目覚めた最強と、旅立つ都市
目を開けた瞬間、見たこともない景色が広がっていた。
――そう、ここは異世界だ。
俺は森の中にいた。周りには川や、とてつもなく大きな木が立ち並び、しかも元いた世界には存在しなかった生物までもがいる。胸がドキドキしていた。初めて見る世界、夢にまで見ていた世界、もう最高だ!!
だが、さっきから体に違和感を感じていた。何かが体に流れているような……しかも周りには、見たこともないものが流れている。
だが俺は直感的に感じた。
――そう、これは魔力だ。魔力が流れている。
もう俺は大興奮した。早速魔法を使ってみようと、手を前にかざし、感覚で魔力を流してみる。すると手から魔力が流れ出し、集まり始めた。
「よし……動かしてみよう」
手を動かしたい方向へ向けると、魔力も同じ方向に動き出す。楽しい。さらに違うことを試してみようと思い、魔力を固めて小さな球体にした。ほんの数センチだ。それを目の前にめがけて思い切り投げてみた。
だが、それは想像を絶するものだった。
前方に見えていた木が消え去り、それどころかその奥にある山までもが、何キロにもわたって破壊されていたのだ。
「……え?」
混乱したが、すぐに納得した。
――そう俺は最強なのだ。強すぎるのだ。たった数センチの魔力の球体を投げただけでこうなる。
そこから俺は練習を重ね、自分で自由自在に魔力を操り、力加減もできるようになった。数日経たずして、完璧に力を制御できるようになったのだ。いや、その日のうちに制御できるようになった。
――そう俺は天才にまでなっていた。超天才、いやそれ以上だ。どこまで天才かって?いや、話が長くなりそうだから省略しよう。
残りの日々は、自分がどこまでできるか試す日々だった。しかも家まで作ってしまった。火や水なども操れるようになったため、生活もできる。
しかも、この体は食事も睡眠も不要らしい。風呂も魔法で体を浄化できるが、風呂は好きなので入った。
だが、寝るのは時間がもったいない。
旅に出ることを決めた。
ここには人がいない。ここは異世界だ。やはり人に会いたい。どんな人がいて、どんな種族がいるのか気になる。それに、食事はしなくてもいいが、美味しいものが食べたい。異世界の食べ物がどんなものかも気になる。
俺は空を飛んだ。そう、浮遊魔法を覚えたのだ。快適だ。歩くより早く景色も楽しめる。
出発して数時間経った。まだ人は見つからない。だが、あるものと遭遇してしまった。
――ワイバーンの群れだ。
初めて魔物を見た。今までは小さな鳥のような生物や、魔物かもしれない程度だったが、今回は本物の魔物だ。しかも襲ってきた。
「ついに来た!この瞬間を待っていた!」
俺は練習した魔法を試したかったのだ。森にいた頃は襲ってくる魔物に出会わなかった。
俺は手を刀のイメージにして横一直線にスパッと振った。するとワイバーンたちは血を流し、きれいな切断面ができていた。そう、俺は見えない刃でワイバーンたちを切ったのだ。
きれいに首だけ切れているものもいれば、羽だけ、足だけ切れているものもいる。一直線に切ったのでまだ生き残っているやつもいた。そこで何回か手を適当に振ると、ワイバーンたちはまたきれいに切断され、地面に落ちていった。ワイバーンたちは全滅した。
俺は襲ってくるやつには容赦しない。魔法も試せたので、また人探しを再開した。
数時間後、まだ見つからない。周囲は森だらけだ。
そこで思いついた――人を探索する魔法を使えばいい。今まで試したことはなかったが、すぐにやってみた。サーチ。
すると頭の中に情報が流れ込んできた。地形、魔物、人の気配……ついに人を見つけたのだ。
なぜ今まで思いつかなかったのだろう。まあいい。
しかし場所はかなり遠く、今の速度で飛んでも数日はかかる。そこで飛ぶスピードを上げ、人の気配がする場所へ向かった。すると、ものすごく大きな気配を感じた。
――なんとそこは、何万人もいる都市だったのだ。
やっと着いた。サーチを使わなければ、あと数日、いや当分の間見つけられなかっただろう。
都市に入ろうと思い近づいたが、まだこの世界の常識を知らないため、飛んで入ったら怪しまれると思い、地面から入り口を探した。
すると巨大な門を見つけた。そう、入り口だ。しかもそこには人の行列ができている。門番が怪しい者がいないかチェックしていた。
すると後ろから豪華な馬車が走ってきた。並ばずに門へ直行し、門番のチェックもなく通過していく。
――あれが貴族か。初めて目の前で見て、感動した。
「おい、お前早く来い」
前を見ると、俺の番が来ていた。やっと入れる。門番のチェックが始まる。
「どこから来た?」と聞かれ、俺は急いで嘘をついた。
「ここから遠い村から来た」
「何をしに来た?」
「都市に憧れて」――これは本当だ。
順調に進み、あと少しで入れる。門番が言った。
「よし、最後だ。初めての都市に入るには、二十銀貨ね」
……え?