3/7
捜索
「おい、これあいつの斧じゃないか?」
木こりを捜索に行った村人のひとりが川の前に落ちている錆びた斧を指さした。
「そのようだな。やはり自殺していたか…」
「しかし妙だな。そこまで生活が苦しかったわけでもなさそうだし、真面目で評判のいい男だったじゃないか。それが突然発狂して、しかも自ら命を絶つとは」
別の男が首を振った。
「いやいや、人間心の中に何を抱えているかなんてわかったもんじゃないさ。村いちばん清楚で美人だと噂だった村長の娘も、どこぞのつまらん男と駆け落ちしたらしいじゃないか。」
「ああ、書置きだけ残してぱったりいなくなったってな。村長も気の毒だよ。たったひとりの娘を顔も知らない男にられちまってさ」
村人たちは錆びた斧を持って村に帰って行く。田舎の小さな村で起こった事件は、人々の勝手気ままな想像で大いに茶の間をにぎわせ、尾ひれをくねらせながら遠のいていった。