第112話 「追跡!全速力でアリアを追えッ!」
前回までのあらすじ! 三拳聖のジョー、クリフと懸命に闘うワタル! すると彼の元に、アリアとリベリオンが集結した! しかし突如、アリアが透明人間に連れ去られてしまう! まさかの展開に読者の皆様も唖然! というわけでアリアを探して必死に走るワタル! そんなワタルを追うジョー! そして残されたリベリオンとクリフ! ワタルチームvs三拳聖の戦いは、より混迷を極めていくのであった!
一方その頃ッ! アリアの消えていった路地を全速力で走るワタルッ! しかし幅4メートル程の細い路地をどれだけ進んでも、中々アリアにはたどり着けないッ!
「おーいッ! アリアーーッッ!! どこだーーーッッッ!!!」
走りながら大声で叫ぶワタルッ! 彼の声が早朝の路地裏にこだまするが、アリアの返事は聞こえてこないッ!
(くそっ、一体どうすれば……ッ!)
――と、その時ッ! ワタルの背後から声がしたッ!
「そのまま行かせると思うか?」
「ッ!?」
立ち止まって後ろを振り向くワタルッ! するとそこには、彼を追ってきたジョーが迫っていたッ!
「ジョー、貴様アリアをどこへやったッッ!!」
「さあな!」
そう言いながら、バッとワタルに飛び掛かるジョーッ!
そして“毒手”を発動させた右拳を、ワタルの顔面にたたき込もうとするッ!
これは非常にまずいッ! “毒手”の毒を癒してくれるアリアが連れ去られてしまった今、ジョーの毒攻撃に対する回復手段がないッ!
そのため、ジョーの毒手は全力で避ける必要があるッ!
「武ッッッ!!!」
ワタルは目を見開いて、華麗な身のこなしで敵の拳を避けた!!!
さらに返す刀で、ジョーのわき腹に右フックを叩き込むッ!
「ぐっ!」
ワタルの一撃をくらってしまったジョーは、苦悶の表情を浮かべながら後ろにジャンプした!
(さてこの状況、俺は一体どうするべきだ……ッッ???)
ジョーを鋭い眼光で睨み付けながら思案するワタルッ!
(毒を癒してくれるアリアが連れ去られた今、こいつと闘い続けるのはかなり危険だッ! しかも場所はこの狭い路地ッ! こんなところで敵の攻撃を避けるなどあまりにも困難ッ!)
「さあ来いよ、どうした?」
ファイティングポーズを取りながらワタルを挑発するジョー! しかしワタルはその挑発には聞く耳を持たず、冷静に考え続けるッ!
(逃げる……かッ? いやしかし、こいつから逃げ続けながらアリアを捜索するというのも、また困難だッ! どのみちこいつは、倒さなくちゃあならないッッ!!)
覚悟を決めたワタルは、腰を低く落としてファイティングポーズを取ったッッ!!
「行くぜ……ッッッ!!!」
「ああ、来い……」
と、その瞬間!
「――!?」
ジョーの視線が、ワタルから“ワタルの背後”へと移った!
「ッ??」
不審に思ったワタルが、ゆっくりと後ろを振り向くッ!
すると、そこにはッ!
「やあ、久しぶりだね……!!!!!」
身長4メートルの“巨人”がいたッッッ!!!
「あ、あなたは……邪道院 邪々丸さんッッ!!」
そうッ! 彼はウィンド大陸に代々続く最強の暗殺一家の現当主、邪道院 邪々丸であるッッ!!
以前ワタルが邪々丸とあった時、彼は純白のオーダーメイドスーツに身を包んでいたッ! しかし今回は黒のTシャツと青のジーパンというラフな格好ッ!
しかもそのTシャツは、彼の極限まで鍛え上げられた胸筋によって今にもはじけそうなくらいにパツパツであるッ!
「じゃ、邪々丸さん……なぜここに……ッッ?????」
開いた口が塞がらないといった表情で尋ねるワタルッ!
すると邪々丸は、その悪鬼が如き顔面をグニャリと歪ませて微笑み、
「詳しいことは良い、ワタル君……ここは私がやるから、君はすべきことをするんだ……!!!!!」
と言ったッ!
「えッッッ?????」
思わず耳を疑うワタルッ!
「邪々丸さんが、ジョーと闘うんですかッ? しかし、一体何故ッ!?」
ワタルが疑問を抱くのも仕方のないことッ! なぜなら、邪々丸とジョーには何の接点もないはずなのだからッ!
「ワタル君、良いから行くんだ……」
「し、しかし……ッ!」
「行くんだ……!!!!!!!!!!」
邪々丸の鋭い眼光がワタルを捉えたッ! その有無を言わせぬ迫力に、思わずワタルは固唾を飲み込むッ!
「わ、理解りましたッ! それじゃあ、この場はお願いしますッ!」
そう言ってワタルは、邪々丸の脇を抜けて路地の先へと進んでいったッ!
「さて、と……」
ワタルが先に行くのを見届けた邪々丸は、目の前のジョーを睨み付けるッ!
「やりますか……!!!」
そう呟く彼の存在感は、もはや筆舌に尽くしがたいものがあったッ!
彼が少し両腕を開くだけで、幅4メートルしかないこの路地は完全にふさがれてしまうッ! 圧倒的ッ! 圧倒的威圧ッッ!!
するとジョーは、眉間にしわを寄せながら口を開いた!
「あんたのことは知っているぞ……ウィンド大陸全土にその名をとどろかす最強の暗殺一家、邪道院家の当主……邪道院 邪々丸……!」
説明しよう! 裏の世界で邪道院家のことを知らない者はいないのだッ!
「私も、君のことは知っているよ……君は、暗黒武術協会の三拳聖の1人、ジョー君だね。たしか通り名は“毒手のジョー”、だったかな?」
「そうだ。それで……どうしてここへ?」
「邪道院家には独自の情報伝達ルートがある。ワタル君に危機が迫っていれば、すぐにわかるようになっているんだ」
「ほう、ワタルに監視を付けていたのか」
コクリと頷く邪々丸ッ!
「ああ。そして先程、三拳聖の“3人”がワタル君に対して攻撃を開始したと聞いてね。いてもたってもいられず、すぐに屋敷を飛び出したのさ……」
「それで、魔法でここまで転移して来たというわけだな」
すると邪々丸は、首をブンブンと横に振ったッ!
「ハハ、まさか。疾走ったんだよ」
「~~~!!!」
ジョー、目を見開いて絶句ッ!
ちなみに、邪道院家の屋敷からこのスカイ王国までは、馬を使っても2日はかかる距離である! そんな距離をものの数分で走り抜けるとは、やはりこの漢ただものではないッ!
「……では、質問を変えよう。なぜワタルに監視を付けているんだ?」
ジョーが深刻な表情で首をかしげると、邪々丸は腰に手を当てながら話し始めたッ!
「そうだね……まあ、隠していても仕方がない。単刀直入に言おうじゃないか。実はワタル君には、まだ死んでもらうわけにはいかないんだ。なぜなら……」
「ワタル君を、邪道院家に婿入りさせたいと思っていてね……!!!!!」
次回、「瞬殺!邪々丸vsジョーッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]暗殺一家あるある百選……異世界転生出版




