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5話 イベントその①ヒロインを校舎裏に呼び出す

 


 ウィルは呆れたようにため息をつくと、頭を下げ、今度こそ私から離れた。


「駄目か……貴族社会は想像以上に面倒臭いですね」


 ティセ自身、使用人と一緒に食事なんて有り得ないと分かってはいたが、その主人のご令嬢が望んでいるのだから、別にいいんじゃん。と思っていた。

 前世の影響かな?別に使用人と貴族のご令嬢だからって線引きをするのが、凄く不自然に感じる。


 でも、悪役令嬢なんだから、その執事と触れ合う機会はこれからも沢山ある!


「よし、いつか私に振り向いてもらうために、頑張ります!」


 私は気持ちを新たに、教室に向かって歩き出した。




 ***



 午前中の授業が終わり、お昼休みーーー。

 私は早々に教室から出ると、校舎裏で膝を抱えて、うずくまっていた。


「何で……何で……何で、メインキャラ達と同じクラスなのよーー!!!」


 私は泣きながら、大きな声で心の内を叫んだ。


 学園のクラス割り、教室に着いた私は、同じクラスメイトの顔ぶれを見て、卒倒しそうになった。

 ヒロインのマリアに、婚約破棄上等のサステナ王子、他攻略対象キャラ達ーーー全員が同じクラスメイト!何で?!悪役令嬢断罪後、悪役令嬢は一切出番無かったのに、実は同じクラスだったの?!地獄じゃない?どうしてゲームの製作者は、そんな酷いことを悪役令嬢にするの?

 ただでさえ、私がマリアを虐めてるって噂されてるし、サステナ王子に婚約破棄されたって腫れ物みたいに注目されてるし、やりにくいーーー!これで、ゲームの悪役令嬢は息を殺して一年やり過ごしたの?!可哀想!特に私は、虐めなんてしてないのに!


 誰かにこの現状を話したくても、私には友達一人いないし……辛いよぉ。


 悲しくて悲しくて辛くて辛くて、思わず、昼休み、教室を飛び出して、校舎裏でしくしく一人で泣いている。


 うう……でも、いつまでもここにいたら、教室に迎えに来るウィルに心配かけるし……何も無かったように、元気で明るく、教室に戻らなきゃ。


 私は服の袖で涙を拭き、立ち上がった。




 足取り重く、教室に戻る最中、すぐ近くの同じ校舎裏で、何やら騒がしい声が聞こえてきた。


「?」


 わざわざ人が通らない校舎裏で泣いてたのに、こんな所に人だかり?なんだろ?あれってーーーヒロイン?

 身を隠しつつ騒ぎになっている方を見ると、そこには、このゲームのヒロイン、マリアに詰め寄る女子生徒達の姿があった。


「貴女ね、ちょっと光の力を持っているからって、サステナ王子や他の王太子候補の皆様にチヤホヤされてーー生意気なのよ!たかが男爵令嬢のクセに!」


 ……何あの、乙女ゲームのテンプレみたいな虐め方ーーーあれって本当は、私がゲームの初期でマリアにやるやつじゃなかったっけ?

 入学早々、聖女として崇められ、大好きな婚約者であるサステナ王子にも気に入られたマリアを妬み、校舎裏に呼び出して、取り巻き達と一緒になって虐める。


 前世の記憶を思い出した私は、マリアに妬みなんか無いし、そんな事しなかったけどーーー


「わ……私、そんなつもりは無くて……」


 貴族の女子生徒達に囲まれていたマリアは震える子羊のように体を震わせていた。


「ただ……皆さんが優しく声をかけてくれたのが、嬉しくて……甘えてしまっていて……!」


「男をはべらかして調子に乗ってーーー!挙げ句、サステナ王子とティセ様の婚約破棄までさせたんだもの!最低ですわ!」


 私とサステナ王子の婚約破棄?

 いや、それはーーー互いに合意の上なので、お気になさらなくてもいいですけどーーーてか、誰??何故私の名前を??そこで私の名前出したら、私が貴女達に指示して虐めてるみたいになるじゃない!


「そんなっっ!私、本当にそんなつもりは無かったんです!」


「五月蝿いですわ!どうやら、少し痛い目を見ないと分からないようですわね」


 手に炎の魔法を出す女子生徒。

 炎の魔法?!喧嘩でそれはやり過ぎでしょう!


「止めて下さい!」


 考えるよりも前に、私はマリアを庇うように飛び出した。


「ティセ様…!」

「ティセ様?!ど、どうしてですか?ティセ様だって、婚約者をこの女に取られたんですよ?!私達は、ティセ様のためにーー!」


「私のためという免罪符は結構。私は、マリアさんを責めるのを望んでいません」


 寧ろ、婚約破棄まで導いてくれてありがとうございます!と感謝までしてる!


「私とサステナ王子の婚約破棄は私達の問題で、両親公認のもと、正式に受理されました。今後、この件でマリアさんを責めるのは許しませんし、隠れて、いたいけな令嬢を虐めるのも許しません!」


 ゲームでガンガン虐めてた悪役令嬢が言うなーー!と思われるかもしれませんが、今の私は虐めていないのでセーフです。


「も、もういいですわ!皆様、行きましょう!」

「ええ」


 踵を返して去る女子生徒達に、内心ホッとする。

 実は自信満々に飛び出してきたはいいものの、この悪役令嬢、攻撃魔法や回復魔法、一切使えない!だからあのまま魔法をぶっぱなされでもしたら大惨事だったんだけどーーー由緒正しいキュリアス公爵家のご令嬢で良かった!公爵令嬢の強過ぎる肩書き万歳!


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