拡張現実な戦場で僕とその友人たちは 上
今回はARGのゲームシステムの解説やキャラ紹介的な話です。
執筆のペースが若干遅いけど、これからもよろしくお願いします。
「よ、よもや通信傍受されてたなんて」
僕、種子島勇気は二度目のため息をつく。
それに合わせてかカトラスこと友長圭太も悔しそうに、
「チッ、まさか傍受アイテムまで持ってるなんて、どんだけ課金すりゃ気が済むんだよあの小坊どもめ」
と呟く。
「カグヤとマサムネは?」
「近くの自販機でジュース買ってくるって」
「わかった、それにしても圭太」
「何だ?」
「改めて思うとさ、この技術って凄いよな」
「この技術って?」
「ARGを始めとした体感型ARゲームと、僕らが使っているARバイザーの事」
2015年現在、ゲームデバイス、及びゲームソフトの開発はVR-仮想現実方面へと進化していくと思われていた。しかし幾つかの技術的限界や法規制により、VR研究は失速、停滞気味となっている。
そこで注目され始めたのが、現実の映像に仮想の映像を上書きする。AR-拡張現実の技術である。
わかりやすくVRとの違いを説明するとこうだ。
部屋の中にいて本を手にする。という場合、VRならば仮想の部屋にいて仮想の本を手にしている。という映像を脳に送り込むのに対して、ARの場合は、現実の部屋の映像に本を手にとっているかの様な仮想映像を上書きするといった感じだ。もともとは医療用や軍事用として研究・開発が進められてきた(ここの辺りはVR研究と同じ)が、コストダウンに成功し、またVR技術の行き詰まりにも手伝ってか民生品などにも使用され始めている。
ARガンナーズ(通称ARG)等、この時代のAR技術を使って作られたゲームを、従来のARゲームと区別する意味を込めて、体感型ARゲームと呼ぶ。ちなみにARGはARFPS(拡張現実一人称射撃)というゲームジャンルを冠した初めてのタイトルだ。
ついでにFPSについても説明しておこう。
FPS-ファーストパーソンシューティング―とは、画面に登場する主人公の視点でゲーム内を移動でき、手にした銃等の武器で敵を攻撃していくゲームの総称だ。従来のFPSとこのゲームの違いは主人公の視点=自分の視点、という事とゲームの対戦ステージが現実の公園や森、山などである事の二つである。
「まあな、体感型の凄さはARと現実の違和感の無さもあるけど、本当の凄さはARとモーションセンサーの複合システムじゃないかと俺は思うんだが、勇気は?」
「モーショングローブとサポーターの事?言うまでもなく僕もそう思う!このシステムこそ、従来のARゲームとの最大の違いじゃん」
「手の部分には手袋型のモーションセンサーでタッチ操作やスクロール操作に対応、ヒジとヒザにはサポーター型で大まかな四肢の動きを捉え、事前に入力しておいたパーソナルデータとの連動で精度を上げる。ヒジとヒザのは転んだ時のケガ防止も兼ねてるなんてホントすごいよなー」
「まさに発想に勝利ってことだね」
1ゲーマーとして、開発者たちには尊敬と感謝している。
「だな、はぁぁ~~」
「どうしたの?そんなため息ついても反動とかは体感できないよ、技術のブレイクスルーでもないかぎり」
「いやまあそれはそれで楽しみだが…って俺がため息ついてたのはそこじゃねえ!今日の敗北だよ!課金小坊どもめ…」
ぐぬぬ、と唇をかむ圭太。小学生、しかも安直にアイテム課金するいわゆる「課金厨」たちに敗れたことが個人的に相当悔しいらしい。
「いや僕は分裂後初めてにしてはよく頑張った方かな~と思うんだけど」
「分裂っつーか、ありゃ俺とお前、近藤の三人が追い出されたって感じだろ、前坂のヤツ、何が「同じ学校の生徒限定だ」とか抜かしてんだよホント」
「でもまあ、戦略上は同じ学校の生徒どうしでチーム組んだ方が効率は良いし、どっちかっていうと僕と圭太の方が無理言っちゃってるかもしれない。それでもついてきてくれた正宗には感謝しなきゃね」
「近藤の場合、半分以上は麻乃目当てだろうけど、おっと噂をすればなんとやら…おーい麻乃、正宗ー!早くこっち来い」
公園の入り口辺りにいる二人を見つけた圭太が呼びかける。すると二人も急ぎ足でこちらに向かってくる。
「お待たせ―はい勇気と圭太に」
そう言ってコーラのペットボトルを手渡したのは僕と圭太にとって幼馴染にあたる少女、橋立麻乃。ゲームではスナイパーライフルを主に使う、ちなみにキャラネームは「カグヤ」。
「遅いじゃん麻乃に正宗、俺達待ちくたびれたぜ」
「いやーごめんごめん、自販機の所で橋立さんと反省会しててさ」
そう答えたのはマサムネこと友達の近藤正宗。
「反省会って、どうせ麻乃相手に延々と愚痴ってただけでしょどうせ」
「そうでもなかったよ勇気」
「そうか、ならいいけど…とりあえずここで全体の反省会でもやっとく?」
一応リーダーということになってる僕がその場をまとめようとしてみる。
「俺はここでもいいけど、麻乃は?」
「うーん、駅前の喫茶店…はちょっとどころかかなり遠いし、勇気の家は?」
「今日美紀の友達来てるから無理かも」
「じゃあここでやっちゃうか、近藤君は?」
「俺はどっちでもいい」
「話まとまったみたいだな、じゃあ反省会始めるぞ」
サブリーダーの圭太がそう告げ、今回の敗北の原因の分析にかかる。
負け戦の分析は軽く萎えるが、これを疎かにするチームに勝ちは来ない。僕も真剣に考えてみる。
「僕の視点からだと、敵チームの誰かによって通信が傍受されてた事かな」僕自身それで奇襲受けたわけだし。
「え!うそ傍受されてたの?どうりで的確に待ち伏せされたたってわけか~」
と正宗。
「正宗の場合致命的だよなそれ」
納得、といった様子の圭太。
「MP40しか装備してなかったからね」
「私の場合はそこまで困らなかったけど、敵チームの人数の多さに困った」
これは麻乃。
「そう!そこなんだよ今回の敗因は、通信傍受も厄介だけど、それ以前に4対10という数的不利があった、俺も最後五人の敵同時に相手にしてたくらいだからな」
「それでも三人倒せたんだから上出来だよ圭太」
すかさず麻乃のフォロー。
「やっぱり人数少ないのはつらいぜ」
「ごめんもともと私が無理言ったせいで竹川スコーピオンズから追い出されることになっちゃって」
「橋立さんは関係ないよ、抜けるって決めたのは俺らだし」
竹川スコーピオンズ(以下スコピ)とはもともと僕と圭太、正宗が所属していた、市立竹川中学1年のARGプレイヤーの集団の名前だ。メンバーは僕等を除くと14名。ここら一帯ではそこそこ大きなチームだ。最近ARG始めたものの、同じ学校にやってる人がいない麻乃が(麻乃が通ってるのは私立の女子校)「勇気達のチームに入れてほしい」と電話してきたのが先週の日曜。翌日スコピのリーダーの前坂恭也に話してみた、しかし「他校でしかも女子なんて、俺達のスコピに要らない」と突っぱねはたのだ。何度か説得を試みたものの聞く耳を持たない。恭也の態度に腹を立てた僕と圭太は「僕達チーム抜ける」と宣言。唯一賛成してくれた正宗も同じタイミングで脱退、これに麻乃を加えた4人チームを結成(名前はまだ考えてない)。今日が初めてのチーム戦だったのだが。結果はさっき言ったように敗北。初戦から黒星という結果に終わってしまった。
「はぁ…」
思わずため息、やけに大きいと思ったら圭太と麻乃、正宗も同時にため息、シンクロしてた。
「ま、とりあえず明日にでも交流戦かフリー集団戦やってスカウト活動やろう。別のチーム見つけてもう一戦ここでやる?」
「ちょっと疲れたかも」
と麻乃。無理もない、彼女にとっては初の団体戦なのだから。
「じゃあ場所変えて的当てでもやって今日は解散って感じでいい?」
「わかった、俺の家の近くに小さい公園あるからそこ行こう」
と正宗。ここの公園は休日ARGプレイヤーにとって対戦のメッカ。場所移した方がいいな。
こんかいもこんな駄文に最後までお付き合いくださいありがとうございます。
評価、感想等あったらぜひお願いします。