人生の試験
「今日から新学期か…」
桜が舞い、異常に寒かった3月が嘘だったかのように暖かかった。
「なんか、やる気でねーなー」
そんなこんな言ってるうちにもう学校に着いてしまった。
「俺の通学路ってこんな短かったっけ?まあ、いいか」
校門を通ろうとしたとき急に視界が拡大されたり縮小されたり、足元もおぼつかない状態になった。
「なんだこれ?俺にこんな持病はねぇぞ?」
視界が暗転し、自分がどこにいるのかも分からなくなる。
「なんだ?何が起こってやがる?」
次の瞬間急に視界がもとに戻った。
俺は教室の椅子に座りテストを受けていた。
「そうか、俺はテスト中に寝てたのかどれくらいだ?」
上を向き時計を見る。
そこには信じられない光景が広がっていた。
「時計が12じゃない?」
教室にかけられた時計は12ではなく1から15まであった。
「どういうことだよこれ?まだ俺は寝てるっていうのか?」
頬を引っ張って見るが、痛みを感じた。
「つまり、現実?そうだみんなは?試験監督は!?」
あたりを見回したがそこには誰もいない教室だが自分しかいない、まさに一人で劇をしているような気分だった。
「仕方ねぇ、これは夢だ!痛みなんて感じてない!感じてない!取りあえず目が覚めるまで問題解くか」
1ページ目を開くとそこは小学3年生の話を題材とした問題があった。
「ライは図書室で本を読んでいた、しかしその時に静かな図書室では十分すぎるほどによく聞こえる悪口が、この時にライはどんな行動をしたら良いでしょう?あなたの行動とその理由を書きなさい」
道徳の教科書でありそうな問題だ、こう言うのは大体答えがない暇つぶし程度に書いておこう…夢だしな!
「他の仲間たちでなんとか出来ないかやってみてそれでだめだったら先生といじめを撲滅させる…理由1人だとこちらが勝てるわけがないからっと」
次に2、3ページ目を開く。
そうすると2ページ目には問題、3ページ目には小学4年生くらいの髪を結んだ男の子が数人の女子と楽しそうに話している挿絵があった。
「このあと、ライ(挿絵で髪を結んでいる子)はいじめられますどうしてでしょう?」
…なんだか、このライと言う子は俺に似ている。
俺は変わり者で男とはあまり関わりを持たず頼れて話しやすい女子の友達のほうがおおかった。
「なら、いじめられた原因も俺と似てるはず…周りに馴染めずいつも異色として学校生活をずごしていた俺は男であるのに女みたいに過ごしていた…だから周りが俺をいじめていた…これでいいだろう、何なんだこのテストは…俺の過去と異常なほどに似ているぞ、まあ夢だからな」
今時間は何時だろう?
正しくない時計だとわかってはいるがクセで時計をみてしまった。
時針は3を指していた。
「まさか、これは解いた問題数がリンクしてるのか?
15は今年の俺の年齢だ…夢にしては出来すぎてないか?このテストを完全に解いたとき一体どうなるんだ?」
いいや、これは夢だ…やってもやらなくても結果は同じはず…
しかし、謎に湧いてくる知的好奇心がテストの次のページを開かせた。
4,5ページ目には小学校5年生の時の長文が書かれており6ページが問題だった。
「最初っから読んでみるか…」
暖かい春の風が中庭に吹き抜ける。
そのたびに湿った草の匂いが鼻をかすめる。
早く家に帰りたいが今日はそうもいかない。
あの子にこれを渡す必要があるのだ……伝えずに帰ろうかと何度か思うたびに自分が情けなく見える。
「来たね」
「うん、何のようなの?こんな所で?」
「こんな所って…ただの中庭だろ?ここが嫌いか?」
目の前には、長いスカートを揺らし袖をまくった可憐な少女がいた。
「見てよこの桜の木ずっと前に植えられて今は満開にさくようになったんだってさ」
「…前置きはいいから、さっさと本題を話しなさいよ」
「あらら、何かキレてる?まあ、いっかじゃあ本題行くよ…君がライをいじめてたりする?」
2泊ほど間が空き回答があった。
「誰よそれ?ライ?そんなのうちの学年にいたっけ?」
「うん、君も知ってると思うよ…ほら、後ろ髪が長い男の子」目の前の少女は横髪を耳にかける仕草をしながら考え込んだ。
「うーん、私何かしたかな?」
「あくまでとぼけるか…実はね、僕ライから手紙もらったんだ、君たちにいじめられた証拠も入ってる…認めてくれないのかい?」
もちろんこの手紙はそんな内容ではない。
僕の初恋相手である目の前の少女に渡すいわゆるラブレターである。
「認めたらどうなるってわけ?」
「やだな、僕君にこんなことしなきゃいけないなんて…」
僕は持っていた手紙を彼女に渡す。
「これが、証拠だよ」
彼女は、手紙を開きじっくり読んだ。
数分後、彼女の目には涙が浮かんでいた。
「私でいいの?あなたの友達をいじめた私で…?こんな…私で?」
「うん、いいよ、そして僕と一緒に謝りに行こう?僕のパートナーとして」
彼女は、手紙で顔を伏せてその場に座り込み何度も頷きながら呻いている。
僕はゆっくり、彼女を両手で包みこんだ。
「大丈夫僕がいる、一緒に謝りに行こう」
……結構とんでもない内容だな、でここに問題があるのか。
ここで、出てくる僕は1つできていないことがありますそれは、何でしょう?
…これも、大概答えがない。
1つ問題があるとすれば…
「彼女のことを怒れていないこと…だな」
解答用紙に書き終えたあと前のページに戻りまた、小説文を読む。
今度はライに謝ってるシーンが書かれていた。
「ライ…君ごめんなさい、私たち…女の子たちと楽しそうに喋ってるライ君がなんだか羨ましくて、それになんだか変な噂流すのも楽しくなっちゃって…ごめんなさい…」
ライはその場で俯いたままで、何も言わなかった。
その沈黙が僕を苦しめる…でもきっと一番苦しいのは隣にいる彼女なんだろう。
「……もう、いいだろ?」
「え?」
ライは、口を開いたかと思うとその声は明らかにため息の混じった。
「俺は、俺だそして、お前はお前だ…いくらお前が俺をいじめたところで俺は気にしない、人には好き嫌いがあるんだ、考え方も当然違う」
そこまで、言ったところでライは長い後ろ髪をたなびかせ教室を出ていった。
ここからが、問題だ。
このときのライの感情を書きなさい。
「これは…またムズいな…怒る気持ちだろうか」
今までで一番難しい問題だった。
ただ、何故か自分に起こったことのようにライの感情をかけてしまった。
「続きがある…読もう」
「大丈夫ライはあんたを認めてくれたんだそしてきっと許してくれたって」
彼女は、走って教室から出ようとする。
だが、ドアを開けようとした瞬間その場に倒れ込んだ。
「おい!大丈夫か!?目を開けろ!」
そんな言葉をかけても、彼女が返事をすることはなかった。
「クソ!すまん!失礼!」
僕は彼女を背負い、下の階に降りていく。
保健室でなんとか出来るものではないとは思うが、行くしか無かった。
「先生!助けてください!この子多分脳がやられてます!」
「……息をしていない…救急車を呼ぶぞ!それと、AED!
瞳孔が開いている君の言うように脳がやられたのかもしれない!」
柱からAEDを取り出し、地面に滑らせて先生に渡す。
その後すぐに電話で救急車を呼んだ。
救急車はすぐに来た…だけど、遅かった。
あれから、三十分ほどたったあと、僕は教室のベランダで空を見つめていた。
くも膜下出血…それが原因だった。
彼女はいじめてる時にも罪悪感でストレスを感じていたのだろう…
その時彼女の言葉が僕の頭をよぎった。
「私でいいの?あなたの友達をいじめた私で…?こんな…私で?」
……「彼女は…最初っから自分が死ぬことを知っていた?いや、そんなわけ…くも膜下出血は病気だ自発的に起こすことは不可能…じゃ?知ることが出来る方法そんなの…実際に症状を発症してネットで調べるしかない彼女はそんなに前から自分がくも膜下出血の可能生があると知っていて……何で誰にも言わなかったんだ?…」
言えなかったのではないのか?自分に告白した相手に自分はすぐに死ぬと言えなかった。
「でも家族には言えたのではないか?」
……わからない、彼女の家族になんてあったことなんてないんだから。
「告白したあと、顔を隠してその場に座り込んだのは、症状を隠していたからではないか?」
ライがあの場所にいたらくも膜下出血だって、わかっただろう、僕たちは医療の本が好きで一緒によく読んでいたのだから。
「彼女は僕が問い詰めてたとき、とぼけていたんじゃない、本当に思い出せなかったんだ、くも膜下出血の症状の1つに記憶障害がある…僕は何で気づけなかったんだ」
「君…こんなところにいたのかい、危ないよ」
「先生…少し1人にさせてくれませんか?」
「いや、その気持ちはわかる…だけど君に用がある人がいるんだ…彼女の親だ、君に会いたいらしい」
「先生…」
そこからの言葉は喉から出てこなかった。
でも、言葉より先に体が動いた。
「来てくれるか、よかった君が来ないと少しやばかったんでね」
ここで、問題……
このとき1人にしてほしかった僕だが何故、先生と一緒に行くことにしたのかその理由を書きなさい。
「これは……情報がほしかったから、彼女が何故家族になんで相談しなかったか知るために行動した」
続きが気になり、自分が何て解答用紙に書いたかなんて気にもせずに次のページを開き読んでいく。
「君か…俺の娘の応急処置をしてくれたと言う人は」
「その通りです」
自分より一回り大柄な男が、保健室のソファにもたれかかっていた。
自分の娘が死んだと言うのに顔には笑顔が浮かんでいた。
「医者ごっこは楽しかったか?」
「…!僕は、医者ごっこなんてしたわけじゃない!」
「ちょっと、2人とも落ち着いて!今言い争っても彼女は帰ってきません!」
その一言で部屋の空気が一気に凍りつく。
「もう…いないのか………この世のどこにも…」
男は、ようやく涙を流し呻くようにこう言った。
僕はこの部屋にはもう必要ないと思い、保健室をあとにする。
彼女の親はきっと、彼女の大切さを失った時…つまり今知ったのだろう。
「あの様子じゃ親もまともな相談相手にはならなかっただろう」
昇降口で座り込み靴を履き替えるとき後ろポケットでクシャっと言う音が聞こえる。
あさってみると、少し大きめの紙が折られて入っていた。
「これは……ライ!!」
僕は急いで駆け出した。
どこにいるかも分からない友人の名前を叫びながら。
「ライ!ライ!ライー!!」
走るのに夢中で思わず湿ったマンホールで滑って頭から落ちてしまった。
痛くは無かった…ただ息が出来なくて視界がぼやけて周りの音が一切聞こえなかった。
それでも、1人の声だけがはっきりと聞こえた。
「こんなところで死ぬのか?お前は?そんな奴じゃないだろ?俺の友達…いや親友は…」
ライ…?
ライ?ライ!?
「ライ!!はっ…はっ…はぁ」
「大丈夫かい?今日は厄日かもね彼女に続いて君も死ぬところだったよ」
「先生!ライは!?」
「ライ君?いや、君が倒れていた場所には誰もいなかったよ?僕が第1発見者さ」
なんで?ライ?僕は見捨てられたのか?
「そういえば、これ君のものだろ?ちゃんと持っておけ」
先生はクシャクシャの折られた紙を渡してきた。
「これ?なんだっけ?」
紙を開いた瞬間記憶が一気に逆流してきた。
「これは…」
問題です。
あなたは一体何者でしょう?
俺の?俺は…俺は…誰だ?
この問題は一体?
このテストは一体?
俺は今まで何を?
席を立ち、窓の外を見る。
そこには、知らない景色が広がっていた。
遊具がない、ただ広い校庭…
ここは?一体どこだ?
そのとき、1人の人影が校庭に現れ俺はいつの間にか校庭にいた。
「お前は?」
そのシルエットはなんだか、懐かしかった。
そして、その黒の影はこういった。
「お前はここに、いるべきじゃないんだ…わかるだろ?」
「何故だ?ここは夢じゃ?」
「夢なんかじゃないよ…ライ」
ライ?俺がライ?
「僕が死にかけたとき君は死に限りなく近づいた時僕を助けてくれたじゃないか、覚えてないのかい?君はもう死んでいるんだ気づいてよライ、僕の彼女も待ってるよ」
「待て!1つ聞きたいことがある親友!あの手紙の内容は?」
「……ライ、君がいじめに耐えきれずに死ぬために書いた遺書だよ、君がそれをうっかり落として彼女が拾ったみたいなんだ」
「親友そう言えば、忘れてしまったお前の名前を聞かせてくれないか?」
「質問は1つじゃなかったのかい?まあ、いいんだけどさ
フウ、それが僕の名前だよもう忘れないでねライ」
4月の綺麗な空の中に俺は消えていく。
親友の名を口ずさみながら。




