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序
どうしてこんな気持ちになるのだろう?
その少女が誰かは知らない。それどころかたぶん会ったことさえない。髪や瞳の色、それに顔立ちもこの国では見たことがないから、おそらく外国人なのだろう。
なのに、どうしようもなくなつかしい。今にも涙がこぼれそうなくらいに。
――ありがとう。
彼女ははにかんだように笑い、すずしげな声で「うれしい」と続けた。
ふと風が吹いてきて、彼女の真っ直ぐな黒髪をなびかせる。飾りひとつない白いシャツと紺色の膝丈のスカート。そういえばその格好もずいぶん変わっているし、かなり質素だ。
けれど少しも着飾っていないのに、彼女は視線を引きつけて離さない。
――これからよろしく。
全部、夢だとわかっていた。すでに繰り返し見ているから。
うれしそうに笑いながら、彼女は横に並んでゆっくり歩き出す。だが、この続きはない。
いつもそこで唐突に夢は終わり、ロザリンデは朝の光の中で目覚めるのだった。今にも泣き出しそうになりながら。