第102話 「ワタル酷評!ゴードン怒りの鉄拳ッ!」
前回までのあらすじ! ワタルの元に、暗黒武術協会から挑戦状の矢文が届けられた! というわけで、ワタル・アリア・リベリオンの3人はばっちり1時間以上遅れて約束の場所に足を運ぶ! するとそこにいたのは、筋骨隆々のオーク! ゴードンと名乗るそのオークがワタルと決闘するのには、2つの理由があった! 1つ目の理由は、暗黒武術協会の優秀なメンバーであった“魔王デウス”の敵討ちをするため! そして、2つ目の理由は――!!
「それで、2つ目の理由はなんなんです?」
アリアが尋ねると、ゴードンは懐をガサゴソとまさぐり、一冊の本を取り出した……ッ!
「……この本を、知っているか?」
その本の表紙を見て、思わず驚愕するワタルッ!
「そ、それは……ッ!」
そう、それは――“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”、略して“俺ピン”であったッッ!!
「な、なぜその本を持っているんだ?」
深刻な面持ちで首をかしげるリベリオンッ! なんだか嫌な予感がしてきたッ!
「この小説の作者、山田ジェイコブは……俺の、弟だ!!」
「~~~~ッッッ!!!」
今明かされる衝撃の真実ッ! ワタルは面食らったッ!
「ワタル! お前はかつて、俺のかわいい弟が一生懸命執筆した小説を酷評したらしいなぁ!」
第11話参照ッ!
「俺は、お前に復讐する機会をずっと待っていた! だから協会の会長に自ら志願して、ここへ派遣されてきたのだ! これがお前と決闘をする2つ目の理由だ!!」
怒りと興奮をあらわにしながら叫ぶゴードン!
「お、おいワタル……ひとまず小説の件については、謝っておいた方が良いんじゃないか……?」
リベリオンは彼に謝罪を提案した!
――が、しかしッッッ!!!
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いやでも実際、あれはつまらなかっただろ……ッ!」
ここだけはッ! どうしてもここだけは譲れないワタルッ!
「こ、この野郎! 馬鹿にしやがってーー!!」
ゴードンは右拳をわなわなと震わせ怒ったッ!
するとその拳が、黒いオーラに包まれるッ!
「武ッッ!? これは……ッ!」
間違いないッ! この技は、かつて魔王デウスが使っていた技、“硬手”ッ! 魔法のエネルギーを手に集中させることで、拳の強度を極限まで高めるというものであるッ!
「その技……てっきり、魔王しか使えない技だと思っていたが……ッ!」
「否! これは暗黒武術協会が編み出した技だ!」
そしてゴードンは地面を蹴り、勢いよくワタルに迫ったッ!
「アリアッ! リベリオンッ! 下がっていろッ!」
ワタルは叫ぶと、腰を低く落とし構えるッ!
「うおぉぉぉお!!!」
気合と共にワタルの顔面目がけてパンチを繰り出すゴードン!
だが対するワタルは一切臆することなく、首を少しだけ横にかしげることで間一髪回避ッ!
「!?」
ゴードンは、彼の鮮やかなスピードと度胸に目を疑ったッッ!!
そしてワタルはその肉薄した状態で、敵のわき腹に強烈な突きをお見舞いするッ!
「~~っ!」
その一撃に悶絶し、たまらず後ろにさがるゴードンッ!
ワタルはその隙を見逃すことなく、敵の顔面目がけて凄まじい蹴りを放ったッッ!!
バシュンッッッ!!!
空を切るワタルの右脚ッ! そのキックは、ゴードンの顔面にクリーンヒットッッッ!!!
「……っ!」
そしてゴードンはあえなく膝から崩れ落ち、地面にドスンとうつぶせで倒れたッ!
「……まだ、やるかいッッ???」
仁王の形相で問いかけるワタルッ!
「……」
しかし、ゴードンは沈黙ッ! うつぶせで地面に突っ伏したまま、何も答えないッ!
「……気絶したのか?」
後方から問いかけてくるリベリオンッ!
「ああ、恐らくなッ!」
ワタルはそう言ってゴードンに背を向けたッ! ――と、その瞬間ッ!
地面に寝ていたゴードンは、腕の力だけでピョンと素早く起き上がったッ!
圧倒的腕力ッ! うつぶせの体勢から腕の力だけで立ち上がるなど、常人には不可能だッッ!!
「ワタルさん、危ない!!」
思わず叫ぶアリアッ!
そしてゴードンは、背を向けたワタルに向けて正拳突きを繰り出したッ!
ワタル、危うしッ!
――が、しかしッ!
ワタルは目にも止まらぬ動きでゴードンの一撃を躱し、そのまま敵の背後に瞬間移動したッ! この間、わずか0.0001秒ッッッ!!!
ここで、この一瞬の攻防をもう一度スロー再生で見てみようッ!
背後から迫るゴードンの拳ッ! しかしワタルは腰を低く下に落とすことで、その一撃を見事に避けているッ! そのまま反復横跳びの要領でピョン、ピョンと巧みに位置を変え、気付けばゴードンの背後を取っていたッ!
「――なっ!」
あまりの衝撃に目を見張るゴードンッ! そしてワタルは容赦なく、彼の背中に正拳突きをかましたッ!
「ぐわあぁ!」
ゴードンの背部を襲う強烈な激痛ッ! 彼はそのまま、時速210キロのスピードで地面に前のめりに突っ込んだッ!
ズザァァァーーッッ!!
(つ、強い……! 想定以上だ、この男のパワーはっ!)
薄れゆく意識をギリギリのところで繋ぎ止めながら、必死に思考するゴードンッ!
ワタルは仁王の形相で、再び問いかけたッ!
「……まだ、やるかいッッッッッ?????」
次回、「奮戦!ワタルvsゴードンッ!」
・参考文献
[1] 人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件……異世界転生出版