!
と、その時ッ! アリアがニヤリと笑って口を開いたッ!
「任せてください、ワタルさん!」
「武ッッ???」
そして彼女はおもむろに、ワンピースのポケットから“あるもの”を取り出す!
その“あるもの”とは――
「ティ、Tボーンステーキッ!」
ワタル、驚愕! なんとアリアがポケットから取り出したのは、こんがりとした焼き目の付いたTボーンステーキであったッ! しかもむき出しなので油でベトベトであるッ!
「こんなこともあろうかと、いつもTボーンステーキをむきだしのまま持ち歩いているんです!」
ドヤ顔で語るアリアッ!
「流石だな、アリアッ!」
ワタルはそう言って、彼女からTボーンステーキを受け取ったッ!
なろう小説のヒロインたるもの、Tボーンステーキの1つや2つはむきだしのまま持ち歩いていて当然なのであるッ!
次回、「反撃開始!ワタル、正義の正拳突きッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]朝ごはんを食べないと?……農林水産省Webサイト
URL:“http://www.maff.go.jp/j/seisan/kakou/mezamasi/about/about.html”