お題もの、その六
ふわふわっと揺れる彼女の髪の毛。
僕はそれが好きだった。
「ん、なぁに?」
「・・・いや、なんでもないよ」
今は残念ながらポリフェノールたっぷりのお茶をかぶった後なので湿っている。
それでも彼女の髪は綺麗な黒を誇っていた。
最近染めたばかりだけれど、きれいに色づいているのだ。
別に金髪からの染め直しじゃない。
彼女は元々茶髪なのだ。
就職活動やらなんやらでそれっぽく染めただけ。
一体どうして彼女が頭からお茶をかぶるハメになったのかと言うと単純だ。
転んだのだ。
彼女が、平坦で障害物も何もない道で。
それはもう盛大に。
そのとき丁度運の悪いことに、お茶のペットボトルを持っていたのだ。
しかも蓋はしていない状態で。
彼女が怪我をしてないけれど、そのかわり彼女のペンダントが犠牲になった。
頭からかぶったのでペンダントの金属部分はお茶で濡れている。
ハンカチも被害を受けてしまって「どうしよう」と泣きっ面の彼女。
しかたがないのでハンカチは貸した。
呆れた顔の僕に微笑んで「やっちゃったよ」と言う日常が定着してきた。
「次からは気を付けようね?」
「うんっ」
それから一ヶ月たった今でも、未だに外れない。
バシャ、と音がして。
彼女の小さい悲鳴が聞こえる。
せめて僕たちが福島県の国立大卒業までにお茶のフタを締めることを覚えて欲しい。
そもそも転ばない事が一番なのだけれど。
僕は転んだ彼女にハンカチを渡した。
そして。
目を閉じて、その絶対に有り得ない妄想をしてみた。
あぁ、やっぱり好きだ。




