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17話 サステナ王子イベント後

 


 決意を新たに、集合場所に向かって足を進める私は、ふと、空を見上げながら、サステナ王子のゲームのイベントを思い出した。


 悪役令嬢に目を付けられたヒロインに同情し、ヒロインとペアを組むサステナ王子。まだ光の魔法に慣れていないヒロインは、悪役令嬢の妨害もあり、上手く力を習得出来ずにいた。そんな時にペアを組んだサステナ王子は、悪役令嬢からヒロインを守り、それが、悪役令嬢に知らずに怯えていた自分の殻を被るきっかけになり、健気で心優しいヒロインに惹かれていくーーーそれが、サステナ王子のストーリー。


 ……サステナ王子の、あの台詞ーーー『気が向いた時だけ、またペアを組んでやるよ!』って……サステナ王子がヒロインに興味を持ち始めた台詞ーーだと思ってたんだけど、特に対した意味は無かったのかな。




 ーーーゲームと違い、悪役令嬢として転生したティセは、ヒロインであるマリアを虐めることも、妨害することも無かった。だからマリアは、光の魔法を順調に習得したし、ティセに虐められていないマリアを、サステナ王子が守ることも無かった。

 それは、サステナ王子がマリアに恋をするきっかけを失った事になりーーー誰かを守る事で、健気に頑張る、悪役令嬢であるティセの姿を傍で見ることでーーー新しい恋のきっかけが生まれた事を、サステナ王子本人もまだ、気付いていない。




 ***



 森での授業が終わり、出入り口に着くと、大好きな人の姿を発見して、駆け出した。


「ウィル!」

「お疲れ様です、ティセお嬢様」


 あー!お昼休み以来に見るウィルの姿ーーーホッとする!無事に帰って来れたーー!って感じ。


「待たせちゃってごめんなさい」


「いえ。ティセお嬢様を待つのは苦ではありませんよ。仕事ですから」


 素敵……!仕事に忠実なその姿!素敵!そう言ってくれるなら、もはや仕事でも良い!


 今日の授業はこれでお終い、後は家に帰るのみ。

 学園には遠くから入学した生徒の為に寮も完備されているけど、私は家が近いので通い。家の方が、ウィルと長く一緒にいれますしね。

 森から馬車が停車している場所まで、ウィルと並んで歩く。


「課題がクリア出来なくて残念でしたね」


「え……何で知っているんですか?私、まだ話していないですよね?」


 森の中は立ち入り禁止。

 生徒でも学園の許可なく立ち入る事は出来ず、森の入り口には必ず見張りがいて、勝手に森に入ることは出来ないはずなのに、どうして、授業の結果をウィルが知ってるの?


「サステナ王子とも随分仲が良くなられましたね?またペアを組んで下さるようで喜ばしいことです」


「怖い!怖いですウィル!何で知っているんですか?!まさか、森の中に入ったの?どうやって?!見張りは?!」


 まるでその場で見ていたかのように話すウィルに驚いていると、ウィルは人差し指を口に当て、微笑んだ。


「秘密です」


「秘密ーーー!」


 気になるけど、教えてくれなそう……。


「……私がサステナ王子と普通にお話が出来るようになったのは、ウィルのおかげです」


 ウィルがもう一度、ちゃんと調べて欲しいとサステナ王子に伝えたから、サステナ王子は私の無実を認め、謝罪してくれた。


「まさか、サステナ王子と普通にお話が出来るようになるとは思っていませんでした!ありがとうございます、ウィル!」


 同じクラスメイトになったんだから、一年間ずっと気まずいままでいるよりは、多少なりとも和解した状態でいる方が気が楽。何より、ウィルが私の為にサステナ王子に言いに行ってくれたのが嬉しい!



「……では、これでティセお嬢様の悪ふざけもお終いですね」

「悪ふざけ?とは?」


「俺の事を好きだという、世迷い事ですよ。サステナ王子と仲良くなられたなら、俺は不要でしょう?」


「不要じゃありません!私が好きなのはウィルなんです!」


 じゃないと、サステナ王子にも、ウィルが好きなんて伝えません!どうやってかは知りませんが、森の中で私達を見ていたなら知ってるはずなのに、ウィルは意地悪ですね。


「……そうですか」


 ウィルは私の手を引くと、グイっと体を引き寄せ、そのまま、学園の壁に押し付けた。

 こ、これはーーー噂の壁ドンというやつ?!乙女ゲームの知識しかないけど!


「本当に懲りないお嬢様ですね、もっと強く忠告しないと、悪ふざけを止めませんか?」


「う…あ…ち、違いまーー」


 どんどん顔が近付いてくるのに、心臓がバクバクして、頭が追い付かない。

 ま、またキスされる?!急にいきなり唐突キスされるのも心臓に悪いけど、こうしてゆっくり詰められるのも、心臓に悪過ぎるーー!!!


 顎を手でクイと持ち上げられる。これはーーー噂の顎クイ?!

 まさか今日で乙女ゲーム鉄板のドキドキシチュエーションを二つも経験するなんてーーー!嬉しい!私は次を期待して、目をつむった。



「ーーー(行ったか)」


 自分達の動きをのぞき見している視線に気付いていたウィルは、その主が立ち去ったのを気配で感じると、先程まで相手がいたであろう場所に視線を移した。

 完全に相手がいなくなったのを確認し、ティセから体を離すと、ギュッと、強く目を閉じているティセが見えた。


「……っ」


 まるで自分からのキスを待ち望んでいるようなティセに、ウィルは軽いキスをおでこに落とした。


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