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7 赤き月の下で

 教会からの帰路。月明かりを受けて揺れる馬車の中で、カエリウスは不敵に笑んでいた。


「……何か企んでいらっしゃいますね?」

 正面に座るアドリアンが、背筋を崩さぬまま訝しげに視線を向ける。


「企んでいるとは心外だな」

 背で編んだ髪をわずかに揺らし、青の瞳を細めながら、カエリウスは愉快そうに肩をすくめる。その笑みは月光を映した宝石のようにきらめき、どこか人を酔わせるものがあった。


「いやぁ、実にアルブレヒト皇国自慢の聖光教会アルテンベルク教区会、礼拝堂は噂に違わず見事だった。ステンドグラスひとつ取っても一級品だ。誇りに思うのも頷ける」


「……それは確かに」


「それにしても――大聖女殿の腕に痣があったな。どうしてだろう?

 聖女を独占する皇国、その象徴たる“大聖女様”にあのような傷をつけるのは、一体誰なのか……気になってね」


「……調べます」

「頼んだ」


 カエリウスは窓の外へ視線を移す。夜空には二つの月が浮かんでいた。大きな白い月と、それに寄り添うような赤い月。


「聖光教会の聖職者たち……いや、“聖光教会の奴隷”か。実に歪で、面白い国だと思わないか、アドリアン」


「私は、あなたほど底意地は悪くありませんので」


「はははっ!」


 朗らかに笑うその顔は、見る者を魅了する爽やかさを纏っていた。だがその裏に潜む冷笑の恐ろしさを知るのは、ごく一握りの側近だけである。

 やがて、赤い月が白い月をかすめ、淡い光が馬車の窓を染め上げた。

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