第11話 「ワタル、爆裂!思いを込めたレビューをかませッ!」
前回までのあらすじ!
熱血武闘派高校生のワタルは、魔王挑戦チケットを入手するためにゴブリンのブッカーと戦うことになった!
その戦いのルールはなんと“小説レビュー対決”!
ウィンド大陸で現在大流行中の小説“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”の1章を読み、より優れたレビューを書いた方が勝利となる!
しかし小説の独特な展開について行くことが出来ないワタルは、ピンチに陥っていた!
そして数分後ッ!第1章を音読し終わったアリアがふとワタルの方に目を向けるとッ!
なんとッ!
そこにはッッ!!
――ミイラとなって地面に横たわるワタルの姿があった……ッッッ!!!
「ワタルさん!大丈夫ですか!?」
「だ、駄目だ……主人公が路地裏でチンピラに絡まれた女の子を助ける、その子が主人公に惚れる、なんやかんやあってついてくるという展開を1章の中で3回も行っている……ッッッ!!!作者の記憶力はどうなっているんだ……ッッッ!!!」
ワタル、息も絶え絶えッ!もはや限界ッ!
「倒れてはいけませんワタルさん!ここで諦めたら魔王の元までたどり着けませんよ!」
アリアが必死に彼を鼓舞するッッ!!
「そ、そうだ……ここで諦めてどうする……ッ!見つけるんだッ!この作品のいいところを……ッ!」
そう言って彼はよろよろと羊皮紙と羽ペンを手に取ったッ!
「そうです!その調子ですワタルさん!」
「うおおおおぉぉぉぉッッッ!!!」
憤怒の形相でレビューを書き始めるワタルッ!
「そこまで!」
ワタルがレビューを書き終えるのと同時に、リベリオンの声が響いたッ!
どうやら制限時間の1時間に到達したようだッッ!!
「はぁ、はぁ、なんとか書き終えたぞ……ッ!」
ワタル、満身創痍ッ!そんな彼を余裕の表情で見つめるブッカー!!!
「ククク……この勝負、俺が貰った!では、まずは俺のレビューから発表させていただこう」
「よし、いいだろう」
リベリオンの許可を受けたブッカーが、その手に持った羊皮紙のレビューをスラスラと音読し始めるッ!
「今回は、現在ウィンド大陸で大流行中の小説“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”、略して“俺ピン”の1章をレビューしたいと思います!(^^♪
この作品の魅力は、なんといっても主人公である達也くんの男気!|д゜)
いつもはちょっと頼りない内気なオークだけど、ヒロインがピンチに陥ったらたちまち大変身!(^_-)-☆
その圧倒的な能力を使って、敵を倒してしまうのです!(^^)/
また、作中に登場するヒロインの子たちも皆可愛いです!この小説を読めば、きっと皆さんも一人はお気に入りの子が見つかると思います!(^◇^)
ちなみに私は、スライムの花子ちゃんがお気に入り!!( *´艸`)
そんなわけで、この爽快な冒険活劇“俺ピン”を、ぜひ皆さんもご一読あれ!(#^.^#)」
「なんだこのおぞましいレビューはッッッッッ!!!!!」
ワタル、激怒!!!
「まあ待てワタル。確かにこいつのレビューの文体は恐ろしく気持ち悪いが、内容自体は至極まともだ。当たり障りなく、物語のいいところを挙げている」
「くッ!こんなレビューに負けてたまるか!次は俺だ!」
ワタルは意気込みながら、自分が書いたレビューを音読開始ッ!果たしてその出来栄えはッッ!!
「本をパラパラとめくっていると、紙独特のいい匂いがして、ほっこりとした。
また、表紙の絵がとても綺麗だと思った。
物語の内容は薄いが、この本自体は結構厚みがあって重いので、ダンベル代わりにも使える優れものである」
「勝者、ブッカー!」
無情にも勝敗を告げるリベリオンッ!ワタル、不服!!!
「何故だッッッッッ!!!!!」
「ワタルさん!流石に今回ばかりは無理です!あのレビューでは勝ち目がないです!」
なんという事だ!アリアですらもワタルを擁護できずッッ!!
そして勝ち誇るブッカー!!
「グハハハハ!残念だったなワタル!俺の勝ちだ!」
「うるせぇッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
ワタルはすかさず手に持っていた羊皮紙を折り、紙ヒコーキを作成ッ!それをブッカー目がけて投擲ッ!
時速400キロの紙ヒコーキが鋭くブッカーのこめかみに刺さるッッッッッ!!!!!
「グエ!」
ブッカー、無様な声をあげて気絶ッ!地面に倒れ込んだッ!
「よし!この隙に魔王挑戦チケットを奪うぞッ!」
「そ、そんな!いくらなんでもこれは卑怯ですよワタルさん!」
熱血武闘派にあるまじき行為をとがめるアリアッ!
「分かっているッ!だがッ!魔王に捕らえられたアリアのご両親を助けるためには、もう行為を選んでなんかいられないッ!」
「ワタルさん……!」
アリア、感涙ッ!熱血を捨ててでも人の命を助けたいという彼の行動に、感動せずにはいられなかったッ!
「分かりました!行きましょう!」
その瞬間!!
辺りに不気味な声が轟いたッ!
「ククク……今回の挑戦者は、中々面白そうな奴だな……」
「誰だッッッ!!!」
ワタルは辺りを見回したッ!
「こ、この声は……魔王デウス様!」
リベリオンの驚愕に染まった声ッ!
「なに……魔王だとッ!」
すると突然、ワタルの眼前に紫の霧が発生ッ!そしてその中から一人の人物が優雅に登場ッ!
ワタルはとっさに身構えたッ!
「貴様が魔王か……ッッ!!」
「そう……私が魔王、デウスだ……先程からお前の戦いぶりを見ていたが、あまりに興味をそそられてしまったものでな……ついつい、我慢できずに出てきてしまったよ」
歳は30程だろうか、思っていたよりも若い風貌だッ!彫りの深い整った顔に薄い紫の肌ッ!そして白いロングヘアーッ!イケメンだッ!
「クッ……気取った格好をしおってッ!」
一際目を引くのは純白のロングコートッ!魔王がクールに白いコートを着こなす様は、ホットに黒い学ランを着こなすワタルとは対極的であるッ!
「やい魔王ッ!俺と戦えッッッ!!!俺が勝ったら捕らえている人間たちを解放するんだッッッ!!!」
「フッ、いいだろう……かかってこい」
どこまでも余裕綽々な顔で応対する魔王デウスッ!
かくしてッ!ついにッッ!!
ワタルvs魔王の戦いの幕が開けたッッッ!!!
この戦いを見逃すなッッッッッ!!!!!
次回「やべえ!魔王めっちゃやべえッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1] 人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件……異世界転生出版
[2]正しい小説レビューの書き方……異世界転生出版




