第111話 「さらなる乱入者!混戦、極まるッ!」
前回までのあらすじ! 片腕しか使えないという絶体絶命の状況で、懸命にクリフと闘うワタル! しかしジョーの背後からの攻撃に対応できず、一世一代の大ピンチ! だがそこに駆け付けたリベリオンのおかげで、最悪の事態は免れた! さらにスケボーに乗って颯爽と登場したアリアの回復魔法によって、ワタルの左腕は完全に治癒! これで反撃の準備は整った!
「アリア、か……まさか俺の“毒手”の毒まで回復してしまうとは、大した能力者だ。厄介だな……」
一部始終を眺めていたジョーが、アリアのことを睨み付けながらそう言った!
「ワタルさん! あの魔族の男が敵なんですね!」
「そうだッ!」
「なるほど……」
それを聞いたアリアはおもむろに、自分が乗ってきたスケボーを拾い上げ、ジョーに向かって投げつけたッッ!!
「どりゃあ!」
勢いよく宙を舞うスケボー! しかしジョーは顔色一つ変えずに、紫のオーラに包まれた右手でスケボーをパシリと掴んだ!
するとその木製のスケボーが見る見るうちに枯れていき、凄まじい速度でボロボロに崩れ去ったッ! ジョーの右手から、スケボーだったものの木片が塵となって落ちていくッ!
「これは……かなり強力な“毒”ですね……」
アリアは、眉間にしわを寄せながら呟いた!
対するジョーは、傍らで大剣片手に荒い息を吐くクリフに向かって声をかける!
「おい、クリフ……大丈夫なのか?」
「ああ、まあな……しかし、このままだとジリ貧だ。認めたくはないが、ワタルは強い。だからまずは、そこのアリアとかいう“回復要員”から排除するべきではないか?」
「ああ、そうだな……」
コクリと頷くジョー! それを聞いたワタルは、仁王の形相でアリアの前に仁王立ちしたッ!
「アリアはやらせないぞッッッ!!!」
ヒロインを守るのは主人公の務めであるッ!
「流石ですワタルさん!」
主人公を褒めるのはヒロインの務めであるッッ!!
――と、その時ッ!
「!?」
アリアの体が、何の前触れもなく突然フワリと宙に浮いたッ!
「な、なんだッッッ!?!?」
「どうしたんだアリア!?」
口々に驚きの声を上げるワタルとリベリオン!!
「わ、分かりません! 誰かに持ち上げられているような感じなんですけど……」
アリアはそう言いながら周りを見渡すが、当然彼女の周囲には誰もいないッ!
「魔法かッッ!?」
「ど、どうなんでしょう!? ……キャッ! 今変なところを触られたような気がっ!」
「な、何ィ~~~ッッッ!?!?」
するとアリアは、宙に浮いたまま遠くの路地の方へ“飛んで”いったッ!
「そ、そんな馬鹿なッ!」
「落ち着くんだワタル! 恐らくあれは……“透明の状態になった人間”が、アリアを持ち上げて運んでいるんだ!」
「そんなことは可能なのかッ!?」
ワタルが聞くと、リベリオンは思案顔で俯いたッ!
「……わ、分からん! だが、それしか可能性は……!」
「――おいおい、よそ見をしていていいのか?」
「!?」
リベリオン、唖然ッ! 目にも止まらぬ速さで、彼女の前にクリフが接近していたッ!
そして両手で握りしめた大剣(ダークネス・ドラゴン・ブレイド、略してD・D・B)を、彼女に向かって振り下ろすッ!
「クソ!」
リベリオンは素早く剣を構え、クリフの斬撃を受け止めたッ!
ガキィィィンッッッ!!!
激しくぶつかる両者の剣! しかし剣と言っても、リベリオンの得物が全長1メートルの片手剣なのに対して、クリフのそれは倍の長さを誇る2メートルの大剣ッ!
圧倒的リーチ格差社会ッッ!!
リベリオンは、クリフの重い斬撃を受け止めるだけで精いっぱいだッ!
「ワタル! お前はアリアを追え! ここは私が何とかする!」
「だ、だが……ッ!」
「考えている暇はないぞ! ワタル!」
クリフの斬撃を受け止めながら、懸命に叫ぶリベリオンッ!
「……分かったッ!」
彼女の強い思いを感じ取ったワタルは、アリアが飛んでいった……いや“運ばれていった”路地に向かって走り出したッ!
「行かせるか!」
ワタルの後を追って、ジョーも走り出す!
そして2人は、路地の奥へと消えていったッ!
「……これで、1対1だな……!」
「ああ、そうだな……!」
その場に残されたのは、依然つばぜり合いの状態で接戦を演じるクリフとリベリオンッッ!!
しかし接戦とは言え、リベリオンが苦悶の表情を浮かべているに対し、クリフは余裕綽々といった様子であるッ!
「ワタルを確実に仕留めるために、まずはお前から倒させてもらうぜ!」
彼は叫びながら両腕に力を込めた!
「ふんっ……やれるもんなら……やってみろ!」
リベリオンはそう言い返すと、相手の腹に勢いよく蹴りを入れるッ!
ズドンッ!
「ぐぁっ!?」
彼女のキックは、クリフのみぞおちにクリティカルヒットしたッ!
思わず大剣に込める力が弱まるッ!
「今だ!」
この一瞬の隙を見逃さず、リベリオンは敵の大剣を華麗な剣さばきで弾いた!
ガキィィィン!!!
金属同士がこすれ合う小気味の良い音が、周囲に響き渡る!
「くそ、やるな!」
クリフは眉間にしわを寄せながら、とっさに後ろへ引き下がったッ!
そしてリベリオンに対して十分な距離を確保すると、大剣を構えながら口を開くッ!
「それでは……今一度名乗ろう! 俺の名はクリフ! 暗黒武術協会の三拳聖であり、ワタルを狩るために今日ここへ来た! その使命の邪魔をするなら……貴様も容赦しない!」
それを聞いたリベリオンも、剣を構えて高らかに声を上げたッッ!!
「私の名はリベリオン! かつてはワタルの敵だったが、今では“友”だ! だから……お前の使命、決して果たさせはしない!」
ここでいったん言葉を区切り、深呼吸をしてから堂々と口を開くッッッ!!!
「ワタルは私が守護る!!!」
次回、「追跡!全速力でアリアを追えッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]よく分かる“透明化能力”の原理……異世界転生出版




