フリー団体戦と謎の乱入者
今回から本格的にバトルシーンとか出していく予定です。
更新遅くなってすいません。
ピピピピピピピ…
日曜日にしては早めの午前6時半にセットした目覚ましの音で、僕は眠りから覚める。
「ふわぁ、良く寝たなぁ~。あそうだ、バイザー充電完了してっかな~」
半分以上寝ぼけた頭で、出来てなかったら大変だぞぉとか考えつつ、机の上のコンセントとそこから伸びる充電器の先にあるARバイザーとその予備バッテリーを確認。よかった、両方ともフル充電だ。
「いよっし、今日も一日ガンガンバトちゃいましょうかねー」
カーテンを開け朝日を前進に浴び一気に思考を覚醒させた僕は、んーっと体を伸ばし眠気を追い出す。
まずは朝食、腹が減っては戦はできぬからね。
「おっはよー母さん!美紀は?」
「おはよう勇気、美紀なら早朝ランニングに行ってるわ、だから朝ごはんはまだよ」
録画したドラマを見ながら僕の母親、種子島知音は答える。
「分かった、ところで兄さんは?」
「これから寝る。起こしたらブッコロスってさ」
「また徹夜でクラン戦やってたのか、いまでも<ブリザード・オロチ>所属だっけ兄さん」
「いまでも、そしてこれからもずっと知樹はオロチの三代目リーダーよ。移籍するなんて言ったら説教ものよ!」
「ホント、母さんって変わってるね。息子がゲームで徹夜しても怒らないなんて、普通の親なら「ゲームなんてやめて勉強しなさい!」とか言うのに」
「そう言われた子供が勉強するわけないことくらい、自分の子供時代振り帰ればわかるのに。それに徹夜なんて現役時代のわたしと父さんだってやってたし」
「はあ、第一期<ブリザード・オロチ>の二枚看板。『疾風のユーノ』と『千里のリーン』父さんと母さんがまだ現役でFPSプレイヤーだった頃の事ね」
なぜ、母種子島知音と父、種子島勇磨がゲームについてこんなにも寛容なのか、その理由は両親ともに学生時代トップクラスのFPSプレイヤーで、出会ったきっかけも同じクラン(チーム)に所属していて、全国大会やイベントなどでリアルで知り合ったのだそうだ。その後就職が原因で引退し、もう二度と会うことはないだろうな、とか思っていたら、偶然同じ会社に就職していたのだ。
「そういや父さんは?」
「朝早くから仕事、取引先の重役と接待ゴルフだってさ」
「営業も大変だね~」
「朝準備しながら、「接待FPSなら得意なんだが…」とか言ってたわ父さん」
「はは、父さんらしいな」
再び母はドラマの観賞に戻る。僕は今日の戦場となる竜間山の地形等を思い出し、戦術を練り始める。
リリリリリリリリリリ―――――ン!
「あ、電話だ」
母はドラマを一時停止し、受話器を取る。
「もしもし種子島ですけど…あら近藤君!勇気?いるけど。勇気ー!正宗君からよー」
「は、はーい。もしもし正宗ってどうしたのさ声ガラガラだよ?」
『すまん勇気、今日行けそうにない』
「え、ちょ、ってか何で家の電話に掛けて来るのさ、僕の携帯に掛ければいいのに」
『何度も電話したが出なかった、お前どこに携帯しまってんだよ』
「カバンの中ってそりゃあ気づかないわけだ」今度から気を付けよ。
『とまあ本題行くぞ、昨日家かえってからも二挺拳銃の特訓してて、どうにもうまくいかないもんだからネットとかで、二挺拳銃の出てくる映画やアニメ見て研究してたらそのままパソコンのイスで寝ちまって、カ、カゼひいちまったっぽい』
「何やってんのさ!今日はしっかり休んでよ」
無理してでも来てくれって言いたい所だけど、ARGは頭だけでなく体も酷使するスポーツに近いゲームだ。体調悪いのに参加してさらに悪くなったら困る。
『っとまあそういう事だから、今日は橋立さんと二人で頑張れよ』
「うん、正宗のぶんまでって圭太は!?まさかそっちもカゼ?」
『いや、サッカー部から急に呼び出し喰らったってさっき電話が、麻乃さんにも伝えといてって』
「期待の新人は大変だね、でもこっちはもっと大変だけど。麻乃に伝えておくから」
『ほんとゴメン、じゃあな』
「お大事に」
「どうしよー正宗と圭太が来れないって」
「ってことは今日勇気は麻乃ちゃんとデートってことね」と母。
「違うよぉ~。あくまでチームのスカウトの為でデートとかそういう物じゃなくって…」
「否定する所が余計に怪しい…」
(ヒマなのをいいことに)追及を重ねる母さん。
「そっ、そうだ!母さんARGとかやらない?」
そうだ、話題を逸らそう。
「わたしもいろいろ忙しいし、それに『千里のリーン』が本気だしたらここら一帯のパワーバランスが崩壊するわ絶対」きっぱりと言い切れるところが凄い。
「それより今日圭太と正宗が来ないのは痛いな、戦力的に」
「とか何とか言って、本当は麻乃ちゃんとデートできて嬉しいんでしょ?」くっ、しつこいな。
「あ電話だ」
急いで受話器を取る。
『もしもし勇気?わたしだけど』
「どうかしたの麻乃?」
『ゴメンッ!今日出かける用事が入っちゃって行けなくなっちゃった』
「え、ええええ!?」
『きょうは圭太と近藤君、勇気の三人で頑張って!』
「あ、ちょっと待って麻乃!圭太達も…」
ガチャ ツーツーツー
き、切っちゃったよ麻乃、まあそれほど急いでたって事だろう。ってそれどころじゃない!ヤバイ、ますますヤバイ。今日僕一人きりじゃん!
「か、母さん。どうしよ~。麻乃も来れないって」
「あらら、でもたまには一人で戦ってみるのもいいものよ?普段は気付けなかった新しい自分を発見できるかもよ」一理あるな。
「っただいまー!あれ兄さんにしては早いじゃん!どしたの?」
「おかえり美紀。僕は今日ARGの交流戦があるから早いだけ、知樹はまだ寝てる、というかこれから寝る起こしたらブッコロスって」
「また徹夜でオンラインFPSでもやってたのあの廃人。高校生なのに勉強大丈夫なのかな?」
ちなみに美紀は種子島家で唯一ゲームの類をやっていない。小1の頃からずっとサッカーをやっている。たしか今年小学五年生だから四年目か。
「まああんな感じでも成績が学年トップクラスなんだから世の中ってわからないよね」
「ふたりとも朝ごはんできたわよー」
「「はーい」」
ってな感じのやりとりがあってから一時間半ほど経った午前八時半。僕は今日のフィールドである竜間山森林公園の通称(ARGプレイヤーの間での)『草原エリア』のベンチに腰掛け、既に銃撃戦に興じている少年少女たちを眺める。と言ってもARバイザーをかけていない僕から見ると、ただ走り回り、腕を向け合っているようにしか見えない。
「さて、僕もそろそろ始めるとしますか」
この「バイザーを付けずに対戦を眺める」という行為も結構面白いのだが早く準備したいのでゲームを起動し今回はマルチプレイモードを選択。視界に浮<現在地点確認>のシステムメッセージが五秒ほど浮上し、<あなたの現在地点がフィールドと認証されました>と続く。
事故などを防止するため、ARGの団体戦は開発元のミスカトニックゲームスが登録した場所でなければ行えない。この場合は竜間山がフィールドとして認証されたのだ。と同時に現在行われている戦闘が表示され、その下に<乱入>、<援軍>、<次回参加>の三つの選択肢が現れる。乱入も援軍もマナーに反するので、次回参加をタッチ。
「となると、終わるまでヒマだな」
という自問(?)に、音楽でも聞こうと心の中で自答し、音楽再生アプリを起動。曲はJAM Projectの「未来への咆哮」にしよう。
再びプレイヤー達の方に視線を移す。バイザーを付けている今、彼らは手にライフル、ショットガン、マシンガンを構え、さまざまな服装に身を包んでいるように見える。ここから見た感じだと両チームとも互角で決着にはもう少しかかるだろう。
竜間山森林公園その入り口の辺りに、中学生くらいの少女が一人立っている。服装はシンプルなシャツとジーンズ。肩にはバックを掛けている。
「ここか」
その少女はつぶやくと、手にしていたARバイザーをおもむろにかける。
そう、その少女もARGプレイヤーなのだ。しかし慣れた手つきでメニューを操作し、不敵な笑いを浮かべるその表情は、ゲーマーというより武人のそれだった。
決着には二十分程かかると思っていたのだが、押され気味だったAチームがリーダー自ら突撃を指揮、前線が伸びきっていたBチームは見事な逆転負けをしてしまった。
「相変わらず上手いなー」そしてAのリーダーは顔見知りなので、こりゃAチームに入った方が良さそうだ。と判断しこの公園におけるAチームの拠点の通称『遊具エリア』(Bは山の方の『山林エリア』がスタート地点だ)へとダッシュする。
「サフランさん!さっきの逆転!相変わらず凄いですね!さすがARG廃人!」
「おいおい、それじゃ褒めてるのか貶してるのか分からんな、それに私は廃人ではない」
と答えたのはガールズチーム『ミストラル・マギサ』-日本語に直すと『霧の魔女達』―のリーダーであるサフランさん。ちなみに本名は教えてもらってない。まぁ僕のほうもキャラ、というかアバタ―ネームでしか名乗ってないから別にいいんだけど。
「それよりスナイドル。私の後輩にあたる子がキミのチームに入ったと風の噂で聞いたのだが」
「まn、じゃなかったカグヤのことですか?」
そういやこの先輩。麻乃が通ってる私立の高等部に通ってたっけ。
「そのカグヤさん絡みで、キミとカトラス、マサムネ君の三人がチームからクビになったともな。大丈夫か?」圭太や正宗とも戦場で何度か会っているのですっかり顔なじみだ。
「ま、まあ昨日は負けましたけど、カグヤもどんどん強くなっていきますし、大丈夫です」
「こら勇気!またお姉さまをたぶらかそうとして!」
といきなり本名で呼びかけてきたのはクラスメイトの咲良菫。キャラ名はフィアールカ、通称ルカ。
「いきなり本名でよばないでよルカって痛!」
ぎゅむ、と足を踏まれた。
「そのあだ名でっ!呼んでいいのはっ!お姉さまだけっ!」
痛た。!につき一回の割合で足を踏んでくる。
「あー和んでるとこ済まないが、ブリーフィング始めたいと思う」
「すっ、すいませんお姉さま!」
「私は怒ってない、それに心配するなルカ。私はいままでも、そしてこれからもマギサのリーダーだ」
「お姉さま…」
「あーあのー和んでるとこ申し訳ないですけど、ブリーフィング始めてくれませんかー?」
「ああ済まなかった。ではあと五分程で戦闘開始だから、その前に状況説明に入りたいと思う」
さすがチームの指揮官。的確に地形や敵の取りうる戦法、要注意プレイヤーなどの情報を伝達していく。是非とも見習わなければ。
「ではこちらの配置に移るが、前衛に行きたい者、いるか?」
「「はいっ」」
同時に手を挙げた僕と菫、ほかにも五人程挙手する。
「残りの者で、軽機関銃を装備している者は火力支援に、間違っても味方に当てるなよ」
LMG持ちの数名がはいっと返事を返す。
「ではあと三十秒で戦闘開始だ、各員配置に!」
サフランの宣言と同時に、カウントダウンが三十になる。特にすることもなかったので、愛用のM4A1でも眺める。
「5,4,3,2,1戦闘開始!」
僕達前衛の八人は全速力で遊具エリアを走り抜け、草原エリアの木の陰や建物など遮蔽物を見つけ、身を隠す。
「ちょっとスナイドル!なんでアンタがここに隠れるのよ!どっか行きなさい!」
「イヤだ、ルカが別の所いけば、って言いたい所だけど敵来てる」
いまさら移動しようものならハチの巣だ。
「ったくほんとついてないわ今日。後ルカ言うな」とぼやきつつ、敵が身を隠した茂み目がけてアサルトライフルを短連射する菫。僕も負けじとM4A1を敵に向け、狙いを定めた所で、
<Warning>
というシステムメッセージが表示され続けて<新たなプレイヤーが乱入してきました>と表示される。
「え、乱入?」
菫の視界にも表示されているのだろう、信じられないという表情をしている。そりゃそうだろう、僕だって驚いている。
バトルシーンとライバルキャラ出しとくとか言っときながら結局次話になっちゃいました。
評価、感想とかあったらお願いします。