エリック・テオ・ロデインの場合
お久しぶりです。
主人公の祖父、元国王視点です。
ワシはエリック・テオ・ロデイン。ロデイン王国の元国王じゃ。
此処の所続いていたパーティーも終わり、初孫のヴェロニカ・ローズ・ロデインが北の隣国、シュッティルト帝国に嫁いで行った。
ワシにとってヴェロニカの印象はとても強い。だからか、娘が嫁いだ時とは違った寂差を感じる。
今から20年程前、初孫ヴェロニカが誕生した時、息子達の誕生とは違う感動が身を包んだ。
忙しい合間をぬい、赤子のヴェロニカを見に行った時の事を今でも鮮明に覚えている。
神秘的なアメジストの瞳を瞬かせ、その瞳の奥には確かな知性が煌めいていた。
外見的特徴は嫁いできた嫁に似ていたが、我が王家の特徴もしっかり受け継がれている。
ワシには息子と娘がいるが、産まれた瞬間から知性はなかった。ヴェロニカがどのように成長して行くか、できうる限り見守ろうとこの時決めた。守護者になるか化け物になるかはヴェロニカ次第なのじゃから。
ヴェロニカが1歳半になると、占族が仮契約にやって来た。
占族が1歳半でやって来るなぞ聞いた事がない。神童、天才と周りは言うが、ワシは違うと思う。如何違うかとはいえないのじゃが。
ヴェロニカの占族について、ワシの占族が教えてくれた。なんでも純血の占族の1人という事だ。占族同士だと子ができ難く、今居る占族の大半がハーフとクオーターじゃ。
純血というのは単純に強いと言われている。肉体面、能力面でじゃ。
ヴェロニカには何かあるのじゃろうか、願わくば利用しないで済む事を祈ろう。国王とは因果な商売じゃ。
息子に第2子が誕生する頃、ヴェロニカの占族の雰囲気が変わった。本人が言わないので定かではないが、本契約を交わしたのだろう。
本契約したと聞けば、利用せねばならんじゃろう。王家の為に、と。
本人が気付いているかいないかは分からないが、このまま過ごせば良い。
孫が更に誕生し、孫娘1人、孫息子2人になった。側室の子が第1王子という事で、将来孫達が争わないでくれる事を願う。教育次第じゃろうが、側室の家は権力欲が強い、こまめに見てやる必要があるのう。
どうやら孫息子を心配するのはワシ1人ではない様じゃ。
父親として息子も心配しておるし、ヴェロニカも2人の状況を探っている様じゃ。
2人は良い姉を持ったのう。
ヴェロニカが動き出した様じゃ。側室の元に向かい、長く伸びた鼻を木端微塵に粉砕した。この知らせを受けた時、不謹慎にも吹き出してしまった。
また、母親の所にも出向き改善点を上げ、良い風を吹かせる。
自身も何か動くのか、慈善活動の許可を求めて来た。
ヴェロニカを見ていると、新しい発見がある。
服のレンタルに服のリサイクル、職人も大店だけでなく街の貧民街などの未亡人に振るなどしている。
今まで溜まっていた衣類の新しい道を指し示した。ワシらの様に溜めている者もいれば、貴族でも装飾品の買えない家もある。
一般の貴族が始めたのならば服の着回しなど、という者も出たのじゃろうが、王女の使った物という触れ込みは貴族間に走り、下級貴族達の家計を助ける事になった。
ヴェロニカが意見書という名の計画書を渡して来た。
王都周辺に試験的に孤児院を増やしスラムから子供を減らす。また、運営や手伝いにもスラムの人間を使い、スラムの人間を減少させる。
空いたスラムの見回り、危険物の撤去、区画整備をし、シュッティルト帝国から流れて来る移民、間者の監視に力を注ぐ。
まったく良くできている。
我が国の財源も調べられており、その内どのくらい必要かも纏められている。このまま会議に出しても問題ないほどじゃ。
ある日、息子のパトリック経由でヴェロニカが北産の猫を拾って来たと聞いた。
何を? と思ったが、猫の正体はシュッティルト帝国の皇太子じゃった。
帝国の皇太子と対面する事になった。
「ヴェロニカ王女と婚約したいと思います」
「寝言は寝てから言うべきじゃな、シュッティルトの皇太子殿」
ワシは小僧の寝言を一刀両断にした。
考えてもみてくれ。シュッティルト帝国は足元に内乱の危険性をはらんだ火種が燻っておる。そんな危険な地へ大切な孫娘を嫁に出す馬鹿がいようか。
「如何したら許していただけるだろうか?」
「ヴェロニカが学園を卒業するまでに足元の火種を鎮火する事ができれば、考えよう」
もちろん考える事はするぞ。状況しだいじゃがな。
いくら国土の大きな帝国の次期皇帝とはいえ、経済では此方が上。防衛という意味では大いに役に立つ組み合わせだろうが、他国に嫁がせるのは気が引ける。
シュッティルト帝国の小僧がちょくちょく顔を出すようになった頃、次代の王子達も姉に影響され、すくすく育っている。そろそろ息子に王位を譲るべきか。
正式に息子に王位を譲り、肩の荷が下りた。
これからは難しい事は抜きに家族と過ごそうと思う。まずは孫達と遊びたいものじゃ。
ヴェロニカが2人目の占族を雇った。
王位にあれば周りにどのような影響を及ぼすか警戒せねばならなかったが、退位した今は、ただ孫娘を褒めよう。
ヴェロニカがとうとう学園に入学した。
主席入学とワシも鼻が高い。
シュッティルト帝国では、小僧が反乱を企んでいた者達を次々と粛清しているようだ。
状況次第でヴェロニカとの婚約も了承せねばならんのう。
学園にいるヴェロニカから手紙が届いた。
手紙にはアルフ・シリテ子爵令息が弟子になったと書いてあった。
シリテ子爵と言えば、貴族の中でも白い政策をしている家計だったはずじゃ。良くも悪くも清貧。下級貴族の見本のような家じゃった。
だが、ヴェロニカの弟子とは怖いもの知らずな。ちゃんと手加減するのじゃぞ。
ヴェロニカに続き孫息子達も学園に入学して行った。早いものでヴェロニカはもう卒業じゃ。卒業後は王族としての政務に励むと言っておったが、結婚はいいのかのう。
ヴェロニカも19歳になった。そろそろ結婚じゃろう。
じゃが、学園の生徒に関して調べている様じゃ。
ヴェロニカが何かを警戒している様なので、ワシも警戒していれば、孫達を巻き込んで騒動が起こった。
手を打とうとした時ヴェロニカがやって来て、この件はヴェロニカが動くと言ってきおった。
なるべく穏便に収めると約束すると、足早に去って行った。この所色々手を回している様じゃし仕方ないかのう。
騒動が収まるとヴェロニカが結婚すると発表して来た。待たせている様じゃし良いのではないかのう。寂しくなる。
幸せは掴み取るのじゃぞ!
時々は顔を見せに帰って来てくれんかのう。
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外伝いかがだったでしょう?
影の薄かったお祖父ちゃん視点で書いてみました。
修正
2016、10,07
サブタイトルを訂正