拡張現実な戦場で僕とその友人たちは 下
ゲームシステムとキャラ紹介の続きです。
やっと細かい解説にはいれるよ~
次回から本格的な戦闘シーンに入る予定です。
あとこの場を借りてお詫びです。
プロローグでAK47の事を「当たらないと定評のある」と言ってしまいましたが、あれは遠距離で撃ちまくったら、という意味です。FPSでは反動やクロスヘアなどを考えて撃てばしっかり当たります。
FPSやサバイバルゲームでAK47を愛用している方がいらっしゃいましたら本当にすみませんでした。
そこからしばらく僕たちは歩き、正宗が住んでいるマンションの前にある小さな公園に到着する。
「公園って言うよりなんか空地があったから砂場と遊具付けましたって感じだね」
「でもまあ」圭太は割と気に入ったようで、「ここなら対戦にはあまり向いてないし、邪魔されずに練習できるし穴場だなここ」
2015年、体感型ARゲームの発売により公園、神社の境内等でARスポーツやARGをプレイする子供が増えた。さっきまでいた蓮田公園も平日の午後は小学生の、休日は中高生も含めて盛んに対戦が行われている。といっても全ての公園で対戦が行われるわけではなく、こういった狭くて遊具や隠れる場所の少ない公園はあまり人気はない。ちなみにここ、竹川市で人気のスポットは竜間山の森林公園(隣りの市からもプレイヤーが殺到する)と、廃工場エリア(本来ならば立ち入り禁止だが知ったコトか)の二つがメインだ。もっともほかにも隠れスポットは多いが。
「じゃあ、何からいく?ライフル?ハンドガン?」と麻乃。
「とりあえずハンドガンからいってみよう」
「了解~見てろ勇気!俺のスタイリッシュなガンアクションを!」
と圭太。すでにARバイザーとサポーターを装着済み。相変わらず手際良さを発揮している。
「ちょ待ってよ~」
僕も慌ててバイザーをかけグローブ、サポーターを装着。電源をオンに。視界に表示されるゲームスタートボタンにタッチ。するとARGのロゴと、その下にプレイモード選択ボタンが表示されるので一人用モードをタッチ、射撃訓練モードを選択。現在所持している装備ウィンドウをスクロール。さっきの対戦でも使っていたFN5.7ピストルを選択。右下の訓練開始ボタンをタッチ。
<Traininngu Start!>と炎文字が浮上。それが消えると10メートル先に円形の的がいくつか浮上する。
「うわ勇気、まだファイブセブンとか使ってんの?」
「僕が何の武器使おうと勝手じゃん!そういう圭太こそ、何だってオートジャム、じゃなかったオートマグなんかつかってんのさ?」
圭太が手にした拳銃はオートマグ44。マグナム弾を使うため威力は高いが動作不良をおこしやすい。その特性はARGでもあらわれていて、実銃同様に「オートジャム」の蔑称を持っている。
「るせーな勇気、大口径は漢ノ浪漫!ライフルは7.62、ハンドガンはマグナム弾意外軟弱すぎて使えんわ!」
「はいはいそこケンカしてないで早くはじめっぞ~橋立さんも準備できているっぽいし」
さっきから全然しゃべらないので空気状態だった正宗が、やれやれといった感じて仲裁に入る。
「まぁ徹甲弾があればマグナム弾はいらないかの議論は後回しにして…」
幼馴染の前とはいえみっともない所を見せてしまった僕が矛を収めると、
「ま、まぁどんな弾も当たらなきゃ意味ないしな」
圭太も自分の訓練を再開する。
さて、僕も始めなければ、まずは右端のからか、体を目標に対して斜めに構え、足は肩幅に、銃を構える右手を左手で支える基本の構え(名前は忘れた)をとる。するとモーションセンサーが構えを感知、視界に表示される狙いの十字の範囲がきゅっ、と締まる。放たれた弾丸はこのクロスヘアの範囲内でランダムに飛ぶ。つまりこのクロスヘアが狭い程当たりやすい。これがARGの面白さの一つで銃の構え方ひとつで命中精度も変わるのだ。って余計なこと考えてると狙いが狂う、さっさと撃とう。
トリガーに力を込めると銃声とマズルフラッシュのライトエフェクトと共に的が破壊される。と同時に反動で照準が若干ずれる、今回は低反動の拳銃(ファイブセブンに使用される5.7㍉高速徹甲弾は、ライフル弾に匹敵する貫通力だが反動が軽いことで有名)を使っているのでほとんど気にしなくていいレベルだ。そのまま隣りの的に照準、ダブルタップ(高速二連射)発砲。別に一発でも破壊できるので、特に意味はない。テンションが上がったきたので撃つ。撃つ撃つ。気が付けば10個あったターゲットは全て破壊されている、使ったのは13発。<Game Over>の文字を消し、記録を保存する。
「ふはは、3発も外したか勇気!見ろ!俺のスコアを」
と言ってきたので圭太のスコアに目を向ける。
「ぜ、全弾命中、あんなモンスターガンで…」
これは冗談抜きでスゴイ。
「とまぁ俺を称えるのは後回しにして…麻乃は凄いな」
僕の右隣りでイタリア製の自動拳銃ベレッタM92Fを撃っている麻乃に視線を移し、圭太。僕も見てみる(ARバイザーをかけていれば、他人の訓練風景を見ることができる。事前に許可をもらう必要はあるけど)。確かに先週ARGを始めたばかりとはとても思えない。やっぱり小学生のころからやっていたという弓道のお蔭なのかな~と思う。
「ふぅ、どうだった勇気、圭太?」
訓練を終えた(こちらも全弾命中)麻乃。僕達の評価が気になるようだった。
「上手だよ麻乃」
「勇気よか上手いぞ麻乃、ゲームで実際使えるレベルだな…」
「ちょ今のはないよ圭太ぁ~。あーでも麻乃もすごいね」
これは本音。
「ところで近藤君、さっき新技開発したっていってましたよ」
気になる、といった様子の麻乃。
「え、まぁあることにはあるが…」
若干だが焦った様子の正宗。
「ほう、新技ねぇ、サブリーダー命令だ、できるなら実演してくれ」
麻乃以上に興味津々といった様子の圭太。そりゃ当たり前だ、僕だって気になる。
「あーでもアレは…ええいもう勢いでっ!!諸君!!俺っちの華麗なるテクニックに括目しろ!」
と半ばヤケクソ気味(?)に叫び、射撃モードを選択、流れるようなメニュー操作で、的とオーストリアの特殊部隊御用達の拳銃、グロック18Cを右手に装備。
「かぁ~らぁ~のぉ~!」
なんと正宗は左手にも同じグロックを呼び出す。
つまり、これは―――二挺拳銃。
「ま、正宗、確かにそりゃシステム上は可能だが、使えるのか?実際のゲームで」
驚きが隠せない圭太。両手に一つづつ武器を装備することは可能だ、しかしモーションセンサーとクロスヘアの開きが関係してくるARGにおいて、どうしても不安定な構えになってしまう二挺拳銃は命中率に欠け、使い物にならないというのが定説だ。
「まあ見てろって、行っくぞー!」
と叫ぶやいやな二挺の引き金を引く。フルオートでばら撒かれる拳銃弾。グロック18Cはマシンガンのようにフルオートが可能。専用のロングマガジンを使えば一瞬で何十発もの弾丸を発射できるのだ。これが実戦なら相手は蜂の巣だ。
そう、命中してれば。
「こ、近藤君?全弾外してるけど…」
正宗のグロックから放たれた弾丸は、どれ一つとして目標に命中していない。
「あ~あ、期待して損したぜ」
ついに二挺拳銃を見られるかと思いきや、それがとんだ見かけ倒しだと知った圭太ががっかりといった様子で一言。
「あのさ正宗、両手にフルオートは確かに強力だけどさ、慣れないうちはセミオートのハンドガンにしたほうがいいと思う」
「いや、俺の二挺拳銃は通過点というか、その発展形があるんだ、その習得の為に絶対フルオートじゃなきゃダメなんだ」
「ほう、発展形って?」
圭太は使いこなせば究極の接近戦スタイルと言われている二挺拳銃の「その先」に興味を持ったらしい。
「いいか、絶対笑うなよ、二挺拳銃のその先ってのは、サブマシンガンの二挺持ちだ」
ふざけた様子のかけらもない、真剣そのもの。といった言葉に、これが冗談か本気か分からなかったであろう圭太も本気だと確信したのか。
「バカ言ってんなって怒りたい所だが、案外名案かもしれない。正宗のスピードにさらに火力が加われば
正面戦闘、特に近接戦ではほぼ無敵…とまでは言いすぎだが、とにかく強力な戦力になりうる…お手柄だぜ正宗。今後も実用化に向けて努力を重ねてくれ」
「お、おう」
「じゃあ今日はこれで解散、何か伝えたい事とかあるか?」
「はい、明日の交流戦、どこでやる?」
「お、いい質問だな麻乃、俺としてはどっちでもいいいんだが、廃工場エリアは明日スコピの連中が行くっぽいからな、よしあしたは竜間山だ!全員バイザーの充電忘れんなよ」
「わかった、ところで何でスコピの予定なんて知ってんのさ?」
という僕の問いに圭太はフッ、と笑みを浮かべる。
「サブリーダー兼情報参謀にはいろいろなツテがあるのさ…そんな事より今日は早く寝ろよ。明日全力で戦えるように」
「りょーかい」
これではどっちがリーダーだかわかったものじゃない。
まぁとりあえず、今日はあまり夜更かししないようにしよう。
まだ見ぬ未知の戦いに心を躍らせ、僕は帰り道を急ぐ。
駄文にお付き合いいただきありがとうございます。
これで基本システムの説明は終わります。
次回からライバルキャラとかガンガン登場させていくつもりです。
評価、感想とかもしよかったら書いてください。
銃器の解説コーナー!
FNファイブセブン
ベルギーのFN社製の自動拳銃。ライフル弾並の威力の銃弾が1マガジンに20発入るのが特徴。
ベレッタM92F
イタリアのピエトロ・ベレッタ社の自動拳銃。9㍉パラべラム弾を使用。米軍を始め各国の警察や軍隊で採用されている他、見た目の美しさからかドラマやゲーム、アニメ等で主人公の使う銃として登場することも多い。
麻乃にこの銃を勧めたのは勇気。
オートマグ44
アメリカのAM社の自動拳銃。当時の最新技術であるステンレス鋼を使う事で初めてマグナム弾を使用可能になった自動拳銃。
グロック18C
オーストリアのグロック社のグロック17にフルオート機能を追加したもの、実銃は一般には販売されておらず、公的機関専用。9㍉パラべラム弾を使用