クリスマスの夜に(3)
みゆきは一歩部屋の中へと足を踏み入れた。 その時、彼女の前を小さくて素早いものが横切った。ちょろちょろと、よく分からないものが部屋の隅を駆けずり回っている音がする。 恐怖がこみあげ、みゆきは思わず声をあげそうになった。
と、積み上げられた本の上に、ちょこんとそれが乗るのが見えた。あげかけた声は、一瞬にして止まった。 それは真っ白なねずみだった。
道端で死んでいるような灰色のねずみとは違い、そのねずみは飼われているねずみのようにきれいな毛並みをしていた。 白く輝くそのねずみに、みゆきはうっとりと見とれた。ねずみは窓の方に顔を上げ、しきりに小さな手を動かしていた。よく見るとその手には細い糸のようなものが、まとわりついている。
みゆきはもう少し近くで見ようと一歩近づいた。その時途中に置かれていた本が、音を立てて崩れ落ちた。
「しっ! 静かに!」
鋭い小さな声が部屋の中に響き渡る。 びっくりしたみゆきは辺りをきょろきょろと見回した。どこから声がするのだろうかと、怯えながらもその出所をつきとめようとした。そして彼女の目は本の上にいる白いねずみに吸いつけられた。ねずみがこちらを見ているのだ。しかも怒ったような目つきで。 その声はまた言った。
「これが終るまで静かにしてくれないかな。糸が切れちゃうよ」
みゆきは黙ったまま、うなずいた。
この奇妙な事態はなんなのだろうと思いつつも、ねずみがいいというまで見守ることにした。




