第106話 「最新ゲーム!RPGをしようッ!」
前回までのあらすじ! 暗黒武術協会のトップスリー、その名も“三拳聖”が、ワタルを排除するために行動を開始した! 一方その頃ワタルは、アリアと一緒に最新ゲームを買いに来ていた!
そんなわけでッ!
本日発売のゲームソフト“フェニックスワールド”を購入したワタルは、早速アリアと一緒に自室へと戻ったッ!
そしてパッケージからディスクを取り出し、テーブルの上に置かれた15センチ四方の正方形の物体にそれを挿入するッ!
この漆黒のボディカラーが最高にCOOLな正方形の物体の名は、“プレイキューブ”ッ! スカイ王国で現在話題沸騰中の、最新家庭用ゲーム機であるッ! これをテレビにつなげることで、挿入したソフトをプレイできるのだッ!
“異世界に家庭用ゲーム機だのテレビだのがあるわけない”と感じてしまう読者も多いかと思われるが、冷静に考えて見て欲しいッ! それはとどのつまり“偏見”ッッ!! 圧倒的“偏見”ッッッ!!!
異世界にだって家庭用ゲーム機とテレビぐらいあるッッ!!
「早速やりましょうよ、ワタルさん!」
「うむ、そうだなッ!」
ワタルとアリアは、テレビの前に胡坐をかいて座った! そしてプレイキューブ専用のコントローラーを握りしめ、電源を入れるワタルッ!
するとテレビの画面にプレイキューブのロゴが表示されたッ!(とはいえワタルは読めないが)
「ワクワクしますね!」
「そそられるなッッ!!」
数秒後、画面が暗転し華々しいBGMに合わせて“フェニックスワールド”のロゴが出現ッ!(これもワタルは読めていない)
というわけで早速ボタンを押してみると、なにやら文字がたくさん書かれたメッセージウィンドウが表示されたッ!
「……なんて書いてあるんだッッ???」
「主人公の名前を入力してください、と書いてあります! っていうかワタルさん文字読めないんですから、代わりに私がプレイしますよ! ワタルさんは横から指示を出してください、それに従います!」
「おお、そういう遊び方も楽しそうだなッ!」
ワタルは満面の笑みでそう言って、アリアにコントローラーを渡したッ!
「それじゃ、主人公の名前は“ワタル”にしてくれッ!」
「わかりました」
アリアはそれに従ってコントローラーを操作し、主人公の名前を入力ッ!
すると次のメッセージウィンドウが表示されたッ!
「主人公の性格を入力してください、ですって!」
「じゃあ“ねっけつ”でいいだろッ!」
「そうですね!」
入力すると、引き続いて次のウィンドウがッ!
「次はどんな質問だッッ???」
「イヌ派ですか、ネコ派ですか、ですって!」
「その質問いるッッ???」
ワタルは唖然としたッ!
「ワタルさん、このゲームはキャラメイクが凄く凝っていることで有名なんです! 一見ゲーム本編に関係ないような項目でもちゃんと設定することで、プレイする時の感情移入がより深くなるんですよ!」
力説するアリアッ!
「そ、そういうものか……ッ! じゃあ……イヌ派でッッ!!」
そして次のウィンドウッ!
「“コーヒーに砂糖とミルクはどれぐらい入れますか?”」
「コーヒーは飲めないッ!」
「“牛乳を飲むとすぐお腹が痛くなっちゃう?”」
「ならないッ!」
「“議題のことをアジェンダ、合意のことをコンセンサスとか言ってる人を見るとちょっとイラッとしちゃう?”」
「いやたしかにそういう奴たまにいるけどッッ!! ちょっとイラッとするけどもッッ!!」
というか何故異世界でアジェンダやコンセンサスといった英単語が出てくるのだッッッ???
「はい、これでキャラメイクは終了です!」
「え、まだ主人公の顔とか設定してないぞッ?」
説明しようッ! 最近のキャラメイクがあるゲームは、主人公の顔や声まで細かく調整できたりするものが多いッ!
「いや、主人公の見た目は緑肌のオークで固定です」
今明かされる衝撃の真実ッッ!!
「じゃあ今までの質問は一体何だったんだよッ!」
ワタルは困惑したッ!
しかし彼の混乱などお構いなしにゲームは進むッ!
神殿のような建物の入り口に、緑肌のオークがたたずんでいるッ! 流石最新のゲームだけあって、3Dのグラフィックは本物と見間違えるほどに美麗だッ!
するとそのオークが、神殿を眺めながら口を開いたッ!
『俺の名前はワタル。ねっけつだ。イヌが大好きで、コーヒーは飲めない。あと牛乳とか飲んでもお腹が痛くなったりはしない。そしてここだけの話なんだが、議題のことをアジェンダ、合意のことをコンセンサスとか言ってる人を見るとちょっとイラッとする』
「めちゃくちゃ説明口調だなこいつッッッ!!!」
このゲームは主人公がフルボイスでしゃべるので、文字が読めないワタルでも彼が何を言っているのかはちゃんと分かるッ!
『実は俺の母ちゃんは今、不治の病に身体を侵されている。だから、“どんな病でもたちまち治すことができる”と言われている伝説のアイテム、“フェニックスの羽根”を探して旅しているんだ』
「誰に向かって話してんだよッ!」
「まあまあワタルさん、ゲームにそういうことを言うのは野暮ってものです」
コントローラー片手に言うアリアッ!
すると今度は、神殿がドアップで画面に写されたッ!
『聞いた話によると、この神殿の中に伝説のアイテム“フェニックスの羽根”が保管されているらしい。だが……この神殿の扉は、固く閉ざされている』
と、その時ッ! 神殿の扉が怪しく紫色に光り、くぐもった男性の声が周囲に響き渡ったッ!
『グオォ……フェニックスの羽根を追い求めるものよ……この扉を開けたければ、試練を乗り越えるがいい……!』
『な、なに……!? 試練だと……!?』
「おお、早速戦闘が始まりそうな感じだなッッ!!」
ゲーム画面にくぎ付けの状態で、ワクワクしながら言うワタルッ!
『では、今からお前に試練を出すぞ……!』
『ふん、どんな試練だって俺は乗り越えて見せるぜ!』
そしてゲーム内の主人公が、意気揚々と懐から剣を抜いた!!
『では、最初の試練だ……“「お前、絶対勇者向いていないだろ」さて、どんなやつ?”』
「は????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????」
ワタル、混乱ッ! 圧倒的混乱ッッ!!
「大丈夫ですかワタルさん!?」
アリアは心配そうに声をかけたッ!
「え、なんだこれ……ッ? クイズか……ッッ???」
「違いますよワタルさん! これは“大喜利”です! このゲームの戦闘は、全て大喜利形式になっています! 面白い回答ができれば、クリアなんです!」
「なんでだよッッッ!!!」
思わず憤慨するワタルッッッ!!!
次回、「最新RPG!ワタルの熱血大喜利バトルッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]コマンドバトルはもう古い!?スカイ王国最新RPG情報……異世界転生出版