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パレアナ・プリズム  作者: 七瀬みる


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4/7

 その日から、二人はときどき昼休みに西階段でおちあって、いっしょに虹をつくるようになりました。

 お互い、ばらされて困るのは同じなのですから、いがみあってもはじまりません。

 ですが、あまり回数がたび重なって、だれかにあやしまれたら元も子もありません。べつべつに踊り場を利用するより、いっしょのほうが効率的です。

 それに、やっぱり、だれかといっしょのほうが、はりあいがあったのかもしれません。

 サンキャッチャーだって、一個より、二個、三個のほうが、盛大ですしね。 


 はじめのうちは、二人ともほとんど口をききませんでした。

 ただ並んで、サンキャッチャーを――いつ人がきてもいいように、手に持って――黙って日にかざすだけでした。

 でも、気まずさを感じたことはありません。

 虹を見ていれば、お互いの顔をみないまま、だまって、隣に立っていることができました。

 ときには肩がふれあうほど近くなることもありました。実際にぶつかってしまって、お互いの虹がゆれることさえ、ありました。

 そんなときでさえ、べつに、腹は立たないのでした。


 日がたつにつれて、二人のあいだには、共犯者めいた親しみさえ、かよいはじめるようでした。

 だんだんと、言葉をかわせるようにも、なっていきました。

 まずはサンキャッチャーのこと。それから、読んだ本のこと。家族のこと。休日の過ごし方。たわいない話をしました。最初はすこしずつ。それから、たくさん。

 おばあちゃんの話も、陽太くんはしました。去年、亡くなったこと。足がわるくて家からでられなかったこと。売り場ではじめて虹を見たとき、おばあちゃんのことを考えたこと。そしたらつい買ってしまったこと。とまらなくなって、四個も買ってしまったこと。

「おかしいだろ。笑えよ」

「笑わないわよ。いいじゃない。パレアナみたい」

「パレ――?」

 それは中島さんの好きな本の主人公だそうです。

 その本のなかに、窓辺にプリズムを吊るす場面があるのだと、中島さんはいいました。


「それって、つまり、サンキャッチャーじゃない?」


 人嫌いで有名なおじさんが、その女の子にだけ、こころをひらくのです。そして、足をケガしたとき、お見舞いにきてくれたその子に、プリズムで、虹をつくってあげるのだというのです。

「それも十二個よ、十二個!」

 中島さんはその場面がずいぶんお気に入りみたいでした。

 顔をかがやかせて、せりふをひとつ、暗唱さえしてみせました。

「まあ、ミスター・ペンデルトン、虹の赤ちゃんよ――!」

 陽太くんはあっけにとられました。

 眉間にシワをよせたいつもの「委員長」とは、まるで別人です。それこそ、虹をみせてもらってはしゃぐ、その女の子みたいです。

 こんな表情もするんだ。思わずまじまじと見つめてしまいました。

 その視線に気づくと、中島さんは、急に赤面して、顔をそむけました。

「ま、まあ、どうせあたしは、そんな上等なプリズムになんか、なれないんだけどね」

 わかってるわよ――てれかくしなのか、何なのか、そんな意味不明のせりふで、話をきりあげました。

 だから、その話のどこが自分に似ているのか。陽太くんはピンとこないまま、ききそびれてしまったのです。


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