第1話 謎の闘技場
「起きろ、小僧!」
誰だ?せっかく気持ち良く寝てたのに。
目を開けると巨大な影が映った。
「やっと起きたか。」
大きな影がこちらに話掛けてくる。
「ぼやぼやすんな。さっさと起きろ!」
突然の大声に飛び起きると、その声の主の姿があらわになって声を失った。
身長で4mは有りそうな1つ目の巨人だった。
全く状況が理解できないまま呆然としていると巨人が続ける。
「何が起こってるかわからねぇって面だな。だか説明するのも面倒だ。さっさと武器を持ってそっちのドアに入れ!」
木刀を手渡されて扉の前に押し出された。
あぁこれは見たことがある。コロシアムってやつだな。
観客はガラガラだ。だが遠目にもまばらにいる観客が人間じゃないってことはわかる。
後ろでおれが入った入り口が閉まる音が聞こえた。
すると今度は向かいの扉が開く。
何かがノソノソと入ってくる。
「マジか。」
何処かから声が響く。
「双方、構えて!」
目の前にいるのは巨大なカエルだ。
色合い、見た目的にアマガエルだと思うが全長80cm位で大型犬くらいのサイズがある。
5m位離れていても毒々しいまでツヤのある緑の肌とギラギラの大きな2つの目がこちらを見ているのがわかる。
「始め!」
合図と共にカエルの口から目に止まらぬ速さで舌がこっちに向かって飛んできた。
とっさに頭を庇ったが舌は右足に巻き付く。
次の瞬間には強い力で右足を引っ張り上げられ、身体が反転するように仰向けにひっくり返された。
背中を強く打ち付けて、あまりの衝撃に呼吸が止まる。。
その刹那、見上げた視界に2m以上の高さに飛び上がるカエルの姿が映った。
そして空中で口を開いてまたしても舌をこっちに向かって伸ばしてきた。
舌はまっすぐこちらの顔面に向かってくるが、背中から打ち付けた衝撃で身体が動かない。
やけにゆっくりと感じる時間の中で舌は正確に俺の額辺りにぶつかった。
その瞬間に世界が暗闇に包まれた。
「・・・」
目が覚めるとそこは薄暗い洞穴のようなところだった。
あれだけ打ち付けたはずの身体には少しの痛みも残っていない。
ただ空腹だけを感じる。
洞穴の奥から良い匂いが漂ってくる。
ここにいても仕方がないのでとにかく匂いのする方は歩いた。
匂い釣られて歩いていると大きな空洞に出た。
空洞の真ん中には1つ目の巨人が焚火を囲って食事をしていた。
「おぅ、生き返ったか。」
巨人は振り向きもせずにそう言った。
「見事な負けっぷりだったぜ。まぁ気にするな。人間種は育成に時間がかかることはわかってるからよ。」
こちらを見ずに話を続ける。
「どうした、腹が減ってんだろ。こっちにきてまずは飯を食えよ。」
やっと振り向いた巨人は串刺しの肉をこっちに差し出した。
「お前は誰だ?そもそもここは何処だ?おれは何故あんな巨人カエルと闘わないといけなかったんだ?それに・・」
「あー、うるせえ!」
急に溢れてきたおれの問いかけに対して、巨人は煩わしそうな表情で遮る。
「おれの名前はダズだ。残りの質問はめんどくせえからまた今度だ。取りあえず食え。」
串刺しの肉を更にこっちに突きつけてきた。
「お前が明日の試合に勝ったら何でも答えてやる。」