表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パレアナ・プリズム  作者: 七瀬みる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

 その日の、帰り道。

「サギ師。ウソツキ。ペテン師。かってにバラしやがって。考えなし」

 中島さんがジト目で陽太くんをにらみました。

「うう……」

 陽太くんは頭をかかえました。

 放課後、日暮先生に呼ばれて、工作の資料をわたされ、材料や作り方をまとめて……などしていたら、すっかり遅くなりました。

 クラスのみんなは先に帰ってしまって、中島さんと二人、なんとなく、帰りもいっしょみたいな流れになったのでした。

 そしたら、中島さんがブツブツいいだしたのです。

 なんだよ、助けてやったのに、と、陽太くんは思いましたが、われながらむちゃくちゃだった自覚はあるので、責められると「そうかも」とも思うのでした。

 でも、そのあと、すぐに――

「でも、ありがと」

 中島さんは、ぼそっと、小声でそうつけたしたのでした。

 うつむいた顔がまっ赤になっていました。

 さっきまでの罵声は、ぜんぶ、てれかくしだったのかもしれません。

 陽太くんはほっとしました。

 とたんに、胸のなかが熱くなりました。

 こみあげてきたのは、どうしようもないうれしさでした。

 自分でもびっくりしました。中島さんにお礼をいわれたくらいで、どうしてこんなにうれしいのか。わかりません。わからないまま、でも、とにかく、うれしくて、たまらなくて、つい、まいあがって……

 学級会での興奮が、まだ、さめきっていなかったせいもあったでしょうか。ふだんならとてもいえないようなせりふまで、いってしまいました。

「まあ、あれだ。『きみが虹の中に住みたいなら、虹を作ってあげなけりゃならんからね』――だろ?」

 ふつうなら、いってしまってから、赤面するところです。

 でも、そのときは、中島さんが「!? 読んだの?」なんて、すごい勢いで、食いついてきてくれたので、てれているひまもありませんでした。

「そりゃ、まあ、さすがにね」

 陽太くんは頭をかきました。

 中島さんの愛読書は、かなり有名な本だったようです。ショッピングモールの本屋さんできくと、すぐに文庫本が、それも何種類か、見つかりました。

 読みはじめると、おもしろくて、二、三日で読み切ってしまいました。もちろん、プリズムの場面もです。

 でも、

「やっぱり、よくわからないんだよな」

 あの日、ききそびれた疑問を、陽太くんは、ふと思いだしました。

「あの小説だと、足をけがしたペンデルトンさんが、虹をみせてくれるんだろう? おれは逆に、足のわるかったばあちゃんに、虹をみせてやりたかったんだぞ。――どこがパレアナみたいなんだ?」

 なんだ、そんなこと、と、中島さんは笑いました。

「だって、あんた、おばあちゃんを思いだして、サンキャッチャーを買ったんでしょう? 実際に、おばあちゃんに見せてあげたわけじゃないじゃない。むしろ、おばあちゃんのほうが、あんたに、虹をみせてくれたんだわ」

 そしてハマったのよね? いっしょじゃない。

 そう、中島さんは、いうのでした。

 陽太くんは、目をしばたたきました。

 しばらく考えて……

「そうか」

 胸のなかに、さっきの熱さとはまたちがう、あたたかいものがこみあげてくるのを感じました。

「そうかあ……」

 深い息を吐いて、そうくりかえしました。

 どこかで、おばあちゃんが、笑っているような気がしました。なんだい、この子は、なんて、いっていそうです。

「なに笑ってんのよ」

 中島さんが、肩をぶつけてきました。

 べつに、と、いいすてて、陽太くんはかけだしました。

 待ちなさいよ、と、中島さんが追ってきます。

 影が長く伸びました。冬の日はずいぶんかたむいています。

 でも、クリスマス会の二十二日は、冬至です。

 そのあとは、また日が長くなっていくのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ