果たし状はラブレターの前に! 6
圭太と正宗の前に麻乃のターンいきます!
圭太と正宗の活躍は次回まで!
必勝を確信したトラップルームから勇気と圭太を逃してしまった杏梨は悔しさより先に焦りを覚える。
(あそこに手持ちの爆弾半分以上つぎ込んだのに~)
いくら爆弾使いといえども一ゲームに持ち込める爆弾には限りがある。さらに一回セットした爆弾は取り外し不可能というシステム上の制約のため、一気に弾薬を失ってしまう。アサルトライフル持ちで例えれば、五本あったマガジンが二本に減ったようなものだ。
「拠点防衛のために使うのも計算に入れると…良くてあと二、三回ってところか」
はぁ~とため息と共に一度拠点へと足を向ける。
「おっす杏梨、どうだった?」
「もう最悪、トラップはほとんど見抜かれるし危うく狙撃されかかるし…
それと沙耶ちゃん、シデン撃破おめでとう」
愚痴りつつもテキパキと二重三重に爆薬と地雷をセットしていく。
「まぁウチが本気出せばこの程度の相手どーってことなかったけどね」
「私も頑張らなきゃなぁ~。後これ今仕掛けたトラップの起爆装置だから」
「杏梨じゃなくてウチが持つの?」
「まだ三人いる。爆弾抜きだと戦力に劣るわたしより、沙耶ちゃんに持っててもらったほうが安心して戦える」
「お、おう」
「じゃあ私は残りの爆弾セットしてくる」
「行ってらっしゃーい」
橋立麻乃は中一校舎の屋上から狙撃銃、レミントンM24伏せ撃ちの体勢で構えシコープを覗く。拡大された視界の中には、対人地雷に警戒しつつも窓を開けていく勇気と圭太、そして正宗の姿。自分は設置された爆弾を探さねばならないというのに、ついつい沙耶の姿を探してしまう。
(でも、安心して沙耶ちゃんを戦おうと思ったら、まずはあの爆弾使いからっ)
麻乃の心に、先ほどチームので交わした会話がよみがえる…
「まずは爆弾使いの速やかな排除、これを麻乃にやってもらいたい」
「ええー私はミヤミヤに止めさした沙耶ちゃんを先に倒しちゃいたいんだけど…そしてから直接戦闘力に劣るあの爆弾使いを四対一で倒す、あるいは拠点爆破でいいと思う」
「確かにこれが単純な殲滅戦ならそれでもいいと思う。」と勇気、しかしその後でもね、と続き「今僕等が戦ってるのは爆破戦。拠点を爆破しないと勝利じゃない。さっきのトラップルームで手持ちの爆弾を一気に使ったとはいえ、まだ余裕はある。ってことは拠点付近には十中八九爆弾が仕掛けれているって考えて間違いない」
「でもその爆弾も接触式か電波反応、あるいは時限式じゃないの?だったら彼女倒しても意味無いんじゃ…」
勇気の予想に感嘆しつつも、シンプルな疑問を口にする麻乃。
「いや、間違いなくスイッチで起爆するタイプだろう。時限や接触、電波反応式だと拠点守ってるサヤエンドウも巻き込む可能性がある。それにあっちからしてみればこれを外したら手持ちの爆弾はゼロに近くなる。この一発だけは自分でコントロールしたいはず」
「なるほど」
さっきから聞き役に回っていた圭太も同意。
「だったら先にその持ち主仕留めて本人ごと起爆装置無力化しちゃおうって事。解った?」
「うん、で私はどうすればいい?」
「とりあえず僕達で部室棟のドアを片っ端から開けてくから、そしたら爆弾見つけてそれを狙撃して。あとは僕達でなんとかする」
「わかった!」
「じゃあ皆いこう!反撃だ」
「「「「おう!」」」」
まず爆弾使い、名前は確か佐和田杏梨。沙耶を探すのは彼女を倒してから。と自分に言い聞かせ、再び精神を集中させる。
そうしてしばらく勇気達の行動を目で追ていると…壁側の床に爆弾らしきものが、同時に勇気から通信が。スコープから一度目を離し、通信に応じる。
「こちら麻乃、あれって爆弾?」
『アレって壁側の床にある物の事?たぶんそう。そこから狙撃できる?』
「たぶん、やってみる」
ここで通信を一度切り、再度スコープへ。最大倍率に設定する。付いているスキル『精密射撃』もあってかギリギリ狙えそうな範囲だ。
「すぅーはぁー」
長距離狙撃の前一度深呼吸をし、その後は弓道の道場主である祖母の教えに従い息を止める。勇気達が退避したのを確認し、その指をトリガーに掛ける拡張現実の7.62㍉NATO弾が戦場を突っ切り目標を撃ち抜く、大爆発の赤い炎と共に白煙が一帯に立ち込め勇気達の姿を覆い隠す。
『圭太正宗下がって、行っくよーーー!』姿は見えないものの通信から勇気のこえ、その後もう一度爆発が起こり白煙は完全に晴れる。
「出たな、勇気君の煙幕封じ」
いつの間にか隣にいた光也が呟く。
「ええ!ミヤミヤあの技知ってたの?」
「知ってたも何も、日曜に彼に煙幕手榴弾使ってその煙を手榴弾の爆風で吹っ飛ばされたのは私だよ麻乃ちゃん」
「そうだったんだ…」
「いやーあの時は驚いた驚いたってそれより麻乃ちゃん、今の中に爆弾使い本人捜しなよ。たぶん近くにいるから」
光也の助言を受け、スコープで周囲を探る。すると爆弾から少し離れた物陰にしゃがんでいる爆弾使いを発見。勇気達からは上手く隠れているが、屋上からは丸見え、さらに相手はそのことはおろかこちらの存在にすら気づいていない。
ARGに限らず全てのFPSではスナイパーの射線上にいると気が付いた者はどこかの障害物に隠れる。隠れられたら隠れられたで、スナイパーの方はじっと待ち、一瞬でも油断した隙にその者を撃ち抜く。そしてスナイパーの存在に気付いていない敵はこちらから見れば「どうぞ殺してください」と言ってるようなものだ。
そんな敵を撃ち漏らすなど、小学二年から弓道を始めた麻乃にとってありえない。
「敵にスナイパーがいるなら、なおの事三次元的思考が必要よ」
決して届かないと知りつつそう教え、麻乃は本日三発目の弾丸で爆弾使いに向けトリガーを引く。
結果は言うまでもなく、綺麗なヘッドショット。
麻乃の狙撃で無事に爆弾を解除した僕等が近くに要るであろう佐和田さんが逃げに転じる前に仕留めるべく探した矢先にキルログに「リコット」の文字が。サヤエンドウのハンネはシエラだという事は圭太から聞いているので、今のは佐和田さんだろう。どこにいるのかと思えば部室棟の昇降口の靴箱の影に隠れていた。なるほど僕達から見えないが、屋上に陣取った麻乃には丸見えだ、こりゃ狙われるって。
「やあ佐和田さん。どうだった麻乃は?」という問いに視線で答える佐和田さん。その先にはスナイパーライフルを構えた麻乃が。
「おめでとう麻乃!」一応通信を送ってみる。
『ありがと勇気、私はこれからどうすればいい?』
「えーっと」こんなに早くカタがつくとば想像もしていなかったので判断に迷うが「とりあえず今僕らがいる場所まで来てくれる?」
『わ、分かった』
「あーやられたー」
想像もしなかった所からヘッドショットされた佐和田さんが悔しそうに呟く。
「でもね種子島君、友長君、近藤君。沙耶ちゃんは間違いなく強いわよ、果たして勝てるかしら?」
「勝つよ、というか確実に勝てるように先に佐和田さん探して倒したんじゃん」
恐らく有るだろう拠点の爆弾を無力化するためとは言わなかったが、恐らくあっちも分かっているだろう。
「じゃあ私はこれで、頑張ってね~」
自分がやられたにも関わらず、余裕たっぷりといった感じの佐和田さん。どんだけサヤエンドウの事信頼してんだよ。
「おまたせ~、ってさっきの爆弾使いは?」
佐和田さんが去ってか少し経って麻乃が姿を現す。どうやら佐和田さんに言いたい事があったらしい。
「佐和田さんの事?さっきどっか行っちゃったよ」大方さっき倒された相手と顔合わせるのが気まずかったのだろう。
「えー、せっかくいろいろ教えてあげようと思ったのに」
「まあそれは決着ついたあとに。今は一気に拠点落とそう」
「あー勇気?その件で俺にいい案があるんだが」
いつもは細かい作戦には口を出さない正宗の提案か…珍しいな。
「で、その作戦って?」
拠点の近くで、遠藤沙耶はキルログで杏梨がやられた事を知る。
「杏梨…ッ。この仇絶対取るからな…」
杏梨からもらった起爆装置を右手に持ち、左手のウィンチェスターショットガンのレバーを引き弾丸を送り込む。
「あはは、沙耶ちゃんゴメン。負けちゃった」
「杏梨!大丈夫か?」思わず尋ねる。
「うーんどっちだろ?ケガしてないって意味で大丈夫とも、やられたって意味でそうじゃないとも言える」
「まあケガしなかったならいいよ」
「でね沙耶ちゃん、いい知らせがあるよ。種子島君たち、最後の爆弾の起爆スイッチ、私が持ってると勘違いしてる」
「マジで沙耶ちゃん?」
「たぶん。だってさっき倒された時種子島君。確実に勝てるように私から先に倒すって言ってたから」
「そう」手元の起爆スイッチに視線を移し「だったら、付け入る隙は、ソコね?」
「沙耶ちゃん、来るわよ」
「分かってるって、おいそこのお前ら!隠れてないで出て来い!」
そう怒鳴りショットガンの銃口を天井に向けてぶっ放す。と曲がり角から数発のライフル弾が、ステップでそれを躱すし、沙耶は得物を構え一気に目標へ突っ込む…
投稿する直前までイングラムをロシアの銃だと思い込んでた俺って一体・・・