第101話 「邪悪!暗黒武術協会からの挑戦状ッ!」
前回までのあらすじ! この作品が連載開始1周年を迎えた! 読者の皆様、本当にありがとう! ここからは心機一転してストーリーを進めていくぞ!
ある日の早朝のことッ!
ワタルがいつものように街を時速100キロでランニングしていると、突然前方から矢が飛んできたッッ!!
「武ッッッ!!!」
彼は全力で急ブレーキをかけて立ち止まり、風を切って飛ぶ矢をガシリとキャッチッ!
「ふう、危なかったな……ッ!」
ワタルはそう言って油断なく辺りを見回したッ! しかし、周囲にこの矢を放ったと思われる人物は見当たらないッ!
「何なんだ一体……んッ!? 矢に手紙が結び付けられているなッ!」
すなわち、これは圧倒的矢文ッ!
早速彼は手紙を開け、中身を読んだッッ!!
「読めないッッッッッ!!!!!」
そうッ! ワタルは未だにこの世界の字が読めないッ! ではなぜ会話ができるのかという謎があるが以下省略ッッッ!!!
「うーむ、とりあえず持って帰るかッッ!!」
というわけでワタルは、手紙を握りしめたまま時速120キロで自宅に帰ったッ!
数時間後ッ! 時刻は午前11時ッッ!!
部屋にアリアを呼び、今朝飛んできた手紙を音読してもらったッッッ!!!
ちなみに、前回のエピソードでアリアはイメチェンをしたが、数日で飽きてしまったので今は普段の白ワンピース姿に戻っているッ!
「それじゃ、読みますね」
「うむッ!」
「勇者ワタルへ
我々は暗黒武術協会である
貴様がどれほどの実力者なのか、我々の目で直接確かめたい
よって本日午前10時に、スラム街裏の空き地にて待つ
我々の精鋭と決闘して欲しい」
「なるほど……挑戦状かッッ!!」
「そのようですね」
コクリと頷くアリアッッ!!
しかしッ! 1つ問題があるッッ!!
「……今何時だッッ???」
「午前11時ですね」
なんと、すでに1時間の遅刻ッ!
「ちくしょう、やっちまったッッ!!」
「まあいいんじゃないですか? あっちが一方的に挑戦状を出してきただけなんですから。こっちが律儀に応じる必要はありませんよ」
「確かにッ!」
ワタルは納得したッ!
「それに“遅刻”も立派な戦術だからなッッ!!」
かつて、伝説の武人・宮本武蔵は巌流島での佐々木小次郎との対決において“わざと遅刻する”ことで相手を焦らし、結果勝利したというエピソードがあるッ! 故に“遅刻”が有効な戦術であることは火を見るより明らかッッ!! 圧倒的明らかッッッ!!!
(※ちなみに、宮本武蔵が決闘にわざと遅刻したというのはあくまでも創作の話で、実際は遅刻することなく闘ったという話が現在の定説である。読者の皆様は、なるべく遅刻はしないようにしよう)
「それにしても……この、“暗黒武術協会”とはなんだ?」
「いや、私もこんな怪しい団体は知りませんねぇ……」
ワタルとアリアは首をかしげるッ!
と、その瞬間ッ! 部屋のドアがガチャリと開き、そこからとげとげしい鎧に身を包んだリベリオンが颯爽と登場したッ!
「その団体については、私が説明しよう!」
「知っているのかリベリオンッ!?」
「ああ!」
そう言って胸を張るリベリオン! ちなみに彼女も前回のエピソードでイメチェンをしたが、「なんかスースーする」という理由で結局すぐにいつもの鎧姿に戻ったのだッ!
「暗黒武術協会というのは、武術の“暗黒面”に心を蝕まれた武闘家たちが集まるヤバイ団体だ! 噂では、あの魔王デウスもこの協会に身を置いて修行していた時期があったらしい!」
「なんと、そうなのかッ!」
「とりあえず、その約束の場所に行きましょうか?」
「うむ、そうだなッッ!!」
そして数分後! 時刻は午前11時30分ッ!
ワタルとアリアとリベリオンの3人は、約束の場所であるスラム街裏の空き地へと足を運んだッ!
ここは滅多に人が来ない静かな場所なので、決闘をするにはもってこいの環境であるッ!
すると、その空き地の中央に1人の人影があったッ!
「武……ッ!」
眉間にしわを寄せ、目を凝らすワタルッ!
なんとそこにいたのは、緑色の肌を持つオークであったッ!
身長は約190センチとデカく、筋骨隆々の肉体ッ! しかも上半身は裸というワイルドな出で立ちだッ!
豚のように厳つい顔面はまさにオークといった感じで、あごには派手な切り傷があったッ!
一瞬でこの相手がただものではないと見抜くワタルッ!
するとオークはワタル達に気付き、腕を組みながら口を開いたッッ!!
「遅刻じゃないか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
スラム街に響き渡るオークの叫びッ!
「もう11時30分だぞ! 1時間以上の遅刻だぞ! 何考えてるんだよお前!!!」
「うるせぇッッ!! いきなり矢文飛ばしてきておいて偉そうなこと言うなッッ!!」
ワタルは逆ギレしたッ!
「ふん、まあいい! 単刀直入に言うぞ、ワタル! 俺の名はゴードン! 今から俺と決闘しろ!」
ゴードンと名乗るオークは、そう言ってすごんだッ!
「決闘ならば受けて立つッ! だがその前に、ちゃんと決闘の理由を説明しろッ!」
するとゴードンは、素直に首を縦に振ったッ!
「よかろう! 理由は2つある! まず1つ目は、私が所属する“暗黒武術協会”が、お前を“早急に排除すべき危険人物”だと指定したからだ!」
彼はそこで一旦言葉を区切り、大きく息を吸って続けるッ!
「お前はかつて、魔王デウスを倒した! デウスはこの暗黒武術協会の優秀なメンバーだったのに、倒してしまったのだ! つまりお前は、同胞の敵! 俺はお前を倒し、敵討ちを達成するという使命を協会から与えられ、ここへ赴いた!!」
「なるほど……それで、2つ目の理由はなんなんです?」
アリアが尋ねると、ゴードンは懐をガサゴソとまさぐり、一冊の本を取り出した……ッ!
「……この本を、知っているか?」
その本の表紙を見て驚愕するワタルッ!
「そ、それは……ッ!」
それは――“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”、略して“俺ピン”であった――ッッ!!
次回、「ワタル酷評!ゴードン怒りの鉄拳ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]宮本武蔵のウソホントを検証……異世界転生出版