四
その日から、二人はときどき昼休みに西階段でおちあって、いっしょに虹をつくるようになりました。
お互い、ばらされて困るのは同じなのですから、いがみあってもはじまりません。
ですが、あまり回数がたび重なって、だれかにあやしまれたら元も子もありません。べつべつに踊り場を利用するより、いっしょのほうが効率的です。
それに、やっぱり、だれかといっしょのほうが、はりあいがあったのかもしれません。
サンキャッチャーだって、一個より、二個、三個のほうが、盛大ですしね。
はじめのうちは、二人ともほとんど口をききませんでした。
ただ並んで、サンキャッチャーを――いつ人がきてもいいように、手に持って――黙って日にかざすだけでした。
でも、気まずさを感じたことはありません。
虹を見ていれば、お互いの顔をみないまま、だまって、隣に立っていることができました。
ときには肩がふれあうほど近くなることもありました。実際にぶつかってしまって、お互いの虹がゆれることさえ、ありました。
そんなときでさえ、べつに、腹は立たないのでした。
日がたつにつれて、二人のあいだには、共犯者めいた親しみさえ、かよいはじめるようでした。
だんだんと、言葉をかわせるようにも、なっていきました。
まずはサンキャッチャーのこと。それから、読んだ本のこと。家族のこと。休日の過ごし方。たわいない話をしました。最初はすこしずつ。それから、たくさん。
おばあちゃんの話も、陽太くんはしました。去年、亡くなったこと。足がわるくて家からでられなかったこと。売り場ではじめて虹を見たとき、おばあちゃんのことを考えたこと。そしたらつい買ってしまったこと。とまらなくなって、四個も買ってしまったこと。
「おかしいだろ。笑えよ」
「笑わないわよ。いいじゃない。パレアナみたい」
「パレ――?」
それは中島さんの好きな本の主人公だそうです。
その本のなかに、窓辺にプリズムを吊るす場面があるのだと、中島さんはいいました。
「それって、つまり、サンキャッチャーじゃない?」
人嫌いで有名なおじさんが、その女の子にだけ、こころをひらくのです。そして、足をケガしたとき、お見舞いにきてくれたその子に、プリズムで、虹をつくってあげるのだというのです。
「それも十二個よ、十二個!」
中島さんはその場面がずいぶんお気に入りみたいでした。
顔をかがやかせて、せりふをひとつ、暗唱さえしてみせました。
「まあ、ミスター・ペンデルトン、虹の赤ちゃんよ――!」
陽太くんはあっけにとられました。
眉間にシワをよせたいつもの「委員長」とは、まるで別人です。それこそ、虹をみせてもらってはしゃぐ、その女の子みたいです。
こんな表情もするんだ。思わずまじまじと見つめてしまいました。
その視線に気づくと、中島さんは、急に赤面して、顔をそむけました。
「ま、まあ、どうせあたしは、そんな上等なプリズムになんか、なれないんだけどね」
わかってるわよ――てれかくしなのか、何なのか、そんな意味不明のせりふで、話をきりあげました。
だから、その話のどこが自分に似ているのか。陽太くんはピンとこないまま、ききそびれてしまったのです。




