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4話 学園へ

 


「……そういう反応は、男を誤解させるだけなので止めた方がいいですよ」


「ご、誤解では無くてですね……私は本当にーー」


 貴方が好きなんです。


「もう戻ります。夜分に失礼致しました」


 ウィルはそう言い残すと、何事も無かったように頭を下げ、部屋を出た。



「……まだ心臓がバクバク言ってる……」


 残された私は、その場に崩れ落ち、心臓の音を確かめるように胸に触れた。


 格好良いーーー!どうしよう私、本当にウィルと触れ合えてるんだーー!

 今まで画面越しでしか会えなかったのに、こうして会えて、言葉を交わして、触れ合える。

 幸せ……!人生に一片の悔いなし……!


 思わず、この世界に転生させてくれた神様に祈りを捧げる。


 まだ全然私の気持ちは信じてないみたいだけど、いつか信じて、振り向いてもらえるように、頑張らなきゃ!

 私が決意を新たに、夢見心地で、その日は眠りについたーーー。




 ***



「はぁ、ほんとーー何なんだあのお嬢様は」


 ウィルは執事服を脱ぎ、黒にまとめた服装で、キュリアス邸の屋根の上に一人立っていた。


「入学前と性格激変し過ぎでしょ」


 以前まではお嬢様が急に癇癪を起して暴れまくったり、少しでもミスをした使用人達を解雇したり、主人も奥様もそんなティセお嬢様を咎めることはされないし、キュリアス邸の雰囲気は最低だった。

 でも二年前にティセお嬢様が学園に通い出してからというもの、まるで生まれ変わったように、穏やかになられた。

 急に癇癪は起こさないし、暴れて使用人に暴力は振るわないし、ミスは笑って許すしーーー使用人達の間では、『学園の素晴らしい教育機関が、入学式初日で、性格を矯正して下さった』なんて話す者もいる。


 それに何故か、俺に興味があるようで、視線を感じる事が増えたと思っていたら、いきなり愛の告白をしてきた。


「……まさか、気付かれているのか……?」


 ウィルは屋根の上から、ティセの部屋に通じる窓を見つめた。


「……意外と油断出来ない女の子なのかな?まぁいいや、ティセお嬢様が俺に興味を持ってくれたおかげで、学園に入ることが出来るようになったしーーー充分、利用させてもらおうかな」


 ウィルはそう言い終わると、小さく詠唱し、闇の中に姿を消したーーー。





 *****



 次の日ーーー始業式が終わり、今日から正式に、三年生の授業が始める。

 ここから、悪役令嬢である私はゲームに出ていないから、私がどのクラスで、クラスメイトは誰で、これから先何が起きるのか、全く分からない。

 メインストーリーはプレイ済みだから、ヒロイン達がこれからどうなるのかは何となく分かるけどーーー私が物語の筋書き通りに動かないからか、多少の物語の変更は、これまでにもあった。

 私がヒロインを虐めてないから、ヒロイン絡みで会うはずだった攻略対象キャラにはまだ会っていないし、なにより、ゲームでは公爵家の権力を使って、取り巻き達を作っていたのに、今はそんなことしていないから、私には取り巻きと言うか、友達が一人もいないーーー!!

 昔から性格が我儘過ぎて誰も近寄ってもこないし、こっちから話しかけても、関わりたくないからか素っ気ない態度取られるしーーー公爵令嬢という身分から、虐められたりはしないけど……そもそも怖がられてるし。

 だからクラス分けなんて、『○○ちゃんと一緒のクラスが良いー♡』なんて無いから、そこまで興味が無い。


 いや、でもヒロイン達と同じクラスになるのは気まずいな……


 確か最終学年、ヒロインは攻略対象キャラ全員と同じクラスになっていたはず。

 それなら、流石に私は同じクラスにはならないよね。ゲームでも、悪役令嬢と同じクラスなんて描写は一切無かったし。


「ティセお嬢様」

「!」


 考え事をして歩いていた所為で前を見ておらず、壁にぶつかりそうになっていたのを、ウィルがおでこに触れ、止めてくれた。


「随分、危なっかしいお嬢様様ですね」


「あ、ありがとうございます!」


 ウィルはお父様、お母様の指示通り、今日から私の学園での生活も付き添うことになった。


「鞄はこちらです。昼食の時間になったらまたお声掛けに参ります。別途、何か困り事がありましたら、お呼び出し下さい」


「分かりました」


 嬉しいー!ゲームでは、たまに悪役令嬢のお迎えに来たりはしてたけど、学園の中までは入っていなかった。

 これも一重に、お父様とお母様のおかげ……ありがとうございます!

 何故か普段されない見送りをされて、応援すべきなのか、邪魔するべきなのかをせめぎ合っているような複雑な表情をされましたけど。


「それでは失礼致します」

「あ!あの、ウィル……」

「?何ですか?」


 呼び止めたものの、緊張してしまい、言葉が中々出ない。でも、ちゃんと誘わなきゃ!


「あの!今日の昼食、私と一緒にご飯を食べてくれませんか?!」


「お断りしますが」


 秒で断られた!!


「何でですか?!」


「普通に考えたらお分かりになるでしょう。使用人が主人の大切なご令嬢と同じ席について食事すると思いますか?」


「だ、駄目ーーーなんですか?」

「常識ゼロですか?」


 

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