私の嫌いな空色
空色は嫌いだ。いや、小さい頃は好きだった。私のパパは戦闘機乗りで、吸い込まれるような蒼色の空に真っ白な飛行機雲を描いてくれたものだ。
私はその様子を描いて、パパの誕生日に贈ろうと思った。でもその日、パパは帰ってこなかった。パパの友達に尋ねると、その人は渋い顔で、パパは空に食べられたんだって言った。
パパを食べちゃう空なんて嫌いだ。だから私は空を鈍色で、塗りつぶして、塗りつぶして、塗りつぶした。
そんな私を見てママは言った。パパは雲の上の世界で、今も自由に飛んでいるのよと。
やっぱりパパにはあの透き通った蒼空を飛んでいてほしい。だから私は絵を描き直した。鈍色の雲の上、どこまでも広がる空色の中で、スカイグレーの戦闘機が真っ白な飛行機雲を描く絵だ。
空のことはいまだに嫌いだ。でもパパが愛した空だから、許してあげようとも思う。今日も私は飛行機雲に手を伸ばす。その手は決して届くことはないけれど、想いだけは届きますようにと願いながら。