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13話 学園の森、チュートリアルの前乗り

 


「……公爵ご令嬢のティセお嬢様に、俺は相応しく無いと思いますけどね」


「大丈夫です!私、平民としても生きていけます!」


 前世はただの日本人ですから、別に貴族であることにこだわりありませんし、平民として生きるのも、全然有り!いつでも、ウィルに嫁げます!


「恐ろしい事を言いますね」


「大丈夫ですよ!キュリアス公爵家には義兄がいますし!私が誰と結婚しても、あの立派な義兄なら、キュリアス公爵家をしっかりと守ってくれると思います!」


 寧ろ、悪役令嬢(わたし)がいない方が、キュリアス公爵家にはプラス!!!

 何と言ったって、ゲームでは私の所為でキュリアス公爵家の爵位は下がり、影響力も失い、家族に大変なご迷惑をおかけしました。その時も、率先して家を守ってくれたのが、悪役令嬢の義兄だった。

 それを考えたら、やっぱり私がウィルに嫁ぐのは、家の為にも有りなんじゃないかな?


「……お願いですから、絶対に主人と奥様には、その話はしないで下さいね」


「何でですか?」


「俺がクビになります」


 結構良い案だと思っていたのですがーーー駄目ですか。

 でも私のお願いを今まで何でも聞いてくれたお父様とお母様は、私の恋を応援してくれると思うーーーんですけど。今も大変複雑そうですが、ウィルを傍に置いてくれていますし……。


 話をしていると、学園の森の入り口に着いた。

 私以外の生徒はもう集まっているみたいで、最後に着いた私に視線が集まり、時間に遅れているワケでは無いのに、なんか気まずい。皆さん、早いお着きですねー。


「ウィルがクビになるのは困るので、また良い案を思いついたらお話しますね」


 執事であるウィルは授業に参加出来ず、付いてくるのはここまで。

 森は魔物の出る危険地帯。生徒でも、学園の許可なく立ち入る事は出来ず、森の入り口には必ず見張りがいる。

 私はウィルに別れを告げ、小走りで生徒の輪に向かった。



「……変なお嬢様……」


 ウィルは走り去るティセの後姿を見ながら、そう呟いた。




 ***


「では予定より早いですが、今から魔物との実戦訓練を行います。まずは、この森ですがーー」


 引率の先生が、この森の仕組みと、授業の注意点を説明する。


 この森はバリアを使い、魔物の住み分けをしていて、私達が本日実戦訓練で使うのは、最弱の魔物Fランクの魔物がいる場所。

 必ずペアを組み、一人では行動しないこと。

 危険を感じたら、今から配る発煙筒を上げること。


 あーなんか思い出しました。この説明、本当は先生から受けるんですけど、授業に不参加だったヒロインに、後日、攻略対象キャラが代わりに説明してくれるんですよね。

 いわゆる今日の授業は、新エリアのチュートリアルの前乗り。


「皆さんにはFランクの魔物を一匹、討伐してきてもらいます。皆さんの今の実力では問題無いと思いますが、くれぐれも無茶はしないように」


 先生の合図で、生徒がそれぞれペアを組みだす。

 三年生にもなるとある程度人間関係は構築されていて、ペア組もスムーズに決まっていくーーー私を除けば。

 うう……ぼっち悲しい。


「先生、今日も私とペアを組んで貰えませんか?」


「あら、申し訳ありません。ここーー森の実戦訓練では、教師は何かあった時のために備えていないといけないので、ペアになれないんです」


 ガーーーーーーン!!!!

 嘘でしょう?!想定外なんですけど……!ぼっちに対して何て残酷な仕様……!


「ごめんなさい誰か、ティセ様とペアを組んで頂けないかしら?」


 先生が大きな声で生徒に声をかけるも、反応は無し。むしろ静まり返っている……そりゃあ、悪役令嬢となんて、誰もペアになんかなりたがらないですよね……。


 まさかこんな所で、ぼっちの障害が来るなんて……うう、辛い。救いは、こんな悲しいところを、ウィルに見られなくて良かったことくらい。マリアもいないし……辛いよぉ。




「ーーー俺がペアになってやる」


「!サステナーー王子?」


 誰も名乗り出ない重い空気の中、一番名乗り出ないだろうなと思っていた人物が、仏頂面ながら、一歩前に出て、手を上げた。


「ありがとうございますサステナ王子。良かったですね、ティセーーー様」


 先生も途中で、私とサステナ王子の婚約破棄を思い出したのだろう。徐々に声が小さくなっていき、最後には消え入るように細くなった。


「さっさと行くぞ!」


 ーーーーー何で?何で貴方が私とペアを組むの?もう一生関わる気なかったのに、意味不明なんですけどーーー!!!



 ペアを組んだ生徒同士でバラバラに散らばる森の中。

 無言で歩き続けていたが、私の視線に気付いたサステナ王子が、口を開いた。


「ーーー何だよ」


「いえ……サステナ王子が何を考えていらっしゃるのかが全く分からなくてーーー」


 あれだけ私に敵意剥き出しで攻撃してきたのに、何故、今こうして、私に助け船を出したのかーーー。


「別に!ただーーーっ」


 私と目が合うと、サステナ王子はすぐに視線を逸らした。


「……私が怖いなら、私とペアになんてならなきゃ良かったのに」


「誰がお前なんか怖がるかよ!」


 

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