果たし状はラブレターの前に! 3
戦闘シーン直前まで行きます。
投稿する事考えずに書いてたから今回異様に長いです。
翌日の授業は一時間目から最後まで全くと言っていいほど集中出来なかった。思考は気が付けば明日の戦いか銃の方向へと向かってしまう。特に重症だったのが三時間目の国語で、授業受けた記憶がないうえにノートに「ヤングガン・カルナバル」に登場する銃器の名前をひたすら書きまくっていた。これ他人が見たら正気を疑われるな絶対。あとどうでもいいけど二回に一回の割合でファイブセブンの名前があった。我ながらどんだけ好きなんだよ…。
とこんな不真面目の極みな態度で授業を受けていてもそれなりにノートに授業の断片は書いてあったので、それを基に必死で復元を試みる。途中夕食を挟み四時間程、時計の針が午後十時を指そうかという頃、やっとこさ復元らしきものが完了する。
「ああつ~か~れ~たぁ~せめて授業くらいマジメに受けよ今度から」
明日の戦いの事を考えれば今すぐにでも寝るのがベスト。しかし四時間を勉強し続けたせいで妙に目がさえて眠れない。音楽を聴いていてもこれっぱっちも眠気が来ない。ちなみに聞いているのはGUMIの「シルバーバレット」曲名がカッコイイから聞いてみたら以外に意味深な歌で驚いた。
「ダメだ…まったく眠れない。そうだ!」音楽がダメなら読書をすればいいじゃない!というワケで近くにあった有川浩の『空の中』を読むことにする。「白鯨」と呼ばれる知的浮遊生命体の人類のファーストコンタクトを描いた作品だ。音楽もあって集中していたのか結構なページがあるにも関わらず一時間半ほどで読みおわった。
「ふう、是まさに至福の時間也ってもう十二時じゃん」
何故か漢文調にいった後、いつも寝る時間を超えていることに気が付く。
「もう、寝なきゃな」
いい感じに眠気も出てきたところでベッドに入る。
「あああヤバイヤバイヤバイ遅刻する――ッ!」
普段起きる時間を三十分程オーバーしてしまった。ほぼ二段飛ばしで階段を駆け下りる、席に着く。今は一分一秒が惜しい。ご飯はお茶漬けにして食おう。と決めコップの中身を一気に茶碗に流し込む。
「ってコレ牛乳じゃん!母さんおかわり、じゃない代わりの茶碗かして!」
時間短縮のはずがとんだロスタイム、もといタイムロスである。
「ちょマジかよ勇気、災難だなぁ~」
昼休み、弁当を食べながら圭太が言う、僕も購買で買ったメロンパンを食べつつ答える。
「そうだよほんとまったく。なんとか遅刻だけは免れたものの朝半分以上残しちゃってさぁ~」
「で弁当食い終わっても購買でパン買って食っているってことね!」
こちらは弁当を食べ終わって読書中の正宗。
「らしいな…ってお前しっかりARGセット一式持ってきたか?」
朝慌ててたとこから心配になったのだろう。圭太が僕に確認してくる。
「もちろん持ってきたよ、言うまでもなくフル充電。僕はあらゆることに対し準備を忘れないのだ!」
「とかなんとか言ってる割には今日英語の教科書とノート忘れたけどな」
「ははは、その節はごめん」
隣の席の圭太に借りてどうにか凌いだ。
「それはそうと圭太と正宗は?」
「当然持ってきたぜ」
「俺も、ところで勇気?俺と正宗は部活あるからいいとして、そっちはどうやって時間つぶす?」
確かに一時半には放課後、ゲーム開始は五時半。四時間も間がある。
「ぐっ、それは考えてなかった。でもまぁ大丈夫でしょ」
いざとなれば図書室にでもいればいい。
「あとそうだ。麻乃と真田さんには昨日、学校についたら勇気の携帯に連絡入れてって伝えてあるから。連絡あったら校門まで行って」
「わ、わかった…」
さすがサブリーダー。本来僕のするべき事にまで頭が回る。こっちとしては微妙に立つ瀬がない、今日の戦いは特に頑張らねば。
帰りのホームルームも終わり、時刻は現在一時半。特にする事も無いので、今回の戦場である学校内を回ることにする。
我が竹川中学の校舎の配置は大まかにたとえると中一、中二校舎と中三校舎を渡り廊下でコの字型に繋ぎ、渡り廊下から部室棟につながるという構図になっている。音楽室や理科室といった特別教室はあちこちにある。職員室は渡り廊下と中三校舎近くにある。その辺りでドタバタしてたら確実にバレるのでサヤエンドウ側も拠点には選ばないだろう。
「となると、どっちかの校舎の屋上か、部室棟だよね、敵の拠点は。それにしてもよかった~今日は吹奏楽部の練習なくって…」
なんせこっちは学校でサバゲー、もといARGやろうとしているんだ。目撃者は少ないに越したことはない。
でもとりあえず、校舎一周くらいしておこう。
「あ~終わった途端にヒマだぁ~」
校舎を一周し完全にやる事を失くした僕はさっき圭太に言ったように図書室のソファに寝転んでいた。読書部員にして図書委員にあるまじき姿だが、だれも見ていないから関係ない。いつもなら五分でも時間が空けば読書できるのだが、今朝慌ててたお蔭で本を一冊たりとも持ってきていない。
「あそうだ、本が無いなら図書室の本を読めばいいじゃない!」
というわけで本棚へ。
「うわぁ、『子供の化学』がかなりの数あるよ…って『ポプラディア』まで!」
二つともどっちかというと小学生向けだよね?まあ面白いからいいんだけど。
「ちょ、江戸川乱歩の『少年探偵シリーズ』まで!あこれ読んだことない」
来週にでも借りて読もう。
「ふう、本棚めぐりで一時間は潰せちゃったよ」
再びソファに寝っ転がり携帯を操作する。窓から暖かな春の日差しが差し込む…特にすることも無いので目を瞑ってぼーっとしている。
そのまま寝たり起きたりを小刻みに繰り返していると、
ガラガラッ
誰かが来たので僕は慌ててソファから起き上がり座り直す。
「な、なんだ種子島君か」入ってきたのは佐和田さん。
「なんだって、そっちこそ何でこんな時間帯に?」
部活やってないか文化部ならとっくに帰ってる時間だ。
「べ、別に…ただ急に本が読みたくなっただけ」
ここで彼女は、僕がさっき読んでいた本を発見。
「あーコレ江戸川乱歩じゃん。私も小学生の頃読んだなー」
「やっぱり?」
本好きの二人なので昔読んだ本などの話で盛り上がる。小学校の時の課題図書について語っていた所で僕の携帯が鳴る。曲はUVERworldの「儚くも永久のカナシ」。
「この着信音は、麻乃か」
ちなみに他のクラスメイトからの電話は『モンスターハンター』のサウンドトラックからランダムで一曲流れるようになっている。
「もしもし?」
『麻乃だけど今ミヤミヤと校門前にいるから』
ミヤミヤというのは真田さんで間違いないだろう。
「分かった。すぐに向かう」携帯を切る。
「今のって、今日のゲームに参加する子?」
「そう。スナイパーと銃剣使い」
「よくわからないけど、頑張ってね」
「おっそーい!」
校門前では麻乃と真田さんが待ちくたびれた、といった様子で待っていた。
「なんせ図書室からここまで時間かかって。ところでミヤミヤって?」
見当はついているが念のため聞いてみる。
「なにを分かり切ったことを…光也の事に決まってんじゃん」
「だよねー」
思えばこの幼馴染、昔から変なネーミングセンスはあった。僕も圭太も小学校時代にはかなりヘンテコなあだ名で呼ばれていたものだ。
「そうだ二人ともARGセット持ってきてる?」
「もちろんだ」と真田さん。
「当然フル充電よ!」と麻乃。
「ところで勇気君、麻乃ちゃん。友長君と近藤君の来る前に三人でブリーフィングでもやろうとおもうんだがいいか?」
「もちろん、じゃあお互い今日使う武器の確認ね、僕はM4A1にFNファイブセブン。後はナイフに手榴弾かな」
グレネードランチャーは今回は封印する方針で行こうと思う。
「私はレミントンM24とベレッタ、応急処置キットと小太刀」
米軍の狙撃銃を主兵装に、ハンドガンという手堅い装備をセレクトした麻乃。
「私は九九式軽機関銃で行こうか三八式歩兵銃で行こうか迷っている。サブと近接装備は前回と同じ」
第一次大戦のLMGも持っているなんて結構凄いなぁ。
「あー今回は取り回しも考えて三八にして、あと今度でいいから麻乃に九九式貸してあげて」
「え、わたし?」
「うん、僕の理想的には麻乃は狙撃だけじゃなくてもっと幅広い意味での『遠距離支援』型になってほしいもんで」
「えー私スナイパーの『一撃必殺!』な感じに惹かれてARG始めた部分もあるし…まぁ折を見て考えておくよ」
「ありがと。で今回の配置だけど、麻乃はスコープ生かした索敵と対狙撃手戦。真田さんは接近戦、出来るなら正宗と組んで援護してもらって」
「分かった、近藤君はどんな装備を?」
「サブマシンガン。あと僕と圭太はライフルマン、アサルトライフルで中距離戦にやるから」
「「了解」」
「まあいつまでも外で立ち話ってのもナンだ。残り一時間半程、図書室で時間潰そう」
「佐和田さーん、さっき言ってたスナイパー…っていない」もう帰ったのだろうか?せっかく紹介しようと思ったんだけど。
「誰佐和田さんって?」
「僕のクラスメイトで同じ読書部」あメールだ。開いてみるとサヤエンドウからだ。『集合場所伝えるの忘れてた。中一の屋上まで来て』との事。
「五時二十五分になったら屋上行くから、そこに敵チームがいる。それまで…っていってもあと五分あるかってとこだけど」
「おいーっす!」部活ある組が遅れて参加。
「正宗、遅かったじゃん」
「なーにが遅かっただよ、お前ら探して忙しかったんだぞ」と圭太。
「ご、ごめん。図書室にいるって連絡しとくんだった」反省ばっかだ今日は「あそうださっきサヤエンドウからメールあって、中一の屋上に集合だって」
「わかった」よし、ここは一つチームリーダーっぽく決めよう。
「よし、じゃあこのメンバーでの初のゲーム、張り切っていこう!」
「「「「おう!」」」」
誤字脱字等あったら指摘してください。