第10話 「ワタル、困惑!空前絶後の小説レビュー対決ッ!」
前回までのあらすじ!!!
トラックを受け止めて異世界に転生してきたごく普通の最強熱血武闘派高校生、伊藤ワタル!紆余曲折を経てその先で偶然出会った少女アリアと一緒に魔王を倒す旅に出た!
しかしその道のりは苦難の連続!鎧の騎士リベリオン!妖精のハーピィー!コックのサイクロプス太郎!狼男のウルフマン!ワタルの前に立ちはだかる四天王たちとの戦いは熾烈であったが、筋力と知力と熱血を駆使して、なんとか全員を倒すことに成功!そして残すは魔王のみとなった!
そしてッ!
ワタルとアリアはついにッッ!!
魔王の城に到着したッッッ!!!
「とうとう……着きましたね……」
「そうだなッ!とうとう着いたなッ!」
彼らの前にそびえたつ城は、まがまがしいオーラに覆われているッッッ!!!
この中に異世界最強の存在“魔王”がいると思うと、武闘派のワタルは武者震いが止まらないッッッ!!!
「うおおおおッッ!!ワクワクしてきたぞッッ!!よし、早速行こうッッッ!!!」
そう言いつつうさぎ跳びで城門へと直行しようとするワタルを全力で止めるアリアッ!
「ちょっと待ってくださいワタルさん!いくらなんでもそれは無茶です!魔物たちの巣窟である魔王城に正面からうさぎ跳びで向かうなんて、無謀にもほどがあります!」
「うむ、確かにそうだな……何か策を練ろうッッッ!!!」
早速行き詰るワタルとアリアッ!魔王の城への侵入は、やはり一筋縄ではいかないようだッ!
するとッ!
その瞬間ッッ!!
ワタルが城門の脇に何かを発見ッッッ!!!
「おいッッッッッ!!!!!あれを見ろッッッッッ!!!!!」
彼が指さした先には、なんと小さな屋台があったッ!看板にはでかでかと何か文字が書かれているッ!
「あの看板にはなんと書いてあるんだッッ??」
「"魔王挑戦チケット売り場"と書いてありますね……でもやめましょうワタルさん。あれは絶対に罠です」
「いや、だがもしもということもあるッ!話だけでも聞いてみようッ!」
そんなわけでワタルたちは城門脇の屋台に向かった!!!
「すみませんッッッ!!!誰かいませんかッッッ!!!」
ワタルが声をかけると、屋台の店主がひょっこりと顔を出したッ!
「うるさいぞ!そんなに大声を出さんでも聞こえとる!」
緑色の肌!1.3メートル程の低い身長!尖った耳と鼻!
怒りながら登場した店主は、俗に言う“ゴブリン”という種族の男性であったッ!
「あのー、ここに魔王に直接挑戦できるチケットがあるというのは本当ですか?」
アリアが恐る恐る聞いたッ!
「ああ、置いとるぞ」
ゴブリンの店主が頷くッ!
「でも、なんでそんなものがここに?」
当然の疑問であるッッ!!
「簡単な話だよ。挑戦者を求めているのさ」
「挑戦者……?」
アリアが首を傾げたッ!
「ああ。かつて魔王様はその強大な力を使って、この土地を手中に収めた。だが統治者としての生活は退屈らしいからね。定期的にこうして挑戦者を募っては、決闘を行っているんだ。幸いなことに、魔王様に挑戦しようという馬鹿な人間は後をたたない」
「なるほど、強者故の悩みと言うやつかッ!まあ、気持ちは分からんでもないッ!」
ワタルはしたり顔で頷いたッ!
「そんで?あんたらもその馬鹿な挑戦者の類なのかい?」
「ああ、そんなところだッ!まあ勝つのは俺だがなッ!」
自信満々に言うワタルッ!そんな彼の表情を見たゴブリンの店主はニヤリと笑ったッ!
「へへ、面白い。だが、もちろんチケットを入手するのも簡単ではないぞ」
「なに……ッ?それはつまり、貴様とも戦わなくてはならないということか……ッ?」
「ああ、その通り……だが!」
そう言うとゴブリンの店主は意気揚々と屋台から身を乗り出し、ワタルたちの前に立ったッ!そして腕を組み、仁王立ちで宣言するッ!
「勝負のルールは小説レビュー対決!これからとある小説を読み、それについてより素晴らしいレビューを書いた方の勝利となる!」
「????????????????????????????????????????????????????????????」
ワタル、困惑ッ!ゴブリン店主の言っている言葉の意味が分からず脳がパンクしたッ!
「しっかりしてくださいワタルさん!」
アリアが必死にワタルの肩を揺らすッッ!!
「……破ッ!いかんいかん、完全に脳が故障するところだった……しかしまさか、勝負のルールが小説のレビューとは……いくらなんでもこれは予想外だったぞッ!」
「でも、どうやって勝敗を決めるんです?」
彼女の疑問にゴブリンの店主が答えるッ!
「心配するな、ちゃんとした審査員を呼んでおいたぞ!おーい、こっちに来い!」
彼がそう言うと、城門から一人の人物が現れた!
「アッ!リベリオンじゃないか!久しぶりだなッ!何年ぶりだッッ!?」
「うん、実に12時間ぶりくらいだな」
そう!今回の勝負の審査員も青いロングヘアーの鎧騎士、リベリオンだッ!四天王の三人目であるサイクロプス太郎との料理対決以来の登場ッ!
「魔王サイドと人間サイド、両方の立場で公平に審判を下せるのはリベリオンくらいだからな!転移魔法を使ってさっき呼んだんだ!」
「まあそういう事だ。ちなみにこのゴブリンの名はブッカー。年に1000冊の小説を読むほどの読書家だ。侮るなよ、ワタル」
リベリオンの忠告を聞き表情を曇らせるワタルッ!
「むう、俺もそれなりに読書はするが、レビューなんてした経験は皆無だ……これはまずいぞッ!」
「ちなみに、今回読む小説はこれだ!」
するとブッカーは屋台の裏から一冊の本を持ってきたッッッ!!!
「これは今年このウィンド大陸で大流行している小説!その名も“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”だ!」
「タイトルが長いッッッッッ!!!!!」
ワタル、鬼の形相で絶叫ッッッッッ!!!!!
「こらえてくださいワタルさん!これが最近のウィンド大陸での流行りなんです!」
どうやらそういう事らしいッ!ならば仕方がないッッ!!
「制限時間は1時間!この小説の1章を読み、その部分についてのレビューを書くんだ!」
「くそ……どうやらやるしかないらしいッ!アリアッ!俺はこの世界の字が読めないから、音読してくれッ!」
「はい、分かりました!魔王は目の前です、一緒に頑張りましょう!」
そんなわけで魔王の城から少し離れた特設ステージにやって来た一行ッ!そこにはテーブルと羊皮紙と羽ペンが用意されていたッ!
「よし、それでは始めるぞ。用意……スタート!」
リベリオンの声を合図に、本を開くアリアとブッカー!!!ブッカーはそのまま猛スピードで本を読み進めていくッ!これはワタルたちも負けてはいられないッ!
「それではいきますよワタルさん!」
「応ッッッッッ!!!!!」
威勢よく返事をするワタルッ!
そしてアリアはウィンド大陸で現在大流行中の小説“人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件”を声に出して読み始めるッ!
「「俺の名前は佐藤・ジョバンニ・オーク・達也。名前から分かる通り、種族はオークだ。容姿はまあまあってところかな。でも、人付き合いは苦手だ。別に誰かと話すのが嫌いってわけじゃない。一人が好きなのさ。
そんなわけでいつものように俺が唯一心を許している幼馴染の女の子、倉田・ミレーヌ・オーク・優子ちゃんと一緒に森の道中で盗賊として仕事をしていると、なんてこった、俺と優子ちゃんは高速で迫ってきた馬車にはねられちまった!やれやれ、しくじったぜ」」
「ツッコミどころが多すぎるッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
ワタル、絶望ッッッッッ!!!!!
「音を上げるには早いですよワタルさん!あらすじを読む限り、どうやら主人公の達也くんとヒロインの優子ちゃんはこの馬車に轢かれたことがきっかけで異世界に転生してしまうようです!」
「そんな馬鹿な話があるかッッッッッ!!!!!」
ワタル、憤慨ッッッッッ!!!!!
だが彼の怒りはもっともだッ!
何かに轢かれて別の世界に転生するなどと言うおかしな話が、あっていいはずがないッッ!!
だがこうしている間にも、ブッカーは着々と小説を読み進めているッ!
どうするワタルッ!このままでは、魔王への挑戦を目前にして敗北してしまうぞッッ!!
次回「ワタル、爆裂!思いを込めたレビューをかませッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1] 人付き合いの苦手なオークの俺が異世界に転生してしまって大ピンチな件……異世界転生出版




