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ファンタジー!?

天使と悪魔の学園祭!?

作者: 水無月 六月


 とある学校の文化祭。

 バンドの演奏、金魚すくいやかき氷などの出店、溢れかえるほどの人の声、そんな賑やかな風景を見ている者が2人。

 1人は地下深くに存在する魔界に住む悪魔の少年『メフィスト』。

 1人は天高くに存在する天界に住む天使の少女『マリア』。

 真逆の存在である二人だが


「「楽しそう」」


 と同時に呟くと天界と魔界からそれぞれ姿を消した。





 文化祭入場口で物珍しそうにキョロキョロと見回している1人の少年がいた。その少年は灰色のスラックス、袖をまくっているワイシャツ、青いネクタイ、ローファーと服装は普通の男子高校生の様な感じであるが赤い肌に金髪の髪、四角い白色のフレームでピンクのレンズのサングラス、尖った耳には沢山のピアス、肌同様に赤色の先が三角の尻尾、角と羽が生えていてとても『人』には見えず、かなり目立つ。だが、何故か誰一人として少年を奇異の目で見る者はいない。

 実はこの少年、さっき「楽しそう」と呟いていた悪魔の少年で、悪魔の力を使い姿を「人」に見える様にしているのである。


「よし、思いっきり人間界を堪能するぜ!」


 メフィストはキシシと変わった笑い声をこぼしながら人込みの中に消えていった。





 メフィストがいた文化祭入場口とは反対の入場口でこれまた物珍しそうにキョロキョロと周りを見回している1人の少女がいた。その少女は青を基調としたチェックのスカート、ブラウスに紺色のベスト、スカートと同じデザインのリボン、ローファー、丸い白色のフレームの眼鏡をかけていて服装は普通の女子高校生の様な感じであるが頭の上には天使の輪、2つに分けて三つ編みにしてある髪はオレンジ色で、耳にはピンクのヘッドフォンをつけ、背中からは純白の羽が生えていてメフィスト同様とても『人』には見えず、かなり目立っていた。だが、やはり誰一人として少女を奇異の目で見る者はいない。

 実はこの少女、さっき「楽しそう」と呟いていた天使の少女で、天使の力を使い姿を「人」に見える様にしているのである。


「美味しそうな匂いが一杯するのです」


 天使の少女、マリアはグーグーと先ほどから鳴り続けているお腹を押さえながら人込みの中に消えていった。





「なぁ、これ何だ?」


 メフィストは出店の前で「かき氷」を指差しながら店員のお兄さんにそう尋ねた。


「ん?君、かき氷知らないの?」

「ああ、初めてみたぜ。へー、かき氷って言うのか。これ食えるのか?」

「食べられるよ。でも、かき氷を初めて見たなんて、君、もしかして帰国子女なのかい?」

「ん?帰国子女?あ、えーっと、そんな感じだ。なぁ、このかき氷って上手いのか?」

「うん、甘くて美味しいよ。買う?」

「そうだな、試しに食べてみるか。いくらだ?」

「200円だよ」


 値段を聞いて財布からお金を出したメフィスト。そのお金はちゃんと人間界のお金であった。実は時々人間界に遊びに来ているためちゃんと人間界のお金を持っているのである。


「まいどありー」


 お兄さんの声を背にまた歩き始めたメフィストはかき氷を恐る恐る口に運んだ。


「上手い」

 

そう呟いてキシシと笑うメフィストがかき氷を勢いよく食べて頭の痛みに苦しむのはこの後直ぐのことである。





「あの、これ何なのですか?」


 マリアはメフィストがいた出店とは別の出店の前で「かき氷」を指差しながら店員のお姉さんに尋ねた。


「ん?あなたかき氷知らないの?」

「はい、初めて見たのです。かき氷って言うのですね。これは食べられるのですか?」

「食べられるわよ。でも、かき氷を初めて見るなんてあなたもしかして帰国子女なの?」

「帰国子女?私は天界から来たのですよ。ところでこのかき氷は美味しいのですか?」

「テンカイ?へー、そんな名前の国あるのね。甘くて美味しいわよ。一つ買ってみる?」

「はいです」

「じゃあ、200円ね」

「『200円』って何なのですか?」


 天界から一度も出たこのないマリアは人間界では何かを買うのにお金が掛かるということを知らなかったのだ。


「へ?ああ、帰国子女だから日本のお金が分からないのね。お財布持ってる?見せてくれたら私がどれがいくらか教えてあげるよ」

「お財布って何なのですか?」

「え?お財布も知らないの?お財布はお金を入れておくための物よ」

「お金?えっと、お財布?持っていないのです」

「え、そうなの。えっと、悪いんだけどお金がないのなら売ることが出来ないのよね」

「それはかき氷が食べられないってことなのですか?」

「うん。ごめんね」


 ショックで今にも泣きそうな顔になったマリアを見て側でかき氷を食べていた別のお姉さんが、


「これ私のだけど一口食べる?」


と手に持っているかき氷を見せながら聞いてきた。


「食べて良いのですか?」

「うん。一口だけでもいいなら」


 お姉さんはそう言うとスプーンで一口分掬うと差し出した。


「はい、どうぞ」

「ありがとうなのです」


 マリアは目を輝かせてかき氷を食べた。


「美味しいのです!」

「そっか、良かった」

「お金がなくても楽しめる物も一杯あるからそういうところに行くといいわよ」


 店員のお姉さんはそう言ってマリアに文化祭のパンフレットをくれた。


「はいなのです。本当にありがとうなのです」


 マリアはぺこりと2人のお姉さんに頭を下げた後、また歩き始めた。






「うー、頭いてぇ」


 メフィストはかき氷片手にまだ頭の痛みに苦しんでいた。


「あー、かき氷なのです!」


 突然そう叫ぶ声が聞こえてメフィストが顔を上げると目の前から天使と思われる少女がメフィストに向かって走ってくる。


「げっ」


 メフィストは嫌そうに顔を歪めた。それもそのはず、悪魔は人間に悪事を働くのだが天使はそれを防ぐ立場にいるからである(だから、悪魔は天使が姿を変えていても天使だと見抜くことが出来るし、同じように天使も悪魔が姿を変えていても悪魔だと見抜くことが出来る)。慌てて逃げようとしたメフィストだが間に合わず天使の少女、マリアが目の前に立った。そして、マリアはいきなりメフィストの手からかき氷を奪い取り食べ始めた。


「あ、おいコラ、それは俺のかき氷だぞ。返せ!」


 一瞬訳が分からず呆けていたメフィストだが我に返るとマリアからかき氷を取り返そうとする。だが、マリアはかき氷を食べながら器用に避ける。


「クソッ、何で食べながら避けられるんだよ。あ!」


 かき氷を取り返そうと奮闘していたメフィストはふと周りを見るとさっきのマリアの叫び声からずっと周りの人達がこっちを見ていたことに気が付いた。


「あ、えっと」


 メフィストはどうしたら良いのか分からず、困ったすえにマリアの手を取り走り出した。


「はぁ、はぁ、全く何なんだよお前は」


 暫く走ってもう自分達に注目している人がいないのを確認したメフィストは未だにかき氷を食べているマリアを見て溜息をついた。


「もうそのかき氷はやるから俺にこれ以上関わるなよ!」


 メフィストはそう言うと近くにあった出店でかき氷を買うときと同じような会話をして綿菓子を買った。そして、綿菓子を食べながら歩き出したのだが何故か目の前にはマリアがかき氷を食べながら歩いている。マリアから離れようと別の方向に歩き出そうとしたら、

パクッ

マリアが顔だけメフィストの方に向けて綿菓子を食べた。手には3分の1ぐらいの量に減ったかき氷を持ったまま。


「へ?あー、お前また!」


パクパクパク

 メフィストの声など聞こえていないのかどんどん綿菓子を食べていくマリア。しかも、かき氷より食べやすいのかかなりのペースで食べている。メフィストが慌てて綿菓子を高く持ち上げてマリアに食べられない様にしたときには綿菓子は半分ほどになっていた。


「お、俺の綿菓子が・・・」


 マリアは落ち込むメフィストを無視してまたかき氷を食べ始めた。


「・・・」


 メフィストはそんなマリアを睨むがまた食べられてはたまらないので文句を言わずに綿菓子を食べ始めた。そして、2人がそれぞれ食べ終わると、


「ふわー、美味しかったのです。悪魔君、かき氷と甘い雲をありがとうなのです」

「ありがとうじゃねぇよ。お前が勝手に俺から奪ったんだろうが。それと甘い雲じゃなくて『綿菓子』だ」


 もうすでにマリアのせいでかなり疲れているメフィストは文句を言うも勢いがない。


「ごめんなさいなのです。私、食べ物のことになるとちょっとおかしくなるのです。さっきかき氷を親切なお姉さんが一口くれて美味しかったかもっと食べたかったのです。そしたら悪魔君がかき氷食べていてついつい食べてしまったのです。綿菓子も甘くて美味しそうな匂いがしたのでつい。本当にごめんなさいなのです」


 メフィストに怒られて泣きそうな顔をしながら謝るマリア。


「ああ、もういいから!分かったよ、許してやるからそんな泣きそうな顔すんな!」

「本当なのですか!」

「ああ、もういいから」

「ありがとうなのです。悪魔君は悪魔なのに優しいのです」

「別に優しくねぇよ。それと俺の名前は『悪魔君』じゃなくて『メフィスト』だ。・・・あれは全然、全く『ちょっと』じゃねぇよ。天使がいくら悪魔からとは言え『つい』で食べ物奪って良いのかよ。でも、あんな顔されたら。ああ、クソッ」


小声で文句を言っているメフィストはどうやらマリアの今にも泣きそうな顔を見て何だか弱いものいじめしている気分になったようだ。はっきり言って悪魔とは思えないお人好しっぷりである。


「メフィスト君なのですね。私の名前は『マリア』なのです。よろしくお願いしますなのです」

「あ?俺は名前を教えたからってよろしくする気はねぇからな」

「何でなのですか?」

「いや、何でって俺は悪魔でお前は天使だろうが」

「はいなのです。確かに私は天使でメフィスト君は悪魔なのです。でも、それがどうかしたのですか?」

「どうしたって、お前それ本気で言ってるのか?」

「はい、本気なのです」


 マリアは天使の中で一番の天然というかどじっ子で失敗ばかりするため簡単な仕事しかさせてもらえないため、悪魔と天使の仲が悪いこともよく分かっていないのであった。しかも初めて会った悪魔が悪魔とは思えないほどお人よしのメフィストだったため悪魔と仲良くしてはいけないということを完全に忘れているのである。


「はぁー、お前変わってんな」

「よく言われるのです」

「そうかよ・・・」


 メフィストはニコニコと楽しそうに笑うマリアに脱力してしまった。


「あ、メフィスト君とっても美味しそうな匂いがするのです!」

「は?あ、おいコラ引っ張るな」


 マリアは何処からか漂う美味しそうな匂いを嗅ぎつけた様でメフィストの腕を引っ張りながら走り出した。



「美味しいですねメフィスト君」

「ああ、そうだな。はぁ」

「どうしたのですかメフィスト君?さっきから溜息ばかり吐いているのです」

「どうしたって、お前のせいだろうが」

「私のせいなのですか?」

「ああ。でも、もう怒る気力もないから気にするな」

「よく分からないのです」


 不思議そうにしながらも焼きトウモロコシを頬張るマリア。マリアはお金を持っていないためこの焼きトウモロコシはメフィストが買ったものである。焼きトウモロコシ以外にも焼き蕎麦、たこ焼き、焼き鳥、りんご飴を買って、すでに食べ終わっている。食べ物以外にも射的や金魚すくい、輪投げをしたりお面を買ったりしている。これだけの事を2人分全てメフィストが代金を支払っているのである。最初は文句を言っていたメフィストも目を輝かせて無邪気に笑っているマリアに怒るのが心苦しくなってきたのと、人間界ではお金がいることを未だによく理解できていないマリアには何を言っても不思議そうに首をかしげているだけなため、諦めたのである。だから、溜息が出てしまうのぐらいは仕方がないだろう。


「ねぇねぇ、君可愛いね。1人?もし良かったら俺らと遊ばない?」


 メフィストが疲れて溜息を吐いている間にマリアはまた何か見つけたのか少し先にある出店の前にいた。そして、そんなマリアにチャラそうな男が3人話しかけている。


「はぁ、全くあいつは」


 メフィストはまた一つ溜息を吐くとマリアを助けるために走り出した。つくづく悪魔らしくない悪魔である。


「マリア」


 チャラ男3人に囲まれておろおろしていたマリアの名前を呼びながら腕を引っ張り自分の後ろに隠すメフィスト。


「何だテメェ」

「邪魔すんじゃねぇよ」

「そうだぞ。引っ込んでろ」


 突然現れて邪魔をするメフィストに口々に文句を言っていくチャラ男三人。だが、メフィストはチャラ男を無視してマリアに話しかける。


「お前な、こんなチャラ男なんかに絡まれてんじゃねぇよ」

「絡まれるって何なのですか?」

「は?お前そんなことも知らないのかよ」

「はいなのです」

「いいか、絡まれってのはこういうチャラくてガラも頭も悪そうな奴らに話しかけられることだよ」

「そうなのですか。一つ勉強になりました」


 「おい、聞いてんのか!」や「無視してんじゃねぇ」などとまだ文句を言っているチャラ男3人を指差しながら説明するメフィスト。そして、その説明を聞いて楽しそうに笑いながら頷いているマリア。悪魔と天然天使、ある意味ではなかなかに良い組み合わせの様だ。まぁ、チャラ男達からすれば酷い組み合わせだと言えるだろうが。


「おいコラ、ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!誰がガラも頭も悪そうだってんだよ!それにチャラそうだとか言うけどテメェだって似たような格好してんじゃねぇか!」


 姿は変えられても身に着けている物までは変えられないため、サングラスやピアスはチャラ男達にも見えているのである(だから、2人とも文化祭にいても怪しくないように高校生の様な格好をしているのである)。だが、チャラ男達と違いメフィストがチャラそうに見えないのは(不良には見えなくもないが)やはり中身の違いなのであろう。


「はん、俺が言ったのはふざけたことじゃなくてじ・じ・つだ。それに誰がってお前ら以外に誰がいるんだよ。そんなことも分からないほど馬鹿なのか?あと、格好が似ていても俺とお前らを一緒にしてんじゃねぇよ」

「なっ、テメェ「あ、そう言えば少し格好が似ているのです。全然気付かなかったのです」


 チャラ男の言葉を遮り驚いたというような感じで言うマリア。天然は本当に恐ろしい。


「メフィスト君の知り合いなのですか?」

「俺がこんなチャラ男どもと知り合いなわけないだろ」

「でも、さっき一緒に遊ばないかと誘われたのです。メフィスト君の知り合いだからではないのですか?」

「ちげぇよ。はぁ、お前は今の状況全く理解出来てないよな」

「分かっているのですよ。この人達は私達と一緒に遊びたいのです」

「そうそう。一緒に遊びたいんだよ。あ、でも『君達』じゃなくて『君だけ』と遊びたいんだけどね」


 マリアに言葉を遮られて静になっていたチャラ男達はここぞとばかりにマリアに一緒に遊ぼうと誘う。


「私だけですか?」

「うん。君だけ」


 その言葉を聞いて満面の笑みを浮かべるマリア。そして、それを見て期待した感じの嬉しそうな笑みを浮かべるチャラ男達。


「それなら一緒に遊べません」


 マリアは変わらず満面の笑みのままチャラ男達の誘いを断った。そして、笑顔のまま固まるチャラ男達。


「・・・え?何で」

「私は今、メフィスト君と遊んでいるのです。だからメフィスト君も一緒じゃなきゃ駄目なのです」

「いや、でもさ「しつこい男は嫌われるぞ」


 チャラ男達が話し始めてから黙っていたメフィストはチャラ男の言葉を遮った(マリアと違いきっとわざとである)。


「俺はもうすでにけっこう疲れてんだよ。それなのにいつまでも絡んでじゃねぇよ。ウゼェ。それに迷惑なのは俺達だけじゃねぇ。周り見てみろよ」


 イライラして不機嫌度MAXのメフィストの放つダークオーラに気圧されてチャラ男達は素直に周りを見回してみると周囲の人間が不愉快そうな視線をチャラ男達に向けていた。


「で、まだ何か用か?」


 チャラ男達は周りの視線とメフィストが放つダークオーラに耐え切れなくなった様で慌てて謝り去っていった。どこまでも残念で哀れなチャラ男達である。


「あれ?あの人達どうしたのですか?」

「はぁ」


 周りの視線もメフィストのダークオーラも何のその、全く気にせず不思議そうに走っていくチャラ男達を見ているマリアに再び脱力するメフィストだった。




 そして、チャラ男達が去った後、2人はまた出店巡りを再会し、文化祭終了時間までずっといたのだった(メフィストはずっとマリアに振り回されていたのだが)。


「楽しかったのです」


 マリアは楽しそうにメフィストに話しかけた。


「そうだな」


 メフィストもキシシと楽しそうに笑った。


「メフィスト君笑えたのですね!」

「は?」


 いきなり嬉しそうにそう叫んだマリアに困惑するメフィスト。


「だって、会ってからずっと怒っているか溜息を吐いているかのどちらかだったのです。笑って欲しくて色々と見て回ったけど、やっぱり笑わなかったのでメフィスト君は笑えないのでしょうかと思っていたのです」

「え」

「でも、違ったみたいなので良かったのです」

「マリア、お前、俺のために色々見て回ってたのか?」

「はいなのです。私はドジなのでよくお仕事で失敗をするのです。だから一杯怒られて悲しい時もあるのです。でも、そういうときは笑うようにしているのです。そうしたら、そのうち本当に楽しくなってきて悲しさなんてどこかにふっとんじゃうのです。だから、笑えないのは勿体無いのです。メフィスト君にも笑って欲しかったのです」

「マリア」

「ふふふ、良かったのです」


 マリアはしきりに「良かったのです」と繰り返しながら今日一番の笑顔をメフィストに向けた。


「ありがとな」

「いいえ、メフィスト君が笑えたのなら良いのです。あ、そろそろ天界に戻らないといけない時間なのです」

「俺もそろそろ魔界に戻るか」

「今日は楽しかったのです。私一人ではこんなには楽しくなかったはずなのです。メフィスト君、今日は本当にありがとうなのです」

「ああ、俺も楽しかったぜ」

「また、一緒に遊びましょうなのです」

「それは断る!!」


 ほんわかした穏やかな空気の中メフィストはまさかの拒絶の言葉を発した。


「・・・え?何でなのですか?楽しかったのではないのですか?」


 一瞬固まったマリアはメフィストの言った意味を漸く理解し、慌ててメフィストにそう尋ねた。


「ああ、楽しかった。だが、それ以上に俺はお前のせいで疲れたんだよ!食べ物は食べられるし、お金はほとんどなくなるし、さらにチャラ男なんかには絡まれるし、俺に笑って欲しかったのかもしれないが行動が全部裏目に出てるんだよ!最終的に楽しかったとしても俺はもうお前と遊ぶのだけは絶対にごめんだ!!」

「ええー、そんなこと言わないで下さいなのです。また一緒に遊びましょうなのです!」

「絶対嫌だ!」


 この後も、2人以外誰もいなくなった学校で帰りの遅い2人を心配してやって来た友人達が2人を連れ帰るまで言い争いは続いたのだった。





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