盆と正月がいっぺんに来た
最近このエッセイほったらかしてたので、今日はクリスマスについてのエッセイをUP!
クリスマスである。
暑い。
ここオーストラリアの私の住んでいる辺りでは、クリスマスの頃は一年中で一番暑い時期だ。
「オーストラリア」と聞くと皆さんはおそらく、なんかこう、楽しげでトロピカルな暑さ、ハワイ的暑さをイメージされるのではないかと思う。しかし実際にはもっとインド的暑さに近い。「あぢいぃぃぃ!」(;´Д`)という感じ。Tシャツをびしょびしょに濡らして着るレベル。
濡れた服というのはけっこう体温を奪うものなんだなあ……もし山で遭難することがあったら気をつけよう……などと考えているうち、もうTシャツは乾いている。
先日、職場では毎年恒例の、クリスマスお食事会があった。
小さな会社なので従業員は多くない。職場のボスはイスラエル人。従業員は私以外は皆オーストラリア人。それがクリスマス時期に皆で寿司を食べるのが恒例になっている。
クリスマスに集まってビールを飲み寿司を食べるイスラエル人とオーストラリア人と日本人。なんだこれ。シュールだ。それにクリスマスらしい所が一つもない。だいたいボス、あんたはユダヤ教徒だし私は仏教徒じゃないか。
キリスト教徒じゃないけどクリスマスをやるのは日本人に限らない。近所に住んでいる、ギリシャ系のおかーさんの家もクリスマスは盛大に祝う。ギリシャ人は確かギリシャ正教とかいうののはずだけど、と思って、ギリシャのクリスマスはどんな感じか聞いてみた。
そのおかーさんの出身地、ギリシャの小さな島では、クリスマスはまず各家庭の小さな集まりから始まる。しばらくしてその集まりが、そのまま隣近所の家に移動する。2家族合同のパーティになり、それがまた、まとめて隣近所に移動して数家族合同のパーティになる。それがまたそのままそっくり移動して……、と、繰り返しているうちに、パーティは巨大なものになり、最後には集落全体が一つの大きなパーティになるそうだ。楽しそう。
ちなみに日本のクリスマスはどんな感じ?と聞かれたので、ケンタッキーフライドチキンを食べる、と答えておいた。
ここ、オーストラリアはまあ一応西洋文化圏に入ると思うが、色んな国からの移民が多いし、熱心なキリスト教信者もあまり多くないからか、いわゆる「伝統的なクリスマス」、本物の、「キリスト教徒のクリスマス」みたいなものに、未だにお目にかかったことがない。
とにかく暑くて、そういうクリスマスのスタイルに向いていないという理由もあるんだろう。クソ暑くて熱々のチキンなんか食べる気にならないし、オーブンで料理をするのもしんどい。皆で集まってビールを飲み、ビーチに行くのがクリスマスの過ごし方。
それでも、家族にとってのクリスマスは、日本の「お盆」に近い、といつも思う。それも年一回の大きなイベントなので、まさに、「盆と正月がいっぺんに来た」という感じだ。普段離れて暮らしている家族や親戚が一箇所に集まって、飲んだり食べたり一緒に過ごす。ちょうど日本でお盆に親戚が本家に集まるとか、そういうのに似ている。
日本ではカップルが一緒にいる日だけれど、ここではむしろカップルが一緒にいない日だ。それぞれの家族と過ごすから。もしくは、午前中は彼女の家族と一緒に過ごし、午後は彼の家族の方に行く、という風に、ちょうど日本の年始まわりみたいになる。
自分はこっちに親戚もいないのでいつもと変わらずに過ごすけど、誰かといなきゃいけないプレッシャーが無くて楽だ。
店はどこもかしこも閉まっている。ちゃんと、食料品の買いだめも事前にしておいた。街が静かだからか、何となく、神聖な感じがする。過ごし方がどんなでも、これこそがクリスマスなのかもしれない。
今日は、日頃多少アウェイ感のあるのアジア人移民も、この異文化の神聖な空気を楽しみつつ……お昼は味噌ラーメンにしよう。