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果たし状はラブレターの前に!

大幅に更新おくれた~

新章突入です!でも今回は戦闘シーンはほとんどありません…

 追っ手共をどうにか撒き、体育館倉庫へと逃げ込む僕。平日学校にいながらARGで遊んでいるような気分だ。それ自体は歓迎すべき事だが今回は状況が状況。正直迷惑だった。

「さーて、追跡手(チェイサー)どもが殺到する前に、読んじゃおう」

 制服のポケットから「スナイドルへ」と書かれた女物の封筒を取り出す。ARGのハンネなのは若干気になるけど、細かいことは後。朝学校へと行ったら下駄箱に手紙が入っていた。これは、つまりラブレターと判断して間違いないだろう。

「やった、男なら人生に一度は訪れるというモテ期がこんなにも早く来るなんて」

 ドキドキを抑えきれずに封を開け、中の手紙を取り出す。そこには女子にしては若干雑な字で、

『スナイドル、並びにその部下達に今週の土曜日に決闘を申し込む!』

 とだけ書いてあった。

「は、はい?」

「いたぞ種子島だ!者ども出会え出会え!」

早速襲ってくる我がC組の男子達、ろくに思考を整理する前に僕も駆け出す。


「で、結局ラブレターでもなんでもなく、ただの果たし状だった。ていうオチか…」

 朝の騒動もだいぶ沈静化した昼休み、圭太と正宗と僕は弁当をつつきながら駄弁(だべ)る。

「ホントがっくしだよ~何度違うって説明しても追ってくるし~。特に正宗、病み上がりからあんな全力疾走できるなんて、大丈夫?」

「あ、ああ。昨日はゴメン」

「いいよ別に」

「それよりどうする、この果たし状?」

 そちらの方が気になるらしい圭太が問いかける。

「こればっかは麻乃や真田さんの意見も聞きたいし、今日の放課後とか集まれないかな?」早く真田さんを正宗と圭太にも紹介したいし。

「いや今日は無理だろ、俺ら部活あるし、勇気なら読書部だしサボって会って来れば?」

「イヤだ。いくらARG絡みでも部活の時間は使いたくない」

「分かった、じゃあ部活の無い水曜日あたりにでも全員で集まろう」


授業も終わり、圭太はサッカー部に、正宗は陸上部へと向かう。僕も読書部の活動場所である図書室に行く、窓際の席に座り、カバンの中から文庫本を出す。今日持ってきたのは深見真(ふかみまこと)の『ヤングガンカルナバル』と『ウェットワークスドーベルマンズ』。基本何でも読むが、ここの所ガンアクション物にハマっている。

 購買で買ったレモンティーを傍に置き、読書開始。僕の尊敬する作家である深見真の手によって描かれたキャラクター達の繰りなす銃撃の世界にどっぷりとつかる。二冊読み終える頃には時計は午後五時を回っていた。三時半にはここにいたから、一時間半もいたという事になる。

「お、やっと現実(こっち)に帰還したみたいね」

 声のした方に視線を移せば、そこにはもう一人の読書部員で僕のクラスメイトの女子、佐和田杏梨(さわだあんり)の姿。

「い、いつからそこに!?」

「いつからって…四時少し前には来てたけど」

 来客者の存在する事にさえ気づかない程熱中してたのか僕。

「うわぁ…またグロそうな本読んでる…」

「べ、別に僕が何の本読もうと勝手じゃん、それより『文学少女』の続き持ってたら貸して」

「はい」佐和田さんが彼女のカバンから取り出したのは野村美月(のむらみづき)の代表作である『文学少女』シリーズ。

「ありがとう」

「ところで種子島君、今朝のラブレター騒動、結局どうなったの?」

「実はラブレターでもなんでもなく、僕等に対する挑戦状だった」

「そうだったの」

 その後は二人で本について話したりしている中に下校時刻になり、帰宅。朝っぱらから追いかけ回されていたからか宿題もせずに寝てしまった。夕飯は食べたけど。


 翌日も麻乃に「明日集まる」と電話したり(光也がチーム入ったって本当!?と驚いていた)忘れていた数学の宿題を授業中にこっそりやったり、五時間目の体育のドッヂボールではFPSで鍛えた華麗な回避テクを!と張り切っていたら開始早々ヘッドショットを喰らい退場したりと慌ただしく過ぎ、水曜日の朝靴箱にまた手紙が、今度は慌てず騒がずその場で開封、案の定謎の挑戦者からの物で、「場所は学校、ルールは爆破」とだけ相変わらず雑な字で書いてあった。

「爆破か…こっちには五人いるし…ちょうどいいか」

 真田さんが加わってから初の団体戦できれば勝ちたい。

「それにしても…また名無しだよこの手紙」

 本名が嫌ならせめてハンネでも書いといてくれればいいものを…


 今日も一日が終わり放課後。集合まで若干時間が余っていたので僕は蓮田公園(土曜日に初めてチーム戦やった場所)で行われているゲームに参加している。武器は前回と同じくM4A1だが今回はグレネードランチャー付き。建物の陰(ちなみに土曜日の時と同じ場所)に身を隠し、さてどの敵を狙おうかと視界をスクロールさせると…これは奇遇、その時の戦いで僕を倒した小学生がいるではないか。今回は狙撃銃ではなくサブマシンガンを構え撃ちまくっている。個人的に恨む所はないが敵として出会ったからには死んでもらおう。

「しかも、火葬で」

 ランチャーにグレネードを送り込み、照準。40㍉の弾丸、いや砲弾をぶっ放す。射出器で加速されたグレネードは標的に直撃、ド派手にあがった爆炎が彼と近くにいた少女、もう一人のアタッカーの体力を削り切り、しかも彼女の持っていた機関銃(遠くてよく見えないけど米軍のM60だと思う)の弾薬に引火し爆発はさらに拡大、一気に五キルという表示が自分の体力ゲージの横に浮かぶ、今回は復活ありのゲーム故に彼らもすぐに戻ってくるだろう、しかしいきなり前線の五人が脱落し、敵陣に大穴が空く、この隙を逃すまいと突撃を掛ける仲間。

 僕もその援護の為に二発目のグレネードを装填、撃ちだす。という動作を最後まで行う前に狙撃銃の銃声が響き、僕は一撃死してしまう。あーあ、と思いつつキルログに目を移すとそこには「カグヤ」の文字が、やばっ。

「ゆう、じゃないスナイドル!来ないから心配してたのに何のんきに遊んでんの!」

 怒り心頭といった様子の麻乃が、(スナイパーにもかかわらず)戦場を突っ切ってこちらに迫ってくる。言い訳を探しつつジリジリと後退する僕の襟を、いつもの間にか背後に回り込んでいた真田さんがつかむ。

「勇、スナイドル、遅いぞ、もう皆来ている、早く」

うわぁーこっちも相当怒っている…

 そのまま僕を引っ張って行こうとする真田さん。ぐえぇ、首が締まる。

「わかった歩く歩く自分で歩くから手離して!」

 メニューから「退室」をタッチ。ポカン?としている味方に、「ごめん!ここで落ちる」と告げる、ここでやっと真田さんが手を放してくれる。

「まったく、心配したんだよ」と麻乃。

「勇気にはチームの長たる自覚はないのか?」と真田さん。

「えっと、その…ごめん」反論のしようがない僕。


「「ハハハハ!どうせそんなオチだろうと思った!」」

 チームの女子二人に連行され、本日の集合場所まで連行された僕を出迎えたのは、圭太と正宗の大爆笑であった。

「いやぁ、ビックリしたぁ~」そのままリビングに上がりソファーにこしを下ろす。

「まあ予定より早く集まったわけだが」どうやらもう自己紹介は済んでいるらしい。「今日こうやって集まってもらった理由は聞いているな?」とサブリーダーの圭太。

「はいはーい!果たし状っぽいのが届いたんでしょ?」

「麻乃正解。その果たし状が一見するとラブレターっぽかったから勘違いしたクラスの男子が襲ってきて大変だったよ…」

「本当に俺のクラスの男子はバカばっかだ、なあ正宗?」

「『リア充、即、斬』とか喚いて正宗と一緒に先頭きって追いかけてきた圭太に言われたくない」

 ノリノリで追撃部隊仕切ってたもんなぁ。

「それより、その件に関して今日も進展があった」

 ポケットから今朝来た手紙を取り出す。

「何それ、ラブレター?」

「違う、対戦の場所とルールが書いてあるだけ」

「えーっと、学校で爆破?爆破って?」

 ずっと一人で戦い、なおかつほとんどの戦闘を銃剣でこなしてきたため、FPSに関する知識の少ない真田さんが尋ねる。

「ええと爆破ってのは…」「はいはい俺が説明しまーす!」

横から正宗が解説役を持っていく。

「爆破ってのは攻撃側と防衛側に別れて戦うゲームで、攻撃側は制限時間内にフィールドにある拠点を爆破できれば勝利、防衛側は時間まで拠点を守り抜くか攻撃側を全滅できれば勝利。わかった?」

「へー面白そう!」と麻乃。

「全滅するまで戦うのだけがFPSではないのか…」

と真田さん。確かにフリー団体戦で爆破はあまり見かけないから知らなくても不思議じゃない。

「ねえねえ勇気!この後その爆破ってのやろうよ!」

「蓮田公園は小学生ばっかで使えそうにないし、2対3じゃああんまり面白くないよ。最低でも5人はいなきゃ」

「そこの点、いまの俺達にピッタリだよな」

「僕も今朝まったく同じ事考えていたよ圭太」

 僕は除くとしても四人ともなかなかの使い手だ。唯一の弱点としてはアサルトライフル持ちが僕と圭太だけなので、中距離戦に限定されると弱い事だ。

「そうなの…じゃあ爆破は土曜日まで待つとしても、誰なのこの挑戦仕掛けてきたの?」

「それが…誰だか僕等にもさっぱりでさ、前坂達にしては手が込みすぎているし、他の学年のチームって可能性もあるけど、そしたらチーム名くらい名乗ったっていいじゃんね」

「前坂君って、圭太達が前にいたチームのリーダー?」

「そうだ、あと前坂の野郎に君付ける必要はねぇぜ麻乃」

「そこは僕も激しく同意。今回の手紙でも集合時間や詳しいルールも書いてないし、明日辺りに本人がコンタクトしてくるっしょ。他に質問とかある?」

 ここで真田さんが挙手。

「さっき勇気君が使っていた銃、この前と同じM4A1だけど見たことのないパーツが付いてたよね、あれって何?」

「レイル使ってグレネードランチャー付けただけだよ」

「「れ、れいる?」」

 と女子ズ。まあこうなると予想はしていたけど。

「銃にいろんなパーツ付ける為の…って説明するより実際見た方が早いか」机の上にあったARGの武器データブックを手に取り、M4A1のページを開く。

「ほら、上と下にギザギザっぽいのがあるでしょ、ここにパーツをくっ付けて様々な状況に対処できるようにする」

「へぇ~面白そう…だな」

と真田さん。でも彼女の使う旧日本軍の銃器にレイルシステム付きの無いんだけどね。

 その後は正宗の家にあったTVゲームで遊んだり、お互いの学校話をしたりして過ごした。僕としてはチームの動きと正宗の二丁短機関銃(サブマシンガン)の確認をしたかったのだが、楽しかったからまあいいや。


「へえぇ、一度に五キルかぁ~」

 あんかけかた焼きそばを食べながら母、種子島知音が呟く。

「たまたま弾薬に引火しただけだよ」

お茶を飲みながら僕も答える。

 父が仕事で遅いので、僕と母、兄と妹の美紀の四人で夕食を食べている。話題は今日の僕の戦いについて。家族で唯一ゲーム嫌いの美紀は聞き役だ。

「まあ、M4A1のレイルシステムはいいね、銃自体も当てやすいし」

「でしょ?勇気がARG始めるときにAK47かM4A1か迷った時にこっちを勧めたわたし大正解!」

「ちょっと待った母さん」今まで五キル?だから何?とでも言いたげだった兄、知樹がもう我慢ならんという様子で話に加わる「M4A1よりAK47のほうが強い。多少反動が激しかろうと7.62㍉の威力はいい」

「分かってないわねぇ」余裕の表情の母「その反動が中距離戦では命取りなのよ」

「中距離なんてVSSかドラグノフにでも…」

「そもそもクランにスナイパーがいなかったら…」

 喧々諤々(けんけんがくがく)、互いのFPS論をぶつけ合う二人。か、会話がハイレベルすぎてついていけない。ちなみにVSSは特殊作戦用、ドラグノフは野戦用。どちらもロシアのスナイパーライフルだ。

「食事中にまで銃の話やめてよ~」

 美紀の訴えが空しく響く、今回ばかりは僕も同意だ。これで父さんが帰ってきたらもっとうるさくなるな絶対。

 ちなみに兄さんと母はどちらが正しいか証明するため、徹夜でFPSをやってたらしく翌朝フラフラしていた。…大丈夫かな二人とも。


 いつもより早く登校したため教室には僕の他に女子が数人いて、その中の一人が小学校のころからの知り合いだったので迷わず挨拶。

「おはようサヤエンドウ~っておわぁ!」

 袈裟がけに振り下されたコミックスをかわし、二撃目に入るまえに射程から離れる。ちなみに持っていたのは「武装錬金」だ。

「何がサヤエンドウよ!ウチの名前は遠藤沙耶(えんどうさや)だって小5の頃から言ってるでしょうが!」

「いやぁ、英語読みするとこうなるんだが…」

初めての英語の授業のときに彼女が「マイ、ネーム、イズ、サヤ・エンドウ」といった時のクラスの大爆笑は今でも覚えている。 

「アンタ日本人でしょうが!日本語使え日本語!」

「はいはい」

 サヤエンドウをからかうのは非常に面白いのだが、やり過ぎると鉄拳が飛んでくるのでここらでストップ。自分の席に戻り読書を始める。読むのは「ヤングガン・カルナバル」の二巻。二丁拳銃を使う女子高生の殺し屋と同じく女子高生で二本のグルガナイフの使い手が死闘を繰り広げるシーンだ。そういやこのシリーズ。二丁拳銃のキャラ割といるよなぁ~。描写も丁寧だし、今度正宗に貸そう。なんかヒントになるかもしれない。

 とか考えてると僕の後頭部に紙屑が当たる。投げたのは多分後ろの席のサヤエンドウで間違いないだろう。投げ返してやろうと後ろを向くと「開けろ」とジェスチャーするので開けてみる。そこには挑戦者と同じ字で(・・・・・・・)「書洩らしが多くて済まない。昼休みに屋上に来い」とだけ書いてある。

「え…ええええ!」

 挑戦者の正体って、サヤエンドウだったの!?




 


 

誤字、脱字等あったら指摘お願いします。

後感想もあったら嬉しいです。

いよいよ夏休み、執筆ペースも上げようと思います!

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